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脳神経外科(脳血管内治療)

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脳神経外科

脳血管内治療とは

脳血管内治療とは、カテーテルという細いチューブを脳の血管内部に挿入し、その中を通じて様々な医療器具を患部まで誘導し治療する手術法です。体にメスを入れる必要がないため、他の脳神経外科手術に比べ体に対する負担が少なく済む利点があります。一方で治療対象となる脳血管が脆弱化していたり脳の中の極めて重要な部位を流れていたりすることもあるため、重篤な合併症を生じる恐れもある大変難易度の高い治療法でもあります。当院では、豊富な臨床経験を積んだ診療スタッフにより治療が行われており、安全で確実な脳血管内治療を行えるよう日々研鑽に励んでおります。また、令和3年度よりは最新の脳血管撮影装置が導入され、脳血管の微細な構造も正確に診断可能となり、脳血管内治療に絶大な効果を発揮しています。


シーメンス社Artis zee 血管撮影装置

令和3年に当院で行った脳血管内治療は79件で、内訳は下表の通りです。

(令和3年1月1日〜12月31日)
血栓回収療法 20件
コイル塞栓術(未破裂) 7件
コイル塞栓術(破裂) 7件
頚動脈ステント留置術 22件
ステージド CAS 5件
硬膜動静脈瘻 2件
脳腫瘍塞栓術 7件
その他 9件
合計 79件

当院で行っている主な脳血管内治療

1)急性期脳梗塞(急性脳血管閉塞症)に対する機械的血栓回収療法

発症後急性期の脳梗塞に対しては、強力な血栓溶解物質であるt-PA静脈投与による血栓溶解療法が行われます。しかしながら、血管内に大きな血栓が詰まっている場合など、t-PAのような強力な薬剤をもってしても血栓を溶解する事が困難なことがあります。その場合、血栓を回収する器具を脳血管の閉塞部位に挿入し、血栓を機械的に回収する治療が行われます。十分に血栓が回収され脳血流が完全に再開すると、これまでの治療では救命困難な症例においても、全く後遺症もない状態にまでに回復する例がしばしば経験されます。
急性期脳梗塞治療では、発症から治療開始までの時間が短いほど治療成績が良いことが多くの研究で示されています。そこで埼玉県では迅速・円滑に脳梗塞治療を行うために、埼玉県急性期脳梗塞治療ネットワーク(SSN)を構築し、特に機械的血栓回収療法など高度の脳梗塞治療を行う医療機関をSSN基幹病院と指定しています。当院は県よりSSN基幹病院に指定されており、急性期脳梗塞治療に対して特に重点的に取り組んでおります。


急性期脳梗塞に対する血栓回収術
脳動脈に造影剤を注入しても血管閉塞部より先は造影されません(赤矢印)。マイクロカテーテルを血管閉塞部位の末梢まで誘導し(矢頭)血栓回収デバイスを患部に挿入し血栓を回収すると、脳血流が再開しました(青矢印)。


2)脳動脈瘤に対する動脈瘤コイル塞栓術

脳動脈瘤には、くも膜下出血で発症した破裂脳動脈瘤と、脳ドックなどで偶然発見された未破裂脳動脈瘤があります。
破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血は、多くの方が亡くなったり重い後遺症を患ったりする極めて重篤な疾患です。いったん動脈瘤が破裂すると2度3度と破裂を繰り返し脳に致命的なダメージを生じさせるため、発症後早期に再破裂防止のための手術が行われます。再破裂防止の手術には、開頭クリッピング術と脳血管内治療によるコイル塞栓術があります。いずれの方法が良いかは、年齢・瘤の形状や大きさ・部位・病状の重さなどを総合的に判断し決定しております。
コイル塞栓術とは、血管内に留置したカテーテルを通して、マイクロカテーテルを動脈瘤内まで誘導し、動脈瘤の内部をプラチナ製のコイルで充填して止血する治療のことです。動脈瘤の形状によっては、留置したコイルが安定せずに瘤外に飛び出してしまう事があるため、バルーン付きのカテーテルでコイルを抑えながら塞栓する方法やステントという網目状の筒を血管内に留置しコイルを動脈瘤内に抑え込む方法をとる事があります。
未破裂脳動脈瘤は、ほとんどの場合無症状であり脳動脈瘤があってもそのまま何事もなく一生を終えられる例も存在します。しかし、年間に一定の割合で破裂をきたすおそれがあることも事実であり、動脈瘤の大きさ・部位・形状をよく観察し、破裂の確率が手術による合併症率を大きく上回ると判断された場合は手術をお勧めしています。


