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呼吸器外科(自然気胸)

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呼吸器外科

診療方針~自然気胸

以下に自然気胸について、当科の方針や治療の特徴などお示しします。

気胸の要因によって治療方針が変わり呼吸器内科と治療を分担します

自然気胸はブラ・ブレブの破綻によって起こる原発性自然気胸と他の肺疾患が進行した末路として肺が破れて起こる続発性自然気胸に分けられ、夫々で治療方針や経過などが大きく異なります。治療方法には経過を見る場合、直ちに排気の治療を行う場合、手術を前提に治療を開始する場合があり、当院では治療手段の違いによって、当科と呼吸器内科で診療を分担担当します。

【原発性自然気胸の場合

気胸の状態によって治療方針が決まります。当院では、若年者の自然気胸は原則、当科が初診担当いたします。外来日以外では当科宛てに直接お電話ください。時間外や担当医不在時は、内科あるいは呼吸器内科が診療を担当し、外科的治療が必要な場合は随時当科が引き継ぎ、診療を担当いたします。

【続発性自然気胸の場合

高齢者の続発性自然気胸は、原則的には非手術療法(保存的治療)をお勧めしています。その場合、基礎となる肺の疾患の治療もありますので、呼吸不全を伴う気胸の場合は、呼吸器内科での保存的治療が望ましいですが、保存的治療で改善が得られない場合は、手術になる場合があります。

自然気胸の治療基本的方針

気胸の治療には、外来で経過を見るだけでよいものから、排気治療(ドレナージ)が必要なもの、緊急に手術が必要なものまで多様です。特に大量の出血を伴っている場合は緊急の手術が行われます。進行する呼吸困難がある場合はドレナージを急ぐ必要があります。下のような場合は手術が選択されます。

  • 大量の出血を伴っている場合は、急いで手術しなければ、急速に危険な状態になります。
  • 排気治療(ドレナージ)では対応できない程、ひどい空気漏れがある場合は、手術が行われます。
  • 空気漏れが重症でなくとも、空気漏れが止まらない場合は手術になります。
  • 両側の同時気胸は、排気治療(ドレナージ)が一旦行われますが、気胸が改善しても、手術を勧める場合が多いです。
  • 再発を繰り返す場合は、気胸が改善しても、手術を勧める場合が多いです。

気胸の手術では、一旦空気漏れが止まり、気胸が改善した後に、長期休暇など時期を見計らって手術をするなどの方法も可能です。

当科では、一度も気胸を起こしたことのない肺に対する手術は、原則として勧めていません。
ダイビングなどの免許取得のためや、職業上減圧高圧環境に身を置く必要があって、気胸予防手術を希望する場合は、その旨担当医にお伝えください。

外科治療について

【原発性自然気胸の場合】

胸腔鏡による手術が実施可能です。
気胸の原因となっている気腫性肺嚢胞(ブラやブレブと呼ばれています)を、健常な肺の場所で切り取る『ブラ切除』と、ブラが発生しやすい肺の頭側部分(肺尖、はいせん)に広く癒着を起こさせる治療を施して標準の手術術式としています。

<術後入院期間の見込み>

原発性自然気胸の胸腔鏡手術の手術時間は、概ね1(~2)時間で、麻酔時間も含め3時間程度、術後入院期間は、概ね2-3日です。

【続発性自然気胸の場合】

続発性自然気胸では気胸の原因となっている肺の基礎疾患や胸腔内の状況により、術式も様々で、手術にかかる時間も、1時間程度で終わる場合から数時間かかる場合まで様々です。手術に時間がかかることもありますが、ほとんどの場合、胸腔鏡手術で実施可能です。

続発性自然気胸では、もともと肺の基礎疾患が進行していて、酸素療法が必要な場合も少なくなく、術後死亡率の高い疾患もあります。安易な手術選択は禁物です。呼吸不全があるような場合は、呼吸器内科と連携して、下にお示ししているような、手術以外の治療方法も無いか治療方針を決定します。

<術後入院期間の見込み>

続発性自然気胸では気胸の原因となっている肺の基礎疾患の状態により、術式だけでなく、術後の入院期間も2-3日程度の場合から数日から2~3週間もかかる場合まで様々です。

【麻酔が困難な場合もあります】

胸腔鏡手術を行うには、分離肺換気麻酔法(手術をしない側の肺だけで、麻酔管理する方法)ができなければいけません。呼吸状態が悪い続発性自然気胸では、この麻酔さえ困難な場合があり、麻酔ができないと手術もできません。分離肺換気麻酔が困難なケースでは、人工肺を使って手術をする方法もありますが、心臓外科医や心臓麻酔を熟知した麻酔医など、大がかりな手術になります。幸い当院には、熟練の麻酔科医や必要なスタッフが多数常勤しております。一度ご相談ください。

外科治療以外の治療(保存的治療と言います)

