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呼吸器外科(呼吸器外科診療Q&A(がん治療に迷ったら篇))

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呼吸器外科

呼吸器外科診療Q&A~がん治療に迷ったら篇

治療の選択に悩んでいる方への回答

がんの告知が、当たり前の時代になりました。多くの方は、突然の通告に戸惑い、「なぜ自分が?」「何が原因で?」など考えがちですが、今、犯人探しをしても、何も解決しません。考えを巡らせる時間も限られています。次にすべきことは、遅滞なく、最適な治療を選択することです。冷静な判断が難しい状況と思いますが、がん治療の選択を誤ると、時として生存の可能性を放棄することになりかねません。

がん治療を選択するにあたって、賢明とは思えない治療を選択する方や、再考を促したくなるような決断を下す方が、今も少なからずおられます。残念なことです。治療法を迷っていると言っても、おそらく、最適な治療は、すでに提示されているはずで、ただ、それを選択・実行する覚悟ができていないだけなのかもしれません。一時の感情や根拠のない先入観で、現実逃避のような決断をしては、命を無駄にしてしまいます。

困ったことに、わらをもつかむ心内を巧みに掴んで、病人を誤った方向へ導き、あるいは高額な金銭を要求しようと企む人たちが、ごく一部であれ、存在することも事実です。治療の選択に当たっては、誤った情報をもとに、判断なさらないよう切望してやみません。

多少の誤解を生むかもしれないけれど、それを承知で、あえてこの項を作りました。がん治療の選択に悩んでいる方に、一度目を通して考えていただければ幸いです。

ここでは、質問なしに回答だけです。「どんな治療を選べばいいのでしょうか?」の回答と言ってもいいかもしれません。

肺がん治療に焦点を絞っての話としていますが、きっと他の多くの病気にも共通して言える内容だと確信しています。


 1、一番有効な治療は、保険がきく治療の中にあります

我が国の国民皆保険制度は、知れば知るほど有難い制度です。近年は、外国で有効とされた治療でも、ほとんど遅滞なく、次々保険がきく(保険収載されると表現します)ように運用されており、負担すべき医療費は、これ以上、文句を言えないほど低く抑えられています。各種のがん治療のうち、最も有効とされている治療は、必ずこの保険がきく治療の中にあります。自費で支払わなければならないような医療行為に、がんに最も有効な治療があることはありません。

 2、一番最新の治療が、一番効くのではありません

固形がん(血液のガン以外のガン)の治療の原型は、胃がんも乳がんも肺がんも、19世紀の終わりから20世紀の初めにできたものです。それは、がん病巣の完全摘除を基本とする手術治療であり、100年以上経っても、これを超える治療はありません。どんなに良い薬や治療法が開発されても、肺がんには、外科治療を超える最新治療はないのです。よく効く薬ができたと言っても、よく治るとまで言える薬は(少なくとも肺がんでは)今もないのです。どんな最新治療も、病巣を取り出すという単純明快で古典的な手法を超えていないのです。

 3、一番高い治療が、一番効くのではありません

よく効く薬は次々開発されています。しかし、手術を超える治療効果が出たものはありません。手術が一番費用がかかると思っているなら大間違いです。1日で終わる手術は高くても数十万円(手術代金)ですが、薬の場合、一回の薬代だけで数百万円かかるものまであり、しかも薬の治療は、普通は一回で終わらず、何度も繰り返し治療します。なぜ、薬のほうが高いのか?薬の値段は、開発費から逆算されて決まっているからです。効果があるから高いのでも、有意義だから高いのでもないのです。しかも、がんの治療薬は、どんなに効いても、がんを治すことまでは期待されていません。あとから発売される新薬の方が、より効くとも限りません。それまでの薬と同じ効果だが、副作用が少し減ったか違うかするだけで、有効と判定され、保険適応されるのです。今一番肺がんの治療に有効とされている薬は、白金(プラチナ)製剤と言うものですが、これは170年以上も前、あのレントゲンが生まれた年に合成され、40年前から抗がん剤として使われるようになったものです。この白金(プラチナ)製剤を超える薬は、まだないのです。ちなみに手術料は、手術にかかる時間(難易度に相当する)や人件費・光熱費などの実コストから計算されていることになっています。医療において、高いものがよいと思うのは、大間違いです。

 4、あなたが他人に勧める治療を、あなたが受けるべきです

いま選択しようとしている治療を、人にも勧めますか?子供や親にも、そうするように提案しますか?怖いから、不安だからという理由で、本当は良いかもしれないと思っている選択肢を放棄していないでしょうか。同じ理由で、家族や知人が治療を選択しようとしていたら止めませんか?病気は無情です。感情的に対応しても、勝ち目はありません。冷静に、論理的に、客観的に、良いとされている選択をすべきです。

