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呼吸器外科(呼吸器外科診療Q&A(肺がん検診篇))

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呼吸器外科

呼吸器外科診療Q&A~肺がん検診篇

がん検診、とくに肺がん検診に関する質問

毎年毎年、健診のお知らせが届きます。よく見もせず、そのままゴミ箱行きにしていないでしょうか。物は試し、検診を受けてみませんか。大変な額の予算と人員を割り当てて実施し、ほぼ無料に近い金額で受けられるサービスです。有難迷惑?日々の生活でお忙しいこととは思いますし、今日も、そしておそらく明日も、お元気でお過ごしのことでしょう。健診/検診については、様々なご意見があることも、もちろんよく承知しております。

健診/検診に関して受ける様々なご意見に、幅広く、できるだけ多くお答えしたく、本項をまとめました。重複や冗長については、お許しください。多少なりとも、個人の見解を含んでおりますが、長年、肺がんの診断や治療だけでなく、一般健診や肺がん検診業務に携わってきた医者の素直な意見でもあります。ご承知の上、ご一読くだされば幸いです。

Q)肺がん「健診」ですか、肺がん「検診」ですか?

A)肺がん検診です。

「けんしん」と打つと、健診と検診の2つの候補が出ます。医師でも、正確に使い分けできる人は、少ないですが、特定のガンの検査として行う場合は、「検診」になります。

全身を網羅的に検査して、異常がないと判定する行為を、健康診断と言います。健康診断のために行われているサービス(制度)のことを、健康診査(けんこうしんさ)と言います。健康診断であれ、健康診査であれ、「健診」と略されます。健診は、病気の予兆を見つけ、早期に改善を促すことで健康状態を維持しようとするものです。今罹っている病気を逐一調べ上げようとするものではありません。「全身を網羅的」という点が重要で、「くまなく、隅々まで」ということではありません。

一方、健常(と思われている)者に対して、特定の病気に焦点を絞って、すでにその病気に罹っていないかを検査する制度を「検診」と呼んでいます。肺がんの有無を一斉検査する制度が、肺がん「けんしん」ですので、「検診」の字になります。「検診」は何かを略したものではありません。

Q)「健診」でも、肺がんはチェックされていますか?

A)胸部レントゲン検査があれば、必ずチェックされます。ただし、健診で必ず胸部レントゲン検査を受けられるとは限りません。

学生や就労者に行われている学校健診や会社健診では、胸部レントゲン検査は必須検査です(一部の年齢では省略可能)。これらの健診で行われる胸部レントゲン検査は、実は結核の有無を調べることが主な目的で施行されているものです。しかし、実際には、肺がんのチェックも、当然行われていますし、肺がんの疑いがある所見を、(結核を調べるのが目的だからと言って)異常なしとは、絶対にしません。学校健診や職場健診以外の、国が施策として行う健診は、特定健診と言い、胸部レントゲン検査は必須検査に含まれていません。胸部レントゲン検査が含まれているかどうか、健診を受ける前によく調べておきましょう。

Q)「健診」と「検診」の違いは、何ですか?

A)特定の病気の予兆を調べるための検査が健診で、特定の病気の有無を調べるのが検診です。

かなり大胆に例えると、「日本人なら、こうでなければいけない」と言うための検査が「健診」で、「まさか、こんな病気は持ってないよね」という検査が「検診」です。健康であり続けるためには、こうでなければ、と言える状態かどうか調べるのが健康診断で、病気を見つけるためと言うより、今後病気になりそうな人を見つけ、対策を促すためのものです。予防医学です。現在の日本人では、成人病と呼ばれていた生活習慣病が、「健康であるために最も警戒、予防すべき病気」となるので、施策として行われている健康診査は、生活習慣病かその予備軍かどうかを調べるのが基本になっています。それで別名「メタボ健診」と言うわけです。ですので、異常がある人には、「こんな生活を続けてはいけない」「生活習慣を変えなければいけない」と指導します。職場の定期健診も、今日ほぼ同様に生活習慣病予防が中心です(一般健康診断と呼ばれます)が、もちろん、職場健診と言う以上、業務に従事することに起因する、いわゆる職業病の早期発見を目的とした健診(特殊健康診断と呼ばれます)や、海外赴任者、給食業務従事者への感染症検査など、一般健診では行われない検査も行われています。

対して検診は、一見、健康そうな、自覚症状が何もない人に隠れている病気を見つけ出すものです。病気を何もかも見つけようとしているわけではなく、検診の段階で、検査の対象とする病気は決まっています。検診で「異常あり」なら、当然疑われる病気に絞って、精密検査が行われますが、検診で「異常なし」は、検査の対象となる病気の所見はないということにすぎず、それ以外の病気の存在まで、否定されたのではないことにご注意ください。

自覚症状がある人は、健診や検診の対象者ではありません。普通に医療機関にかかり、保険診療で検査を受けることになります。自覚症状の原因を、集団健診で調べようとするのは全くの筋違いで、ほとんどの場合、無意味です。

Q)健康診査と健康診断は、違うものですか?

A)厳密には違いますが、一般には区別する必要はありません。

診断は医師が下す医療行為なので、行政が施策として実施する行為は、「診査」と呼び分けています。健康診断のために行う健康者集団へ行う検査のサービスを健康診査と理解してよいと思います。ただし、健診機関や会社が実施している定期健診などは、健康診査とは呼ばず、健康診断です。紛らわしいです。

健康と判定するためには、何も症状がない(健康と思われる)人に、様々な検査を行う必要があります。ところが、我が国の国民皆保険制度は、病人を治療するための制度で、何も症状がない人に、何も病気がないことを検査して調べることは、原則として禁止しています。無症状者を検査で異常なしとするためには、別枠の制度が必要で、これが健康診査という制度です。

国の健診制度は、この健康診査を基本に構成されています。健康診断とは言え、何にもかも調べるわけにもいきません。現在は、生活習慣病の予備状態に当たるメタボ(メタボリック・シンドローム、内臓脂肪症候群)を検査・診断の対象に特定していますので、「特定」健康診査と呼びます。この制度は国が定めているものですから、実施すべき検査項目と異常の判定基準、指導基準は全国同一です。国の施策ですが、実際に実施しているのは、健康保険組合などの保険者と呼ばれる組織です。実施する保険者によっては、これに独自のオプション検査を加えて、保険加入者にサービスを提供している場合があり、実際に受ける健診の内容は、全国皆同じとはなっていません。

Q)健診=住民健診のことではないのですか?

A)現在は、住民健診という正式な健診制度はありません。自治体が行っているのは、検診と一部の人への特定健診だけです。

健診と言うと、住民健診と言う言葉を思い浮かべる方も多いかもしれません。住民健診は、健診事業を実施主体別に分けたときに用いられる言葉の一つです。自治体が実施主体となって、地域の住民に対して健診/検診を行うときに使います。他にも、例えば事業所健診と言えば、会社健診のことになります。今でも、住民健診という言葉が使われることはありますが、かつてのような、自治体が実施主体となって、地域住民を対象として健診を実施する制度(基本健康診査と呼ばれていました)は、平成20年に終了しています。その後、国民全員に対する健診は、一人一人が加入している保険組合が、加入者・被扶養者に対して実施することとなり、特定健診と呼ばれるようになっています。現在、自治体が地域住民に対して実施しているのは、がん、肝炎ウイルス、骨粗しょう症、歯周病に対する検診と、保険者が行う特定健診から外れる人(生活保護受給者、後期高齢者、若年者など)や国民健康保険加入者に対する特定健診です。後期高齢者では、今日なお健診(後期高齢者健康診査)の実施主体は自治体となっていますから、健診=住民健診と考えて良いかもしれません。

Q)人間ドックと住民健診や会社健診では、肺がん検診の内容が違うのですか?

