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呼吸器外科(呼吸器外科診療Q&A(手術と言う選択肢篇))

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呼吸器外科

呼吸器外科診療Q&A~手術と言う選択肢篇

手術をすべきかどうかの質問

毎日の診療のなかで、最も多いご相談が『薬で治らないか』『薬で様子を見ることはできないか』など、手術をせずに病気を治せないかとのご希望です。ここでは呼吸器外科の診療中によく受ける、手術を受けた方が良いかどうかに関する問答を掲載しました。主として肺がんの治療を想定していますが、多くの回答は、それ以外の疾患にも適用できる内容と思います。

呼吸器外科に限って言えば、手術を検討あるいは考慮しているということは、既に、何かしらの疾患か、正常では見られない検査上の所見を抱えている状態のはずです。以下の問答はそのような想定の下に記述されています。

Q)薬で治りませんか?

A)呼吸器外科では薬で治る病気に対し、手術をお勧めすることはありません。

病気の治療は、手術や薬以外にもたくさんあります。その中から、もっとも治療効果が高い治療法を選ぶことが、合理的であり、正しいはずです。特に命がかかる病気ならば、多少の負担はあっても、最も生存の可能性が高い治療を行うべきでしょう。もし、手術でも薬でも、治療の効果に大きな差がなければ、副作用や合併症、体力的な負担や治療費などを考慮して、治療を選ぶことが、合理的となりますが、手術と薬の治療がほぼ同じ効果を出せるなら、薬の治療が選択されることが原則です。このような視点から、これまでの研究で、多くの呼吸器疾患では、どの病気は薬で治り、どの病気には薬が効かないか、ほぼ判明しており、薬で治る病気は内科で治療し、手術に回ることはありません。呼吸器領域で、手術をお勧めしている場合は、手術が他の治療に比べて圧倒的に優位にあるためです。

Q)今は忙しくて休めません、手術を先延ばししてもいいですか?

A)病気も休んでくれません。

この言葉もよくお聞きします。手術にはリスク(危険)はつきものですし、術後には痛みがあります。一定期間、仕事を休まなければいけませんし、医療費も必要になります。そもそも経験したこともない入院や手術と言うこと自体に、漠然とした不安を覚え、手術を躊躇させていることも、十分理解しています。それでも手術が勧められているのは、それらの不都合を補っても、手術することに十分価値があると思われる場合だけです。私どもの経験上、肺の手術直後に、無理な就労を要求してくる職場は、ほとんどありません。もしあなたが、職場に必要な方と思われているなら、余計です。『私がいないと…』と思っているのは、意外とあなただけかもしれません。

Q)手術のリスク(危険性)が怖いです

A)肺がんで手術が実施されない場合のリスクが示すものは、100%の死です。肺がん手術が実施された場合のリスクは、死亡の確率1%程度、再発の確率40%程度です。恐れるべきものは何か、冷静に考えてみてください。

当たらないかもしれない合併症のリスクと、必ずこうなるという現実の死との比較の問題です。手術の危険性(リスク)は、統計的数値から算出された『確率』で、よく表されます。示されているのは、確率であり、どんなに数字が大きくても、小さくても、100%と0%以外は、実際にその危険に当たるかどうかは、誰にも分かりません。わからないことが、逆に怖さを増幅させている一面は否定できませんが、一方で、肺がんの治療を放棄すれば、リスクは100%、つまり確実な死を意味します。確率で推測するとかのレベルではありません。死んだら終わりです。手術のリスクを無視することはできませんが、本当に怖いものは何か、もう一度よく考えて治療法を選んでください。

Q)抗がん剤治療と手術と、どちらがよいですか?