破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術
脳動脈瘤(矢印)内に、マイクロカテーテルを挿入し、プラチナ製のコイルを慎重に充填し、動脈瘤を閉塞させました。


3)頚部頸動脈狭窄に対する頸動脈ステント留置術

頚動脈の内膜に、コレステロールなどから形成されたお粥状の物質(プラーク)が蓄積し、これが肥厚して内腔が狭くなってしまった状態を、頚動脈狭窄症といいます。狭窄が進行し脳へ供給される脳血流量が不足したり、狭窄部に生じた血の塊りやプラークの断片が末梢に飛散して脳血管の閉塞をきたして、脳梗塞を発症するおそれがあります。
頚動脈ステント留置術とは、頚動脈の狭窄部をバルーンで拡張し、さらにステントという金属製で網状の筒を展開してプラークを抑え込んでしまう治療法です。血管拡張時に押し広げられたプラークが破綻して末梢の脳血管に飛散してしまうおそれがあるため、末梢の血管内に非常にきめ細かいフィルターを留置して、プラークの飛散を防止しながら手技を行っています。
重症の頚動脈狭窄症では、治療後に脳の血流量が急激に上昇し、過剰の血液が一挙に頭蓋内に流入することによって、頭痛・痙攣・錯乱状態などをきたす「過灌流症候群」が生じる事があります。最悪の場合は脳血管が破綻し脳出血をきたし生命に関わることもあります。当院では、術前に脳血流シンチ検査などの検査で過灌流症候群の危険性を術前に十分に評価し治療を行なっています。


頚動脈狭窄症に対する頚動脈ステント留置術
頚部の内頚動脈(脳に向かう血管)に高度の狭窄を認めます(矢頭)。ステントを留置し頚動脈の狭窄部位を修復しました(矢印)。


4)脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻の脳血管内治療

脳動静脈奇形とは病変部の毛細血管が生まれつき欠損し、ナイダスと呼ばれる異常血管によって動脈と静脈が連結している疾患です。病変部血管は正常血管に比べ脆弱で脳出血やくも膜下出血をきたし発症します。脳血管内治療では、非常に細いマイクロカテーテルをナイダスの直前まで誘導し塞栓物質を注入し病変部を硬化してしまう治療を行います。
硬膜動静脈瘻とは、脳を流れる血液の流出路である硬膜静脈洞と呼ばれる部位に病的な動脈が直接吻合し、静脈洞内の圧力が異常に上昇し脳の血液がうっ滞し、脳の機能障害(運動障害や認知機能の障害など)をきたす疾患です。静脈洞内の圧力が極度に上昇すると、血液が脳内に逆流して重篤な脳出血をきたすこともあります。耳の後ろにある静脈洞が罹患すると耳の近くに多量の血液が流れるため耳鳴り(血管雑音)がしたり、眼の奥の静脈洞が罹患すると眼球が充血し突出しさらに悪化すると失明することもあります。脳血管内治療では、罹患した静脈洞にプラチナ製のコイルなどの塞栓物質を充填し静脈洞から脳や周辺組織への血液の逆流を止めたり、静脈洞に流入する病的動脈から塞栓物質を注入し静脈洞との吻合を遮断する治療を行なっています。


5)その他の脳血管内治療

その他、良性腫瘍の外科的摘出術の術前処置として腫瘍の栄養血管に塞栓物質を注入し手術時の出血を抑えたり、再発を繰り返す硬膜下血腫に対し出血源の血管を塞栓するなど、外科的治療の補助として脳血管内治療を行なっています。