A)違うこともあります。

行政が行う肺がん検診では、国が指針として定めた検査対象者と検査方法があり、基本は胸部単純レントゲン写真撮影(レントゲン装置の前で立って撮影する検査)です。これに50歳以上の重喫煙者に限って、痰の検査(喀痰細胞診検査、かくたん・さいぼうしん・けんさ)が追加されます。

会社健診でも、胸部レントゲン検査が行われます。本来これは、結核対策として行われて来たものではありますが、実際には肺がんのチェックが行われています。痰の検査(喀痰細胞診検査)は、胸部レントゲン検査で必要があると判定された人にだけ行われます。

人間ドックは、検査項目や内容に決まりはありません。人間ドックを実施する医療機関や健診機関が独自に検査項目を組み、事前にメニューを提示しています。受診者は、提示された中から検査内容を選びます。検査項目によって、費用は大きく異なり、自費ですので、かなり高額になることも多いです。行政が行う(対策型)健診に対して、人間ドックは任意型健診と呼ばれます。人間ドックでは、胸部レントゲン撮影に加えて、胸部CT撮影を肺がん検査として行うことも多いです。また、人間ドックの中には、全身を一度に検査できるPET(ペット、Positron Emission Tomography (陽電子放出断層撮影))検査を、がん検診として行っている場合もあります。

Q)毎年会社で受けている健康診断と、肺がん検診は違うのですか?

A)目的は違いますが、どちらも胸部単純レントゲン検査が基本で、ほぼ同じと考えてよいでしょう。

会社で行われている毎年の健康診断は、労働安全衛生法と言う法律によって企業(会社)や事業所に義務付けられている定期健康診断です。胸部レントゲンに限って言えば、元は、結核が蔓延しないよう敷かれた制度で、現代でも、基本的には職場での結核感染を予防するためのものです。しかし、検査としては同じものですし、実際には、肺がんも必ずチェックされています。結核が減少した今日では、異常があれば、むしろ肺がんを第一に疑うことが多いです。就業者が対象ですから、肺がんとしては受診者の年齢層が低くなることが多く、決して肺がんの発見率は高くはありませんが、甘く見ず、必ず受診して下さい。ちなみに従業員の健診受診率が低いと、会社が当局(労働基準監督署)から指導を受けます。

Q)肺がん検診は、何年ごとに受けるのがよいのですか?

A)国の指針は1年ですが、適正な検診の受診間隔については、厳密にはわかっていません。

出現して2~3カ月で、急速に増大するような肺がんもありますが、多くの場合、細胞レベルのガンが、レントゲンで見えるような大きさに成長するまで、1~2年程度の時間がかかるといわれています。すべての肺がんを見つけようと思えば、受診間隔を短くすれば良いのですが、効率やエックス線の被曝という点で問題があります。かと言って、受診間隔を延ばせば、早期発見できる可能性は下がってしまいます。最適な間隔を決めることは容易ではなく、十分な比較検討はできていません。科学的ではないかもしれませんが、忘れないように1年おきに受けるのが現実的でよいかと思います。何も問題がなくても、それはそれで大切な情報です。診療現場では、いつも過去のレントゲンはどうだったか気にしており、異常があった時には、過去のレントゲン写真が大変役に立ちます(比較読影と言います)。

Q)肺がん検診で異常(要精密検査)とされましたが、怖くて病院(二次検診)に行けないのですが?

A)過剰に心配しないで、落ち着いて医療機関を受診して下さい。実際に肺がんである確率はまだ低く、例え肺がんであったとしても、治る可能性がある肺がんである可能性は高いです。

肺がん検診での、がん発見率は、およそ2000人に1人、0.05%で、昔も今も、あまり変わっていません。しかし実際には、レントゲン1枚の検査で、いきなり0.05%の肺がんが見つかるわけではありません。肺がん検診は、2段階で肺がんを見つける仕組みになっており、疑わしい人は、とりあえず精密検査してもらうのが基本です。ちなみに、肺がん検診で「要精密検査」と判定される人の割合は2%で、受診者50人に1人です。結構多くないですか?

そのため、肺がん検診で「要精密検査」とされた人を、実際に精密検査してみても、結局肺がんではない人のほうが、実は多いのです。「要精密検査」と判定された人のうち、実際に肺がんが見つかる人の割合も、同じく2%で、要精査50人に1人です。この数字は逆に少なくないですか?

肺がん検診受診者1万人で肺がん4~5人と言いますが、実際には、このように1/50 x 1/50 = 1/2500 =4/10000、という2段階の仕組みで見つけ出されているのです。この数字、割合は厚生労働省が公表している平成27年度の肺がん検診の実績そのものです。肺がん検診で「要精密検査」となっても、まだまだ49/50 = 98%の確率で肺がんではないのです。

異常なし、でなかったことは残念ですが、まだ「がん」と決まったわけではありません。要精査でも、まだ98%の確率で「がんではない」のです。とは言え、残り2%の「肺がん」であった場合は、命にかかわります。その肺がんを調べるために検診をしているのです。恐れず、侮らず、覚悟を決めて医療機関を受診して下さい。

Q)レントゲン検査で、毎年エックス線を浴びても大丈夫ですか?

A)大丈夫です。

もちろん、必要がないのに、エックス線を浴びてはいけません。浴びないで済むなら浴びないほうがいいのは間違いありません。しかし、エックス線なしに肺がんの検診はできません。

胸部単純レントゲン撮影で受けるエックス線の量は、胃のバリウム検査の1/50、おなかの単純レントゲンの1/20程度です。毎年何百万人という人が検査を受けています。肺がん検診を意味があるものと思うならば、個人としての被曝量は、全く問題になりません。

可能性を云々言うなら、胸部レントゲン撮影が一人の人に与える影響の大きさと、知らないうちに(?)肺がんに罹っている可能性の大きさを比較して見てください。日本人男性の十数人に1人(女性はおよそ50人に1人)が、肺がんで死亡する時代で、長生きすれば長生きするほど、肺がんに罹る可能性は高まります。一方、エックス線被曝によるガン化の可能性は、およそ70万人に1人と言われています。1年に1枚のレントゲン撮影が、あなた個人の人生に及ぼすデメリットより、肺がんを早期に見つけた時のメリットの方が圧倒的に大きいのではないでしょうか。どちらを重視するかで決めてください。

Q)血液検査で行う肺がん検診は、ないのですか?

A)ありません。

腫瘍マーカーと言う血液検査の異常が、肺がん発見のきっかけになることはありますが、腫瘍マーカーの異常と、新規の肺がん発生は、連動しないことが多く、また腫瘍マーカーは、肺がん以外のガンでも上昇することが多いため、肺がんの早期発見を目指す方法としては適していません。

腫瘍マーカーは、肺がんの発見には向いていませんが、不思議なことに、肺がんの再発時には、非常に早い時期から上昇することがあります。肺がんの術後検査として有用なので、手術後は定期的に腫瘍マーカーを検査することが多いです。再発の時だけ鋭敏に上昇する理由は、わかっていません。

Q)肺がん検診を受ければ、必ず肺がんを発見できますか?

A)肺がんの発見を100%保証するものではありません。

検診自体が、全てのガンを発見しようと実施されている制度ではありません。少しでも多く、少しでも早く、ガンを見つけようとしていますが、限界があり、結果として、(集団に対して)最も効率が良くなるような方法や制度が取られています。残念ですが、肺がんに限らず、がん検診は、ある一定の割合で、発見できないガンがあるということは認めて、成り立たせている制度なのです。

Q)肺がん検診でわからないのは、どんな肺がんですか?