A)手術ができる状態の(手遅れになっていない)肺がんでは、比較するまでもなく手術です。

肺がん治療では、抗がん剤治療と手術は治療の対象となる患者を奪い合うようなものではなく、比較する対象ではありません。治るためには手術以外ありません。最初に手術ではなく、抗がん剤治療を勧められたら、治る見込みは極めて厳しい状況です。

少なくとも今日、肺がんの研究で、抗がん剤治療と外科治療を比較して、どちらが良いという試験など成り立ちません。なぜなら、そもそも抗がん剤だけで治る肺がんは、ないと言っても過言ではないからです。もし、手術の対象となる状態(医学的に『手術の適応がある』と言います)の肺がんで、がんが治ると言うふれこみの抗がん剤の宣伝があるとしたら、詐欺と言ってもいいくらいです。手術が受けられるような状態にあるのに、抗がん剤を選ぶとなると、これはもう、死を覚悟する選択をしたことに他なりません。

Q)放射線治療と手術と、どちらがよいですか?

A)手術ができる状態の(手遅れになっていない)肺がんでは、比較するまでもなく手術です。

放射線治療も、近年大変な進歩を遂げています。ただし、肺がんの治療においては、手術を大きく上回る効果は上げられていないと言えます。重粒子線治療など先進医療も魅力的ではありますが、手術が行える肺がんの方に、第一に行うような治療ではありません。やはり手術の治療効果が、一番高いのです。いきなり手術ができない肺がんの治療では、放射線治療が先に行われたのち、手術を行うような手法もありますが、放射線治療が手術に代わる治療にはなっていません。

Q)免疫治療と手術と、どちらがよいですか?

A)手術ができる状態の(手遅れになっていない)肺がんでは、比較するまでもなく手術です。

まず、免疫療法と謳って治療しているもののうち、保険診療が効かない治療については、肺がんに有効なものはないと考えてください。現在、肺がんの治療で使われている免疫療法は、厳格には免疫チェックポイント阻害剤と言われるもので、一部の肺がんの人に、良く効くことが分かっていますが、効果は永遠ではなく、ガンを完全に駆逐するほどの効果ではありません。自分の免疫担当細胞を取り出して増やすと言った治療法は、何十年も研究されてきましたが、今のところ成功したものはありません。耳触りの良い治療を喧伝しているサイトを見かけますが、十分ご注意ください。

Q)手術より効果がある治療は、本当にないのですか?

A)手術ができる状態の(手遅れになっていない)肺がんでは、ありません。

ガンが縮小したとか、何もしないよりは、しばらく長生きできるかもという治療はあります。ただ、手術のように「完全に治った」と言える効果を示すことができる治療はありません。手術以外の治療だけで治ったと思われる人も、治ったように見えても、結局ダメということが多いのです。手術で治る人は、毎年何万人もいます。手術しなければ遅かれ早かれガンで死ぬ、これはほぼ間違いありません。

手術を忌避して、他の治療をうけ、いよいよ困って手術の依頼がある、そんなケースを(今も昔も)何度となく見てきました。治る可能性があるうちに治る治療を受ける、これが生きるためのベストな方策です。

Q)ガンかどうかわからないと、手術に踏み切れない

A)ガンでないかも知れない、手術したら死ぬかもしれない、何もかも推測です。このまま放っておいても、ガンでなければ万歳です。でもガンだったら、死です。治るタイミングはどんどん失われていきます。

肺がんでは、多くの人が、がんかどうかわからない段階で手術をしている状況です。手を尽くしてもガンと確定できないなら、ガンである可能性と、治療が遅れて、手遅れになることの危険性を秤にかけてみてください。

Q)様子を見るのは、ダメですか?

A)状況にもよりますが、医師が(様子を見るように)勧めていない時は、様子を見て状況が良くなることは殆どありません。

ガンが確定しない場合で、どちらかと言えば、ガンとはやや違う、ガンとしては非典型的と言うような場合では、少し様子を見ることも良いと思います。ガンの証拠がない(がん細胞が検出できない)場合、医師は確定的な表現は避けがちですが、ガンとして典型的かどうかくらいは、教えてくれるはずです。医師が盛んに再考を勧めるようなら、状況は切迫していることが多いです。ガンの可能性があるようであれば、しばらく様子を見て、今より状況が良くなっていることは、ほとんどないです。体力も落ちているかもしれませんし、病気も進行しているかもしれません。