排気治療は気胸を改善させる治療ですが、原因となっている空気漏れを直接止める治療ではありません。
間接的に空気漏れを抑えようとする治療で、以下のような治療があり、当科でも実施しています。

【(化学的)癒着療法

気胸を起こした胸の中(胸腔)に物理的に障害(炎症)を惹起させ、組織の修復素材である線維素や組織液を大量に胸の中に浸出させることで、気胸の原因となっている肺の穴の修復を促進します。同時にあばらと肺のそれぞれの胸膜の間に癒着を引き起こさせ、例え将来、肺に穴が開いても、肺が虚脱(小さくなること)しないように予防する治療です。

化学的に癒着を起こさせる物質(薬品)は、何種類かありますが、実はこれらの薬品は、我が国で気胸治療用として保険で認められた物がなく、化学的癒着療法は国内ではあまり積極的に行われておりません。

【気管支塞栓療法】

穴の開いた肺に通ずる空気の通り道(関与気管支)を、特殊な栓で詰めてしまう治療です。気管支鏡という内視鏡で、のどに麻酔をかけて栓(詰め物)を必要な気管支まで運びます。栓で詰った気管支に通じる肺は、空気が出入りしなくなるので、空気の漏れも止まります。漏れが止まっている間に穴がふさがるのを待ちます。栓は後日、気管支鏡を使って取り外すことができます。

この治療は最近保険が使えるようになり、当院でも治療を開始しました。確実性がやや劣ることもあり、手術ができないような場合の治療法に位置づけられます。

気胸治療は気胸を専門とする医療機関で

気胸の診断は、レントゲン検査さえあれば決して難しいものではなく、とりあえずの初期治療(排気治療)も、多くの医療機関で一般内科や救急部で救急処置として行われています。しかし、初期診断や治療の容易さに反して、病態や、根本的な治療についてはまだ不明な点も多く、解明が進んでいない疾患です。

残念なことに、初期段階の診断や治療が一見容易なため、不適切な外科治療や通説が、医師の間にも、あたかも真実のようにまかり通っている領域でもあり、目立ちにくいですが、知識や技術の差で、治療の巧拙がはっきり出る領域です。

私どもは胸腔鏡手術が日本に導入されたころから、自然気胸に対する再発の少ない胸腔鏡手術の術式を提案し、今日では、私どもが行っているこの術式は、多少のバリエーションの違いはあるものの、類似の方法も含めれば、多くの気胸専門施設が標準手術として施行しています。2013年には気胸の空気漏れをCTで検出するという新しい検査法を世界に先駆けて開発・発表して参りました。多くの気胸を治療して多くの経験をしてきましたが、今でも気胸を上手く治療することは難しいと感じます。

全国でも自然気胸の専門家といえる医師はわずかで、自然気胸に限定した専門医制度はありませんが、初期治療はともかく、少なくとも初期治療に続く根本的な治療の段階では、気胸治療の最新の技術と知識をもつ医療機関での治療をお勧めします。

当科が開発した気胸の空気漏れをCTで検出する検査法

2013年に米国胸部医師学会雑誌CHESTに発表したCT検査で気胸の空気漏れを描出する検査法をご紹介します。

気胸はレントゲン1枚あれば分かる病気ですが、何処が破れているか調べるのは大変です。肺からの空気漏れをレントゲン検査で描出する方法は、長い間、1960年代に開発された胸腔造影法しかありませんでした。気胸を起こしている被験者(患者)にレントゲン透視台に寝てもらい、胸の中(胸腔)にX線造影剤を注入してレントゲン透視・撮影する方法です。発声などすると造影剤中に気泡が現れ、これを撮影します。なかなか手間のかかり、体力のない患者には実施がためらわれるような検査で、ブラ自体の所在はCTで分かるようになった今日、特別な目的がないと実施されない検査法になっていました。積極的に実施している施設もあります。

私どもは、いくつかの条件はあるものの、CT検査で、気胸で肺から漏れた気泡を描出することに成功し、複数のブラの中でどのブラが破れているかを推定することにも成功しています。最近はシネ3D-CTで、空気が肺から漏れる様子を動画撮影することにも成功しています。

(Nakanishi et al., A New Method to Detect Air Leakage in a Patient With Pneumothorax Using Saline Solution and Multidetector-Row Spiral CT Scan. Chest 2013;144(3):940-946.)

この検査方法は先の胸腔造影に比べると、検査方法が平易で、数秒/回と短時間で撮影できること、画像を3D再構築できるので、任意の方向から画像を観察できること、肺内の病変と一緒にCT画像に描出でき、病変との関連性が明確であること、アレルギーの心配のあるX線造影剤の代わりに、生体にとって最も刺激性が少ない生理食塩水で撮影できることなど、が利点です。これまで空気漏れしている病変の場所を確定する方法は、手術しかないという実情でしたが、この検査法の精度が上がれば、手術なしに空気漏れの場所を特定できるようになり、手術せずに空気漏れを止める治療も可能になるかも知れません。