A)レントゲンに薄くしか写らないもの、そもそも小さいもの、骨や心臓などの陰にあるもの、形が非典型的なものなどです。

胸部単純レントゲン写真では識別できないような薄い影を示す肺がんや、とても小さい肺がんは当然分かりにくいです。骨や心臓、肝臓など濃い陰影を示す臓器の影に重なっていると、小さくなくても分からないことがあります。近年、肺がんが増えて分かってきたのは、肺がんは円形だけでなく、色々な形状を示すことがある点です。これまでは異常とは指摘していなかったような形の影でも、肺がんであったりします。気管支の壁にできる肺がんも、単純レントゲンでは見つけることが難しいもののひとつです。気管支に出来る肺がんを、何とか早期に見つけようとするための検査が、喀痰細胞診検査ですが、それでも100%わかるものではありません。胸部レントゲン検査と痰の検査だけの検診では、発見できる肺がんには限界があります。

Q)検診では、見落としや見間違いはないのですか?

A)ゼロにはなりません。

画像を見て判定する肺がん検診では、判定医の主観的判断が頼りです。見落としや見間違いがゼロになることが理想ですが、どんなに修練を積んでも、ゼロになることはありません。紛らわしい形状の影や、レントゲンでは見えない薄い影、正面のレントゲンでは他の臓器の陰になる影など、見落としや、見間違いになってしまうような、紛らわしい影はたくさんあります。そもそも見えない影もあるのに、何を見落とし見間違いとするかも難しいところで、間違いがゼロでなければ絶対ダメとなったら、検診事業を担える人はいなくなります。

対策の一つは、同じレントゲン写真を複数名で判定することです。肺がん検診では、2人以上の医師がチェックしあうことを推奨しており、当院がお手伝いしている朝霞医師会の肺がん検診でも、毎月数回当院に集まって、画像を読影し合い、検討会を開いています。難しいケースがあると、レントゲンの前にみんなが集まって、意見を出し合い判定しています。難しいケースは、誰が見ても難しいのが普通です。

他の対策としては、多少の見間違いには目をつむり、少しでも怪しければ異常に判定する方法があります。あまり感心したやり方ではありませんが、見落としを減らすためには、ある程度やむを得ないとも言えます。レントゲンの検診は一次検診と呼ばれますが、まだ次の検診段階が残っています、まだ病気と決めたわけではありません、という意味でもあります。一次検診では判定に自信が持てないので「要精密検査」の判定をつけることは、時々あります。「おそらく大丈夫と思いますが、念のため二次検診で確認して下さい」との思いを込めた判定です。

Q)検診で見つかったのに、すでに手遅れと言われました。これまで見落とされていたのではないですか?

A)肺がん検診で発見されたからと言って、必ずしも早期の状態とは限りません。

肺がん検診では、手術できるような初期の肺がんを見つけることを目指していますが、肺がん検診で発見されたからと言って、必ずしも手術ができる段階とは限りません。大変残念ですが、それが現実です。(検診以外の場合も含み)肺がんと診断された方のおよそ半数は、いわゆる手遅れの状態で見つかっているというのが、肺がん診療の現状です。

Q)検診で異常があって、精密検査までしたのに、ガンかどうかわからないと言われました。おかしくないですか?

A)肺がんでは、検査を尽くしても、ガンと確定できないことはよくあります。肺がんを確実に診断できる特別な検査など、世界中どこにもありません。

原則として、ガンの診断は、病巣を体外に取り出し、取り出したものを顕微鏡レベルで観察し、顕微鏡検査でガンと診断(病理診断と言います)できて、はじめてガンとします。顕微鏡での診断がなければ、ガンと確定しない、つまりガンの診断名は付けないことになっています。肺がんの場合、検診の判定の段階では、まだガンの疑いであり、病巣のおおよその形と位置を見つけただけです。肺の中にあるがん細胞を、体外に取り出す方法としては、気管支鏡と言う検査手技が主に使われます。しかし、気管支鏡検査は、胃や大腸の内視鏡検査と違い、がん病巣を直接見て病巣を取ることが、ほとんどできません。特に小さなガンや薄いガン、あるいはガンの場所によって、がん細胞が取り出せないことは多く、検査医泣かせです。気管支鏡を繰り返すことで、ガンを検出できる可能性は高まることがわかっていますが、合併症や体の負担を考えると、なかなか繰り返して実施できる検査ではありません。CT検査では強く肺がんを疑う所見があるのに、がん細胞が取り出せないという状況は、今日よく遭遇する状況で、決して診療水準が低いからではありません。どうしても納得がいかないなら、他院でのセカンドオピニオンや、検査のやり直しを申し出るのが良いと思います。

Q)精密検査でも肺がんかどうかわからないから、手術を勧めると言われました。納得できません。

A)精密検査で強く肺がんが疑われる時は、このまま経過を見ず、手術で肺がんの診断を確定した方が良いと思われます。

精密検査しても、ガンと確定できないことがよくあることは、前項で述べました。気管支鏡などの検査で、がん細胞を体外に出すことができない場合は、手術で取り出すほかありません。手術をしてでも診断を急ぐべきかどうかは、精密検査の所見によります。検診の本来の目的である「早期発見・早期治療」を旨とするなら、精密検査で肺がんが疑われる場合は、手術もやむを得ないと思われますし、実際、そのような事例は多いです。

Q)手術をして肺を取ったのに、結局がんではありませんでした。誤診ではないですか?

A)誤診とは言えません。顕微鏡検査の診断がなければ、検査段階では、ガンは可能性の段階で、あくまで疑いに止まります。最終的に手術をしたけれども、結局ガンでなかったということも、少ないですがあります。

別項で述べたように、肺の病巣は、例え一部でも、手術でしか体外に取り出せない場合があります。手術以外に確実に病巣を取り出す方法がないということは、手術せずにガンを確定することが難しいということでもあります。

困ったことに、肺は無造作に切り刻むと、修復できなくなるため、肺内の病巣だけを抜き取ることは通常行いません。肺を切り取る場合、5つに分かれている肺の構造上の基本的単位(肺葉、はいよう)ごと取らないといけない場合も少なくなく、小さな病巣を取り出すために、わざわざ肺全体の1/4近くとらなければならないこともあります。ここが、乳がんや胃がんなどの他のガンと大きく違う点です。乳がんや胃がんを診断するだけのために、乳房や胃などの臓器を2割も3割も取ることは、ほとんどないでしょう。

結局、肺の1/4近くを取り出したけれども、中の病巣はガンでなかったという場合もあり得ます。手術そのものが無駄になったとも言えますが、現代の医療水準では、このような事例を完全にゼロにすることはできません。無駄な手術とならないよう、様々な検査や経過などの情報から、ガンか否か検討されたと思いますが、顕微鏡での証拠がない限り、推定の診断しかできません。肺がんの診断に完璧ということはなく、手術までしたのに結果としてガンではなかったということは、十分有り得ることです。それだけでは誤診とは言えません。

Q)検診では肺がん以外のガンや腫瘍も見つかるのですか?

A)肺がん以外では、とくに縦隔(じゅうかく)の腫瘍性病変が見つかることがあります。

肺がん検診では、縦隔(両方の肺の間)と言う場所に出来た腫瘍が、特にCT検診で見つかるケースが増えています。縦隔腫瘍については別頁をご参照ください。

Q)肺がん検診でレントゲン検査を受ければ、肺がん以外の肺の病気もわかりますか?