どうしても様子を見るという場合は、「いつまで」、「どうなるまで」、様子を見るか、事前によく決めてからにしましょう。漠然と様子を見るのは、よい方法ではありません。いつまで様子を見てよいかなど、医師に尋ねても無駄です。誰にもわかりません。ガンが疑われる病変であれば、2~3年くらい様子を見て何の変化がなくても、安心できません。逆に、数か月後には転移が見つかることだってあります。そこに病巣が見える限り、完全に病巣が消えるまで、ダラダラと検査を受け続けることになりかねません。

Q)症状がないので、手術をしたくありません

A)肺がんに限れば、ほとんど症状のないときにしか、手術で治りません。

よく聞く言葉です。症状がないからと言う理由も、治療を回避する理由にはなりません。症状がない時期に手術をしなければ、治る可能性はほとんどなくなります。

Q)もう高齢だから、手術ではなく薬(抗がん剤)の治療にしたい

A)高齢と言うだけで、抗がん剤が使えないことはあっても、手術は高齢でも元気な方ならできる時代です。

副作用が強い抗がん剤治療だからこそ、薬の承認には厳しい検査(治験)が行われ、有効性や副作用の頻度などが調べられています。多くの抗がん剤は、80歳以上の方の有効性についてほとんど調べられていません。治験段階で、80歳のような高齢者は試験の対象から外されていることが多いのです。実際に、80歳以上の方には、抗がん剤治療はかなりの負担になることがあります。そもそも抗がん剤では治らない肺がんだから、わざわざ高齢者で試験することもないのかもしれません。

一方で、肺がん手術の対象者は高齢化する一方です。高齢者に対する外科治療と術前術後管理、そして麻酔の管理技術は、高齢化に合わせて、大変進歩しました。たとえ、80歳を越えていても、まだ自立して生活できるほどの心身の状態が維持できているならば、手術を検討・実施できることがほとんどです。80歳を越えたら手術をしないという呼吸器外科医は、日本ではほとんどいないと思います。有難いことに、多くの方は大きな合併症なく退院されます。

Q)ガンは、手術すると進行するのですか?

A)手術の有無にかかわらず進行します。根拠のない言いがかりです。

進行の遅い肺ガンはあります。進行のスピードは人(ガン)により様々です。手術で取り出せたように見えても、既にかなりの割合でガンは他の臓器に転移して潜伏しており、このような人が、術後に再発・転移をしてしまうのだと考えられています。術後直ぐ再発したからと言って、手術がそれを速めたわけではありません。

Q)手術をすると、免疫力が落ちてガンが進行するのでは?

A)既に手術せずともガンがあるなら、その免疫力に期待するのはおかしな話です。根拠のない言いがかりです。

手術を受けると免疫力が落ちるという意見については、ある程度というレベルなら間違いではないと思います。免疫力が、ある程度の発癌を押さえているという説も正しいかもしれません。ただ、今ある免疫力では打ち勝てなかった、抑えきれなかったからこそ、手術が必要なほどの量のガンができているのではないですか。もしこの質問のような説を信じているなら、余計早くガンを体外に出してしまった方が良いのではないですか。ガンの量が減れば、免疫の力も効いてくるかもしれません。

Q)手術はできないと言われました、もうダメですか?

A)出来ない理由によっては、手術ができる場合はあります。

肺がんの手術をするためには、2つの要件が満たされていなければなりません。がんの進行度と、手術可能な心身の状態です。がんの進行度については、国際的に概ね合意されている基準があり、ほとんどの施設はこの基準に沿って手術をしていると思います。後者の心身状態については、病院によって、あるいは担当医によって、基準が違います。手術できない理由が、後者であれば、違う病院を探す価値はまだ残っています。どのような理由で手術が適さないのか、確認してください。

Q)進行していて手術してもムダと言われました、無駄とはどういう意味ですか?