 5、誰の話を信用するかは、あなたの印象で決めるほかありません

医者の説明が信用できませんか?数人の情報を知っているに過ぎない友人・知人の話のほうが、もっともらしく、信用できそうですか?どの人が、この治療について最もよく知っているのか、もう一度思い出してください。その選択肢を選ぶと、誰がどう得をするというのですか?多分、担当医は仕事が増えるだけで、給料は変わりません。病院よりもっと良い治療がある?信用できますか?タダ話も信用できませんが、高額な金額を要求する話はもっと信用できません。信用できる人はだれか、得する人は誰か、もっと冷静に考えてください。長い年月と、多くの患者の治療結果から、淘汰され生き残った治療法と、わずかな人しか知らない・教えられない秘密の治療法と、どちらが信頼できるのか、冷静なら迷う余地もないはずです。お金を失うだけならまだしも、財産も命も失っては、惨めすぎます。

 6、病気は、あなたを特別扱いしません

あなた自身は、社会的にも経済的にも成果を上げられ、立派な人生を送られてきたに違いありません。そんなあなたに相応しい【特別な】治療を探し求めていませんか?どんなに立派なあなたも、どんなにまじめに生きてきたあなたも、病気には関係ありません。病気から見ればただの物体です。ほかの誰とも、何も違いません。あなたが特別だからこの病気にかかったのではありません。ただの順番です。あなたの前も、あなたの後も、どこかの誰かが病気になっています。みんな同じです。あなたに、特別な治療などありません。多くの人に試され、より多くの人に効いたはずの治療を、選ばなくてはいけません。「自分は違う」と見栄や特別感をもって医療を受けるのは、医者から見ればもっとも恥ずべき姿勢です。金をかけたり、場所や名前で医療機関を選んだりしても、決して良い治療が受けられるわけではありません。医者なら皆知っています。

 7、必勝の方法はありません、何人も病気には抗えないのです

病気には誰もあらがえません。病気を止める必勝法があれば、この世は人で溢れます。できることは限られていて、それが医療の限界です。もっと良い医者はいないか、もっといい病院は無いか、もっといい薬はないか、誰も知らないもっといいものを探していませんか?より良い治療を求めることは研究者に任せて、今、提示されている一番良い治療から『選ぶ』ほかないのです。夢のようなことを願うことは自由ですが、高望みは禁物です。中国の皇帝も見つけられなかったようなものを、今あなたが『探す』暇はありません。必勝を目指す姿勢は大事ですが、勝ったり負けたりが世の常。負け越さなければ良いのだという気持ちに切り替え、今置かれている現実を見つめ直しましょう。進行する病気がある以上、これから状況は刻々変化します。その時々で、現状ベストを選択し続けることしかないのです。

 8、報道される研究成果は、将来の、子供たちのためのものです

新聞やテレビでは、毎日のように、がん治療や診断に関する新しい研究成果が、報道されています。残念ですが、ほとんどの研究成果は、研究成果のまま終わります。これまでに、どれほどの大発見の発表があったことでしょう。全部その通りだったら、今頃はもう、病気に悩まされなくてよい時代になっていても、おかしくないはず。凄い内容(ネタ)だから、大々的に取り上げられているのではないのです。研究者は、自分の成果をより大きく見せようとしがちですし、記者は、定期的に大小の医療ネタを取り上げ、紙面や時間を埋めがちです。もし、商品になりそうな、お金になりそうな、本当に凄い研究成果をみつけたら、研究段階のものを、わざわざ大々的に、新聞やテレビに公表しますか?実現しそうな研究成果は、もちろんあるにしても、その成果が実際に使えるものになるまでに、更に何年もの開発・試験期間が必要で、保険承認が得られるまでには、さらにまた時間がかかります。「実用化まで…」と呑気な表現使っていませんか。今、治療を必要としている人には、間に合わないのです。あなたは、今ある武器で戦うしかないのです。

 9、楽に死ねる病気かどうか、考えてみてください

これまでの人生は、楽なものでしたか?多分、多くの山や谷を越えて、ここまで来たに違いありません。くじけそうになったけれども、それを超えて今があるのではないですか?なぜ病気の時だけ、このあとも楽ができると思うのでしょう。今は楽だから?病気の末路まで楽できるなんて、あまりに暢気すぎます。医師は、いま勧めている治療の成果や苦痛も知っていますが、治療しない場合の厳しい結果もよく知っています。がんで死ぬことは、死ぬまでの過程がとても辛いです。しかも簡単には死ねません。衰弱して、衰弱して、衰弱して、もう耐えがたくなって死ぬのです。そんな過程を、沢山見てきたから、医者は見ず知らずのあなたにも治療を勧めているのです。できれば、死ぬのが辛くない病気で死ねるように、です。病気になった以上、もう楽という選択肢はないんです。

 10、いつ死んでもいいと思う人は、病院には行きません

人生も折り返しを過ぎていれば、すでに見送った知人や友人もたくさんいることでしょう。常日頃から死ぬことについて考え、すでに何某かの思いがあるに違いありません。「いつ死んでもいい。」「死ぬ覚悟はできているから。」よく聞くフレーズです。だから治療しない?検査だけは受けます??いつ死んでもよいように、と言う覚悟は大切ですが、本当に死にたいと思っているわけではないでしょう。死にたい人が、病院に通ったり、検査を受けたり、毎日薬を飲んだりしますか?早く死にたいということではないはずです。本当に死ぬ覚悟があるなら、どんな治療にも耐えられるはずではありませんか?もう病気はできているのです。とりあえずでも、医者が勧める治療を受けてみてはどうですか。