A)わかることもありますが、あまり期待しない方がいいです。検診で異常なしとされていても、ガン以外の病気もないとは思わない方が良いです。

何枚もの検診のレントゲン写真を見ていますと、「あ、これはひどい肺気腫だな」とか「これは間質性肺炎の陰影かな」など、肺がん以外の肺の病気がわかることは少なくありません。住民検診では、受診者の年齢層が高くなっており、高齢者では、まったく所見のないレントゲンに出会う方が少ないくらいです。肺がんや肺結核、ひどい心不全や動脈瘤などなければ、年齢相応かなとか、良性病変で今症状がなければよいか、とか判定に情状酌量が入ることの方が多く、「要精査」判定にしないことが多いです。肺がん検診の制度上も、そのように判定することになっています(別項を参照ください)。細かい所見まで知りたい方は、かかりつけ医でレントゲンを撮って、かかりつけ医から直接指導や助言を受けたほうがよいでしょう。

Q)病気の所見があっても、要精密検査と判定しないのですか?

A)肺がん検診では、肺がんの疑いがある場合、結核などの感染症の疑いがある場合、心不全や動脈瘤など切迫した循環器疾患がある場合など、至急精密検査や治療が必要な病気以外は、重度でなければコメントに留めることが多く、精密検査は不要と判定します。

胸部レントゲン検査には、そのまま放置して問題ない異常所見もあります。例えば、肺の手術を受けた人の胸部レントゲンには、(正常では見られない)所見があるのが普通ですが、異常所見です。肺がん検診にはAからEまでの判定区分が規定されていて、例として挙げた手術後の変化などは、C判定(正常にはない所見があるが、問題ないと判定される時)になります。ところが、Cの次のD判定は、肺がん以外の病気で、かつ至急の治療が必要な異常を認める時です。活動性の結核や肺炎、重症の心不全・大動脈瘤などがDの判定です。至急でないが、できれば治療や精密検査をしたほうが良いと思われるような、慢性的ではあるが、進行性の病気を見つけた時の判定項目がないのです。検診画像を読影し、このCとDの判定の間にあたると思える人に、「急がないけど、これからのために、できれば病院で詳しい検査を受けた方が良い」という読影医の思いを、現状の判定基準では、受診者に通告することができません。

受診者は、健康診断の一環として、胸部レントゲン検査も受けたはずで、症状がなければよいとの判定基準には、受診者の期待と多少齟齬があるのは否めません。一方で、国民医療費高騰の中、肺がんの検診をうたっている以上、特に生存の危機が逼迫することが予想されないような、慢性の異常所見まで、すべて精密検査に回ってもらうわけにはいかない事情も、理解できなくもありません。健診・検診と言っても、必要最小限の検査しか行われていないことを、よく知っておく必要があるでしょう。ともかく、肺がん検診では、一般に、何か病気は疑われる所見があっても、至急の治療を必要としていない場合はC判定(異常所見を認めるが精査を必要としない、定期検診の継続を指導)になります。

Q)肺がん検診には、判定基準があるのですか?

A)肺がん検診として行われている場合は、「判定区分」と呼ばれるものがあります。健康診断や人間ドックなどでは、肺がんの検出だけが胸部レントゲン検査の目的でないことも有り、独自の判定基準が使われていることが有ります。

まず、検査結果に対する正常・異常の判定基準は、全国一律ではなく、実施する施設ごとにバラバラであることを知っておいてください。特に人間ドックなどでは、その傾向がよく見られます。肺がん検診は、国の施策として行われており、全国均一で、かつ相応の水準を保つ意味から、判定の基準が定められています。具体的には、A:読影不能、B:異常所見を認めない、C:異常所見を認めるが精査不要、D:異常所見を認め肺がん以外の疾患で治療が必要、E:肺がん疑い、の5つの「判定区分」があります。「異常なし」はAではなく、Bです。Aの時は、(病気の検査ということではなく、検査のやり直しという意味で)もう一度レントゲンを撮り直す必要があります。要精密検査はDとEです。Dは肺がんが疑われているわけではありませんが、至急、検査か治療が必要な病気があるということですので、DとEの判定が付いたら、急いで病院で検査を受けましょう。それ以外の病気や病状には、要精密検査とはついていないことにも、ご注意ください。

ちなみに、Dの場合は、疑われる病気の種類別に、数字をつけます。結核ならD1、それ以外の肺の病気ならD2、心臓や血管の病気ならD3で、縦隔腫瘍などその他の病気はD4です。Eに数字が付いている場合は、がんの可能性の程度を示し、E1は疑いを否定できない(少し嫌疑が弱いという意味)、E2は強く疑うで、多分がんと思うという意味になります。

Q)肺がん検診は、CT検査のほうがよいですか?

A)小さい肺がんや薄い肺がんも、できるだけ見逃したくないのであれば、CTでの肺がん検診をお勧めします。

CT検診では、数ミリ以下の小さな病変や、単純レントゲン写真には写らないような初期型の薄い肺がんでも、見つけることができます。単純レントゲンと違い、3次元方向の情報(形状)を見ることができ、読影の易しさは、胸部単純レントゲンの比ではありません。単純レントゲン写真だけの肺がん検診に比べて、CTでは、およそ10倍の肺がんを発見でき、発見できた肺がんの8割は、初期の肺がん(レントゲンに写らないタイプの肺がん)であるとも言われています。

CT検診には欠点も指摘されています。CT検診での欠点については、別項をご覧ください。

Q)なぜ、全員にCTでの肺がん検診をしないのですか?

A)問題をいくつか指摘されているからです。

放射線被ばく量が多いこと、CT装置の数が検診用としては不足していること、一人当たりの検診時間が長くて対応できないこと、がん以外の細かい病変まで見つかりすぎて、かえって肺がんの検出率を下げてしまうことなどの問題があるからです。

大きな問題は、放射線被ばくの問題です。胸部単純レントゲンに比べ検診用の撮影方法(低線量撮影といいます)でも20倍くらいの被ばく量になります。これまでの研究で小さい肺がんを見つける確率は、十分高くなることはわかっていますが、肺がん以外の病変を肺がん疑いとして検出してしまう欠点もあり、なかなか解決策がない状態です。

装置も高価で、検査費用も掛かります。検診間隔を2年にするという案もあるようですが、まだまだ国民全員が受けるべきという段階には至っていません。

Q)肺がん検診用のCTは、病院のCT検査とは違うのですか?

A)検診用はエックス線の被ばく量を下げるため、画質をわざと落としています。

肺がん検診でCT撮影する場合は、放射線線量を可能な限り下げた撮影方法をとります。画質は悪くなり、焦点がずれたボケたような映像が出来上がります。病院などで診療用に使うCTでは、病変を可能な限り繊細に描写できるように装置の撮影条件を設定しています。CT装置自体も、検診用に比べ、診療用のものは非常に高性能なものが多いです。近年のCT装置は改良され、10年、20年前の撮影装置とは比べ物にならないほど、低い線量で、短い時間に検査でき、出来上がる画像も鮮明です。検診でCT検査したからと言って病院でのCT再検査に難色を示す方もおられますが、正確に病気の診断治療をするためには、病院でのCT再検査が必要な場合がほとんどです。

Q)なぜ、痰の検査まで必要なのですか?