A)手術をすると、しないより不利益が多くなるという意味です。

病気は無情で、進行してしまうと、手術しても直ぐ再発してしまったり、その後の生活に必要な臓器まで取らなければならなくなったりします。たくさん臓器を取っても、治るのなら、手術も無駄にならないのですが、そうまでしても、直ぐ再発することになりがちで、その後の治療の選択の幅まで、狭くなってしまうことになりかねません。手術で被る身体的・経済的損失が、その後の利益に繋がらないことから、手術に費やす身体的・経済的損失が無駄になると表現されたものと思います。

Q)このまま死ぬ覚悟はできてきますので、手術は受けたくありません

A)死んだら楽かもしれませんが、肺がんで死ぬまでの間は、とても辛い思いをします。死ぬ覚悟があるなら、どんな治療も受けられるのではないでしょうか。

ガンになっても、楽に死ねると言う者もいますが、肺がんでは多くのケースで幻想に近いです。人はみな、最後は死んでしまいますが、できればもう少し生きたいと、どこかで願っているはずです。死ぬ気で手術を受けてみてはどうでしょうか。それでダメなら、覚悟を決めるでもよいと思いますが。

Q)薬(抗がん剤)の治療の方が、安全ではないですか?

A)薬の治療が安全というのは誤解です。

多くの方にとって、薬による治療といえば、生じた苦痛を和らげるために、ちょっと、とりあえず、飲む。症状が治まったら終わり。そんなイメージでしょう。確かに、一般に販売されている薬は、何万人、あるいは何億人と言う人が服用して、大きな問題が発生しないように、たいへん安全に作られています。でも、もし、このような感覚で、抗がん剤の治療を見ているのであれば、少し考えを改めておいた方がいいかもしれません。

抗がん剤は、強い副作用で有名です。副作用対策も進歩して、以前に比べ、楽になってはいますが、並大抵では治らない癌と言う致死の病気に対しては、時に命がけで薬を使う必要があります。薬の治療で、死ぬこともあるということです。

抗がん剤での肺がん治療後、30日以内に亡くなる人の割合は凡そ1%程度と言われています。対して、肺がんの手術後に30日以内でなくなる人の割合は、0.5%前後です。簡単に2つの数字を比較できませんが、抗がん剤治療はイメージと違って、決して安全な治療ではありません。今は、抗がん剤治療より手術の方が、治療に関わる死亡の危険性が低いことを、ご理解いただけるとありがたいです。

Q)手術はキツイけど、薬はラクでしょう?

A)これも誤解です。

もちろん、手術はそれなりにキツイです。しかし、それとは別に、抗がん剤治療がラクなわけではありません。

抗がん剤治療については、様々な種類の薬と投与方法があって、一律には言えませんが、肺がんの治療では通常3-4回、多いものでは、数回繰り返して行うことが普通です。(外科医の意見かもしれませんが)手術は、その直後はそれなりにキツイかも知れませんが、徐々に改善するのが自覚でき、前向きな気持ちや見通しを保ちやすい一方、抗がん剤治療は少し回復したころに、次の治療が待ち構えているため、精神的に、強い気持ちが、長期間維持できないと辛いです。

抗がん剤治療では、程度の差はあれ、副作用(今は有害事象と表現します)は必発です。一番聞かれることが多い、髪の毛が抜けるなどという副作用は、同情すべき事象ですが、治療全体から見れば、がん治療のためには容認すべき副作用であると考えられています。もちろん脱毛が気になって、体調や時に精神的に不調となる方もありますが、脱毛よりも恐るべき副作用は他にたくさんあり、嘔吐や食欲不振などで目に見えて体力を消耗する副作用だけでなく、見えないところで体に障害が蓄積される副作用もあるため、繰り返す薬の治療に、結局耐えられなくなる方は少なくありません。

Q)ガンかどうかわからないなら、とりあえず(試しに)抗がん剤を使ってみたい

A)ガンかどうかはっきりしないと、抗がん剤は使えません。

抗がん剤はご承知のように、強い副作用(有害事象と言うことがあります)を起こすことがあり、ひどい場合は死亡に至ることもあります。肺がんの場合、抗がん剤による治療死は、全体で1%近いとされており、がんでもない方に、試しに抗がん剤を使ってみるといった使用方法は許されません。責任をもってがん治療にあたる医師であれば、がんと診断されていない方に、抗がん剤を使うことはないのです。