A)肺がん細胞が痰に混ざって排出されることがあり、痰の中にがん細胞がないかチェックするためです。

肺は気管支の最先端に空気の行き止まり空間があり、そこでガス交換(酸素を取り込み、二酸化炭素を出す)します。この空間の壁にあたるところを肺胞(はいほう)と呼びますが、肺胞に通じる空気の通り道を気管支と呼びます。肺がんにはこの気管支にできるものがあり、ここにできたガンは、比較的小さいうちから、脱落して痰と一緒に排出されることがあります。痰を集めて、痰に混ざったがん細胞の有無を調べることで、肺がんの有無を検査します。痰の検査だけではどこにがん病巣があるかまではわかりません。気管支にできた肺がんだけでなく、肺胞にできた肺がんや、肺以外の咽喉頭がんでも痰のなかにがん細胞が出ていることがあります。

Q)なぜ、痰の検査は全員にしないのですか?

A)肺がんの検出効率を考慮しているためです。

痰にがん細胞が出やすい肺がんは、中枢型肺がんといわれる比較的太い肺の根元近くにできた肺がんです。しかも高齢の重喫煙者のほうが検出されやすいことが分かっています。レントゲン検査で肺の隅のほうに影となって出る肺がん(末梢型とか肺野型肺がんといいます)では、がん細胞が痰中に出ることが少ないため、喀痰検査ではなく、レントゲン検査で肺がんを検査することになっています。

Q)どんな施設で、検診を受けるのがよいですか?

A)毎年、同じ施設で検診を受けることをお勧めします。

きれいな施設だから、新しくできたからという理由で、毎年のように違う施設で検診を受ける方がおられます。お気持ちもわかりますが、検診では過去のデータとの比較が重要です。検診の判定・診断などの経験から、過去の検診データが残っている施設で、繰り返し検診を受けることを、(肺がん検診に限らず)お勧めします。

肺がん検診ではレントゲンやCT所見の読影力が重要ですが、どのような能力を持った医師が読影を担当しているか、通常わかりません。都市部の施設ではアルバイトの医師が多いことも事実で、健診は研修医の仕事と思っている施設もあります。個人で開業しているような町の小さなクリニックでも、大変優れた読影をする医師は沢山いらっしゃいます。高級感のある内装や設備を売りにしている検診機関もありますが、診断能力とは関係ありません。

肺がんの画像を見慣れているのは、肺がんの診療経験が多いそれなりの医療機関とは思いますが、大きな施設では、肺がんの診療部門と健診の担当部門が別となっていて、肺がんの専門医が検診の読影を担当していることはむしろ稀です。単に施設の見かけや設備の豪華さなどから決めることは避けたほうがよいでしょう。

Q)貴院でも、肺がん検診は受けられますか?

A)当院では、低線量肺がんCT検診が当院放射線科で受診できます。通常の胸部単純レントゲンによる健診は、人間ドックの基本検査項目になっており、肺がん検診として当院健診センターで受診できます。住民健診(特定健診)などは、地域の医師会や行政機関などにお問い合わせください。

当院では、低線量肺がんCT検診が受けられます。計算上は、診療用CT検査に比べ、十数分の一程度まで放射線の被曝量を抑えることができるようになっています。厳密な被曝線量の比較は難しいのですが、概ね胸部単純レントゲン検査2回弱分程度と考えてよいようです。当科医師も、肺がんCT検診認定機構「肺がんCT検診認定医師」を取得しており、放射線科とともに低線量の肺がんCT検診を推進しています。検診の実施やお申し込みは当院放射線科となっております。詳細は当院放射線科ホームページをご覧ください。

当院では人間ドック担当の部署として健診センターがありますが、人間ドックでは、国が実施する肺がん検診として行われている胸部単純レントゲン検査が、基本検査項目として受けられます。人間ドックのお申し込みは当院健診センターへお願いいたします。

Q)健診の制度が分かりにくく、どれを受けたらいいのか、わからないのですが?

A)健診の制度が分かりにくいとのご指摘、その通りだと思います。胸部のレントゲン検査は、特定健診の必須検査項目ではないため、健診では受けられないことがあります。CT検査は、通常の健診では行われません。受診前に職場や行政の担当部署、ドックの実施施設に確認してください。

日本では、すべての成人が、年齢に見合った適切な健診を受けられるように、法律上の制度を、いろいろ組み合わせて全体を構成してきました。行政が整えてきた健診制度(対策型健診と言います)に加えて、個人が随時受けることができる健康診断(任意型健診と言います)も併存します。ただでさえ、わかりにくいのに、対策型健診は、基盤となる法律によって、健診を実施する主体(事業所や役所など)が違うだけでなく、目的や検査項目も異なります。実施主体が独自に検査項目を加えている場合もあり、さらに複雑になっています。負担額も制度により様々です。結果、人によって、職場によって、地域によって、年によって、同じ健診と言っても、内容が変わってしまうことがあります。ここでは、少し長くなりますが、肺がんの検診と言う視点で、各種の健診について説明します。近年、胸部レントゲン検査は、健診項目から徐々に外される傾向が強まっており、健診の内容には充分ご注意下さい。

就労者は、原則として職場での健診(職域健診)です。労働安全衛生法で毎年健診を受けることと定められており、就労者には受診が義務付けられています。古くは職業病の予防という視点から行われるものでしたが、今日では、生活習慣病予防健診ということになっています。胸部レントゲン検査も、本来、肺結核の蔓延を防ぐためのもので、今も主たる目的は変わっていませんが、当然、肺がんもチェックされています。効率の問題から、平成22年からは、職域健診での胸部レントゲン検査は、40歳以上の毎年か、20~35歳までの5歳毎に行われるように変更になっています。社内で一括して行われる場合や、個々で特定の医療・検診機関で一般健診として受けることもできますが、健診の結果は、職場へ提出する必要があります。

就業していない人(専業主婦や退職後の人たちなど)は、胸部レントゲン検査について、注意が必要です。健康増進法に基づく「特定健康診査(特定健診)」と言う制度で、生活習慣病予防健診を受けることになります。これは加入している保険証を発行している保険組合(保険者と呼びますが、人ではありません。保険に入っている人は被保険者です)が実施しており、お知らせが届きます。この特定健診は、以前の住民健診が、市町村から保険組合(保険者)に移管されたものと考えてよいのですが、国民健康保険加入者については、依然として保険者たる区市町村が実施しています。国保の加入者には、区市町村からお知らせがあり、非常に紛らわしいことになっています。いずれにせよ、40歳から74歳までのすべての人(保険加入者)が対象で、就労者も、当然受診できます。しかし、特定検診自体はメタボ健診であり、胸部レントゲン検査は含まれていません。同じ生活習慣病予防を謳っている、特定健診と職場健診ですが、必須検査項目は違うのです。実際には、特定健診を実施している健康保険組合や自治体が、独自に胸部レントゲン検査を検査項目に加えていたり、肺がん検診として併せて受診できるよう設定したり、助成や補助と言う形で人間ドックを併せて行ったりして、肺がんの検査も受けられるようにしている事が多いようですが、特定健診という健康診断には、胸部レントゲン検査が入っていないことを知らないと、せっかく健診を受けても、レントゲン検査を受け損ねてしまう可能性もあると思います。特定健診では、地域によって、公民館などで会場や日程を定めて行われる場合もあれば、医療機関を受診して行う場合などがあり、地域によって違うようです。職場健診と違って、特定健診の受診は任意ですが、対策型健診と見なされています。

75歳を過ぎると、高齢者医療確保法に基づく「後期高齢者健康診査」と言う制度になり、後期高齢者の保険証を発行している後期高齢者医療広域連合と言う組織が実施することになっています。多くの場合、業務委託されている自治体(県や市町村)からお知らせが来ます。生活習慣よりも、すでに成立している疾病の悪化や、生活自体の質の低下を起こさないことを主眼にした健診が行われます。この制度でも、胸部レントゲン検査は、検査項目から外されていますので、肺がん検診を併せて受けるか、人間ドックを受ける必要があります。

学生・児童に対しては学校保健安全衛生法によって、結核検診として胸部レントゲン検査が行われます。小・中学生では、胸部レントゲン検査での結核発見率は低いため、原則的に胸部レントゲン検査は、高校と大学の第一学年時だけ行われることになっています。学校が必要とした場合は、これ以外にも実施も可能とされているので、毎年胸部レントゲン検査を行う学校もあるようです。

がん検診は、これらとは別個の制度として、国が施策として行うもので、対策型健診に位置付けられていますが、受けるかどうかは任意です。がん検診を実施するのは自治体(区市町村)です。がん検診ごとに、受診できる年齢や条件が決められています。すべてのガンが対象になるわけではなく、(がん検診の有効性が確認されているという)肺がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5つだけです。

こうした健診事業とは別に、医療機関や健診機関が、独自に実施している人間ドックがあります。人間ドックは任意型健診に位置付けられます。検査項目を自由に設定でき、料金の設定も自由です。豪華なソファーや検査後の食事などを提供しているところもあるようです。会社や行政が行う健診やサービスに不満や不安があるなら、こちらを受けるのが良いでしょう。肺がん検診の場合は、CT検診があるかどうかを確認しておきましょう。

健診や人間ドックは、相互に情報提供するよう厚生労働省が通達を出しており、どこかでどれかの健診を受ければよいことになっています。例えば、ある病院で「人間ドック」をうければ、検査項目に不足がない限り、労働安全衛生法で定める職場健診を受けたことにしてよいということです。この件については、職場の担当者にお尋ねになると良いでしょう。このような事情もあって、同じ職場の仲間でも、受けた健診内容が異なってしまうことは、よくあります(法で規定される項目は最低限同じになります)。

法律で定めるものでない健診や人間ドックの場合、料金は自費です。法律に従って実施されている健診や検診は、国や地方自治体、保険者などが費用を一定額負担しています。いずれも、保険外診療ですので、治療行為は行えません。メニューにない検査も、通常受けられません。何か症状がある時は、保険診療で通常の診察を受け、それに見合った適切な検査を受けて下さい。安くつくことがほとんどです。

Q)検診車で受けるレントゲン検査は、病院での検査と違うものなのですか?

A)従来、検診車で行うレントゲン撮影は、間接撮影法という方法で行われることが多かったです。医療機関では、直接撮影法で行われ、少し異なる撮影方法です。現在は、検診車でもデジタル式の直接撮影が普及しつつあります。

「フィルム」自体が死語になりつつありますが、レントゲン検査はフィルムに焼き付けて行うのが一般的でした。フィルムを体に押し当てて、エックス線を放射します。体を通過してくるエックス線がフィルムを焼き付け、焼き付いたフィルムは現像されて、レントゲンフィルムとして観察できるものになります。これが直接撮影法です(実際には、フィルム上にある蛍光増感紙というものが、エックス線に反応して光をだし、それをフィルムに焼き付けます)。フィルムは体の大きさに合わせてあり、ほぼ等大です。1日に何百人と検診しなければならない状況では、このような「大きな」レントゲンフィルムへの撮影は、手間も暇もお金もかかりすぎます。そこで開発されたのが、間接撮影法です。エックス線に反応して光るものがあるわけですから、これを等大の、大きなレントゲンフィルムに直接焼き付けるのではなく、光る蛍光板自体を、少し離れたところから、写真機で撮るのです。少し離れたところから取ることが味噌で、体より小さいフィルム(10センチ四方)に、全体像を収めることができます。昔よく見た、写真フィルムと同じで、ロール式のものが使え、一つのロールで、何千人もの写真が収まります。結核対策に追われた戦前の日本の軍隊でも採用され、戦後の検診などで頻用されました。現在は、デジタル化された撮影機器を備えた検診車が多くなり、医療機関でのデジタル式のレントゲン検査とほぼ同じになっています。

Q)検診車のレントゲン検査は、受けない方がいいと言われましたが?

A)根拠が不明ですが、従来、検診車でのレントゲン検査の主流であった間接撮影法では、エックス線の照射線量が直接撮影より多い欠点がありました。一方で、間接撮影は、検診に限って言えば、直接撮影より、病巣を発見しやすいという意見もあります。

小さなフィルムに写った胸の間接レントゲン写真を、劣った検査のように言う医師もいますが、おそらく、間接撮影での検診フィルムを読影した経験が、あまりないのではないかと思います。何百人分も、何千人も実際に読影してみると、意外にも、間接撮影の方が、異常を発見しやすいと感じられるようになります。間接撮影では、小さい2~3ミリの病変は見えないと言いますが、2~3ミリの肺がんは直接撮影フィルムでも写りません。大きなフィルムでは、淡い変化は、かえって、ぼけて見えて、見逃しがちで、局所は良く見えても、全体が見渡しにくく、短時間での判定が必要な検診業務には向いていません。大きなスクリーンに映る映画を、一番前の席で見ているのと同じです。間接撮影は、小さなフィルムにコンパクトに収まっていて、全体を見渡すにも丁度良くできています。検診用として、よくできていると思います。もちろん、既に病気が疑われている人、病気と分かっている人では、より細かく所見が見える直接撮影の方が適しています。

撮影の原理上、エックス線の線量は直接撮影の2~3倍程度に増えます。それでも、自然界から1年間に受けるエックス線量には及ばない量で、過剰に恐れる必要はないのですが、線量を減らす努力はされています。その一つが、デジタル化による直接撮影の導入です。デジタル撮影は、フィルムの代わりに、エックス線センサーを並べたものを配置し、デジタル画像として撮影、保存できます。エックス線量も直接撮影に近く設定され、低線量化が図られています。

Q)デジタル式の方が、良いのですか?

A)懐古的ではなく、レントゲンフィルムのアナログ画像も、決して劣ったものではありません。改善されていますが、デジタルにも欠点はあります。それぞれ一長一短あります。

いまさらアナログ・デジタル論争をはじめても仕方ありませんが、レントゲン画像も、デジタル化すると、細かい情報は失われます。そのため、デジタル画像データの解像度や階調が十分でないと、観察に堪えない画像となって、読影力以前の問題になります。アナログでもデジタルでも、レントゲン画像はモノクロ(白黒)画像です。単色であるモノクロ画像では、画素数(どれほど小さい点に分けてデジタル化するか)に加えて、あるいは画素数以上に、白から黒までの階調(色の変化具合をどれほど細かく分けるか)が、画質の決め手になり、この点で、なかなかアナログに追いついていません。また、デジタルでは、撮影の機材だけでなく、観察に使うモニタ画面にも、十分な性能が要求されます。TVやパソコン用の安いモニタでは、全く用をなしません。フィルム画像を侮ってはいけません。

ただ、デジタル式の撮影装置は、撮影の設定も楽で、保存管理など、便利な点が多いのも事実です。行政の後押しもあって急速に普及しています。デジタル式の問題点には、技術開発で解決できるものが多いため、今後もデジタル化は進むと思います。

Q)がん検診の結果は、紙切れ一枚の通知だけですか?

A)原則、そうです。

そっけない感じですが、複数の医師がチェックした結果です。「異常」の判定は辛いですが、判定を付ける医師も十分考慮したうえで、チェックを付けています。判定の通知書をもって、然るべき医療機関を訪ね、二次検査(精密検査)を受けましょう。

Q)定期的に病院にかかっていれば、検診は必要ないでしょうか?

A)通院と検診は関係ありません。

通院の要因となっている病気が、目的とすべき検診の項目をすべて網羅し、定期的に検査を受けているなら、あえて検診を受診する必要はないでしょう。通院している(肺がん以外の)病気の検査のために、定期的に胸部レントゲンやCTを撮影している場合はあると思います。しかし、多くの場合、そうではないと思います。糖尿病で通院していても、胸部レントゲン撮影が定期的に行われることは、普通、ないでしょう。過剰診療・過剰検査などと批判されないよう、近年、医療機関は検査項目を必要最小限に絞る傾向にあります。病院にかかっていれば安心と考えている方が多いですが、思い違いです。

Q)毎年肺がん検診に引っかかる(異常と言われる)のですが、肺がん以外ではどういう影が引っ掛かりやすいのですか?

A)肺の場合は良性の腫瘤や炎症の後が、大動脈や心臓では拡張・拡大が、骨や軟骨と言った骨格の変性や異常などが、がんと紛らわしい影に見えることがあるためです。

過去の肺の病気がいつまでも残っていて、毎年のようにレントゲン検診で異常とされる方は少なくないと思います。以前は、古い結核の影が多かったのですが、最近は減っていて、原因(正体)不明の肺の良性病変や、病変とまでは呼べない組織の変性の影が多くなっています。

肺や胸膜の炎症や、炎症が消える過程で残った変化、例えば線維化(せんい、医学では繊維とは書きません)という変性では、組織が固くなったり厚くなったりするため、肺がんと見分けられないことがよくあって、読影医泣かせです。肉芽(にくげ、ニクガとは読みません)と言う、線維の周りに白血球などが集まってできた塊は、小さいガンのように見える事があります。乳頭(にゅうとう、乳首のこと)が写って、肺の病変に見えることもあります。他にも慢性に進行する肺の病気(肺気腫や肺線維症など)でも、時に肺がんの存在を疑わせるような影に見えることがあります。動脈が大きく湾曲して塊状に写ることや、骨や軟骨の一部が濃く写って塊状に見えて、レントゲン一枚では、「がんではない」と断定できないこともあります。本当に色々あります。

Q)同じ影が、異常と言われたり言われなかったりするのは、どうしてですか?

A)判定医の判断基準が違うからです。

精密検査をすべきかどうかの判断を、1枚のレントゲン写真から行うことは非常に難しく、実際には、その時の判定医師の印象で、主観的に決まると考えてよいでしょう。検診の判定医が、毎年同じとは限りませんし、同じ医師でも判定が変わることはありうることです。

統一的な判定基準は、一応示されているのですが、この判定基準は、レントゲン所見から、良性か悪性か、あるいはそれが病巣か正常な構造か、判ることが前提になっています。しかし、実際には、レントゲン写真一枚では、良性か悪性か見分けがつかない紛らわしい所見を、どう判定するか迷っているのであり、判定基準以前の問題です。この問題は、検査の本質上、いくら読影力がついても、完全には解消できません。年によって判定が変わる大きな要因になっています。

通常の診療で、レントゲン写真に正常では認められない影があれば、すべて異常と判定します。肺がん検診のレントゲン検査でも、これからの生活習慣への注意喚起として、肺がん以外の異常所見を、積極的に記載する判定医はいます。しかし、レントゲン検査が肺がん検診として行われている以上、異常所見が肺がんの所見でなければ、判定としては「要精密検査」とせず、「経過観察」や「異常なし」となるので、判定としては、受診した年によって変わることになるかもしれません。

Q)毎年肺がん検診に引っかかる(異常と言われる)のですが、やはり検診を受けた方がいいですか?

A)毎年同じ医師に、対面で対応してもらえる検診機関や医療施設を探すか、普段のかかりつけ医で検診を受けるのが良いでしょう。できれば、(2~3年ごとでもよいので)CTでの検診をお受けになることをお勧めします。

毎年、影に変化がなければ安心できますが、厄介なのは、こうした影のなかに肺がんができている場合です。陰に隠れて、少しずつ変化するガンに気づかれず、手遅れの状態になって、ようやく精密検査になるようなケースもあります。単純レントゲンでは、なにかの裏に隠れる病変も、CTなら隠されることなく見つけることができますので、こうしたケースではCT検査もお勧めです。もちろん、CTで見ても、良性か悪性かわからないケースはあります。

大きな施設では、検診のレントゲンは、毎年同じ医師が読影を担当しているとは限りません。また判定している医師が、過去のレントゲンまで比較したうえで判定しているかもわかりません。普通は誰が判定しても問題ないと思いますが、すでに何か検診の判定上、異常所見を抱えているなら、毎年同じ医師に、対面で質問でき、回答してもらえるような医療施設や検診機関で検診を受けてみると良いかもしれません。もっとも良いと思うのは、かかりつけの医療機関で継続的に検診を受け、データを残しておくことです。

Q)がん検診は、肺がんや乳がんのように、限られたガンでしか行われていないのですか?

A)国内での死亡率が高く、有効な検診方法がある程度わかっているガンが対象です。

特定のガンがあるか無いかを調べる方法は、多くのガンで定型的な方法があります。その検査方法を、ほとんどが健康の(そのガンがないと思われる)人たちの集団に対して、検診として行うべきかどうかには、いろいろ議論があります。がん検診も健康診断も、健康であることを証明するものではなく、特定の病気に罹っていないか、特定の病気になる予兆がないかなど、目的を絞った検査しか行われていません。がん検診だけでなく、人間ドックや健診も、受けたからと言って、すべての病気がチェックされたことにはなりません。誤解のないよう、ご注意ください。また、すべてのガンを一度にチェックできる方法などありません。

Q)検診の画像は、もらえますか?

A)一部の検診施設や人間ドックなどでは、サービスとしてコピーをもらえることがありますが、通常は、受診者には画像を渡していないと思います。その後の診療のために、医療機関から要請があれば、当該医療機関に対して、過去のものを含めて画像を提供(貸し出しなど)してもらえることがほとんどです。

健診での画像データ(レントゲン写真など)を受診者に渡すことは、普通は行っていないと思います。サービスとして、行っているという例はありますが、費用や本人証明などの手続きが必要になることが多いのではないでしょうか。本来、撮影された画像は撮影者のもので、モデルのものではありません。嫌なら、被写体となる前に、撮影を拒否するべきです。撮影されたものは、撮影者が責任を持って保存保管しなければなりません。個人情報だからと、所有権を主張される方があるようですが、自分の住所や名前が書かれているからといって、それが全て本人のものになるわけでは無いように、医療機関に保管されている個人に関する記録物全てに、本人の所有権があるのではありません。本人の同意なしに、情報を出したり、所有権を他者に移したりしないというだけです。病気の有無を調べるために行われたものですから、それ以外の目的では、撮影者でも使用することはできません。ただ、例外的に、他の医療機関から使用目的を示した正式な情報提供の要請があれば、過去にさかのぼって(原則として、肺がん検診では5年間保存)貸し出しをしてくれる場合が多いです。もちろん、正しい目的(受診者本人の診療のため)の時だけです。

Q)去年の検診では、大丈夫だったのですか?

A)去年の結果は、もうすでに過去のものです。

健診・検診に限らず、すべての検査結果は検査を行った時点での状態を示したものです。次の瞬間から、その結果は過去のものです。毎日毎日、何が起こるかわかりません。毎日毎日、検査をしていたら良かったのかもしれませんが、現実的ではありません。去年は大丈夫だったとしても、今年は分からない、だから、今年も検診を受けるということです。どんなに考えても、いつから始まったかは、誰にもわかりません。今すべきことは、過去を振り返って反省したり、後悔したりすることではなく、これからできることを知り、実践することです。

Q)1年中、検診は行われていないのですか?

A)健診の繁忙期を避けたり、集計や告知・報告などの事務手続きの時間を確保したりするため、受診期間を限定していることが多いです。

毎年、年度当初は入学者、就職者などの健診需要が高い時期になり、一般健診やがん検診を受け入れる余裕が、健診施設にありません。受診者側にしても、年度初めや終わりごろは、受診に行く余裕がない人が増えます。健診・検診を実施する主体である各行政機関や職場は、毎年の結果を集計し、監督機関へ報告する義務があり、年度一杯まで健診を実施しにくい事情もあります。一般の医療機関は、冬場に多く発生する病気が多いことから、検診を受ける余裕がありません。それぞれの立場から、検診の多くは、6月ごろから初冬までの期間に実施されることが多いです。

Q)コンピュータの自動判定や人工知能AI (artificial intelligence)による肺がん検診は、ないのですか?

A)まだ研究段階です。

心電図の判定には、コンピュータによる自動解析が1980年代から導入されていて、すでにかなり高い精度で診断できることが知られています。胸部レントゲン写真を自動解析する研究も、ほぼ同時期から行われてきましたが、残念ながら現在に至るまで、実用化には至っていません。平面画像から異常所見を抽出するだけなのですが、レントゲン写真は、情報量が多い上に、基準となる正常画像を設定できません。同じ人でも、撮影の条件や状態などでも微妙に陰影が変化し、ましてや初めてレントゲン撮影したというような人の異常を、正しく抽出することは、なかなか難しいようです。少なくとも現状では医師による判定に委ねるほかありません。

Q)肺がん検診の有効性は、証明されていないのですか?

A)有るとも無いとも、様々な結果が示されており、有効性があるにしたとしても、自明といえるほどの大きな差ではないのではないかと(個人的には)思います。

検診の効果に関する研究は、何十年も前から大規模な研究が繰り返し行われ、手法を変えながら、今日でも続いています。効果があるとするものと、ないとするものがあり、研究結果の解釈もいろいろされています。我が国では、肺がん検診は有効として、肺がん検診が推進されていますが、懐疑的に見ている人(専門家)は少なくありません。研究の歴史的経緯や結果の再現性などを見ると、差(有効性)があるとしても、自明といえるほどの差ではないのではないかと(個人的には)思います。

肺がん検診の有効性については、今後も新しい研究成果が出る度に議論が沸き起こるに違いありません。しかし、こうした議論に一般の方が付き合う必要はありません。現行の方法が変わらない限り、議論に終止符を打つような、誰もが納得できる明快な結論は、おそらく、当分、望めないと思います。ご注意いただきたいのは、こうした検診の有効性に関する研究は、特定の個人が、検査を受けたら損か得かを調べているのではなく、「集団」に及ぼす「費用対効果」を、「統計学的」に解析するものです。行政が、検診事業を政策として、つまり公共の予算を使ってまで行うべきかどうかの判断にするためのモノです。(この場合の費用対効果とは、単に投資予算の金額云々ということよりも、有害事象(検査による合併症)と死亡率減少効果の比較というような、利益vs不利益という比較で考えられています。)

集団に対する有益性など問われても、特定の個人にとって、どれほどの意味があるのでしょう。肺がんが心配なら、「集団検診の意義」など気にせず、検査を受ければいいのです。肺がん検診を受け続け、肺がんにならずに死んだら、無駄になった検査が損。検診で肺がんが見つかって治ったなら、拾えた命が得。検診で見つかっても、肺がんで死んだら、無駄になった検査や治療は全部損、のどれかです。肺がん検診が、無駄になるかどうかは、その人が死ぬまでは誰にも分かりません。個人個人で、損得の大きさを考えて、あるいはどれにあたりそうか予想して、どうするか決めればよいのです。

Q)肺がん検診での肺がん発見率は、向上していないのですか?

A)長年、肺がん検診は、胸部レントゲン検査主体のまま、大きく変わっていないので、発見率にも大きな変化はありません。

胸部レントゲン写真を基本とする肺がん検診では、これ以上、精度を上げることは、実際難しいでしょう。胸部レントゲン検査が検診に導入されたのは、結核対策のためで、戦前の徴兵検査や学校検診からです。現在の職域健診に引き継がれ、さらに1987年からは肺がん検診としても、行われるようになりました。胸部レントゲン検査は、今でも大変意義深い検査とは言え、やはり古い検査法であり、肺がん発見のための検査としては、限界はすでに見えています。肺には、ガンによく似た形の病変が沢山でき、レントゲン1枚では、見分けがつきません。胸部のレントゲン写真では、心臓やあばらなどの影に隠れている肺の面積が全体の半分以上あり、見えないところの方が多いのです。最新のCT検査が期待されましたが、余計な病気を見つけると言って、検診には不向きとされてしまいました。肺がん検診は、当分胸部レントゲン検査を主体とした現在の方法を実施し続けざるを得ないでしょう。肺がん発見率の向上の見込みは、当面薄いと思われます。

Q)それでも、肺がん検診を勧めますか?

A)少なくとも高齢者にはお勧めします。

肺がんに罹らず死ぬことができたら、肺がん検診は意味なかったと言えるかもしれません。確かに肺がんが非常に珍しい時代には、無駄に終わる人が圧倒的に多く、検診のありがたみを感じる人は多くなかったかもしれませんが、今は違います。男性では十数名に1人、女性では50人に1人が肺がんで死んでいく時代です。肺がんで死にたくなければ、少なくとも、肺がんのリスク(肺がんに罹る可能性)が高い年齢になったら、肺がん検診を受けておいた方が良いでしょう。

症状が何もない小さながんで見つけ、早く治療開始できれば、治すことができる肺がんは間違いなく存在します。肺がんで死なずに済む人の多くは、検診で発見されたか、他の病気の治療や検査で偶然発見されている人たちです。「症状が出てからでは遅い」は臨床医の実感です。早く見つければ、死なずに済む、とは限りませんが、死なずに済むのは、早く見つかった人です。これは間違いありません。

Q)肺がんにかかるのは嫌です。肺がん検診の見落としも怖いです。肺がん検診に頼らず、肺がんを早期発見できませんか?

A)CT検査の不利益を承知できるなら、時々CT検査を受けるのが現状では一番良いでしょう。

検診の枠を外して考えれば、CT検査は肺がん発見方法として現状これ以上の検査装置はないと思います。「CTで、見つからないような肺がんがあるとは、ちょっと考えられない」と感じてしまうほど、今日の最新の診療用CTなら、肺の微細な病変も発見できます。ただ、CTで分かるのは、形と場所だけです。それが、悪性のガンなのか、良性のものなのか、正体がわからないというジレンマが、精度が良くなったCT検査では新たに生まれています。

小さな病変も見つかるようになって、なんとも喜ばしい限りでしたが、集団検診としては、逆にこの、良性病変まで拾いすぎるという事実が、大きな不利益として判断され、CT検診の有効性が否定されてしまっているのです(もちろん費用や被曝の問題もあります)。大腸がん検診としての大腸内視鏡検査のように、検査による死亡事故というような不利益ではないのです。肺がんCT検診は、何かわからないものまで、「何でも見つけてしまうからダメ」とされているのです。

良性の肺病変のために手術となることは、確かに不利益ですが、こうした点を了解できるなら、やはりCT検査を適当な期間をあけながら受ける方法が、一番良いと(個人的には)思います。