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呼吸器外科(呼吸器外科診療Q&A(いろいろな胸腔鏡手術篇))

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呼吸器外科

呼吸器外科診療Q&A~いろいろな胸腔鏡手術篇

ここでは呼吸器外科で行われる内視鏡手術(=胸腔鏡手術)に関して、よく尋ねられる質問とその回答を
記述しておきました。

Q)胸腔鏡手術というのは、病院によって違うのですか?

A)かなり違います。

そもそも何をもって胸腔鏡手術と言うか、まだ定義づけや規定がないため、本当に色々な胸腔鏡手術と称する手術があります。

中には、いかがわしい胸腔鏡手術があるのも事実です。最近は胸腔鏡手術の診療費が、開胸手術より高く設定されるようになったため、胸腔鏡は胸の中のほんの少し観察だけで、モニタはついているだけ、ほとんど開胸操作で行ったような手術まで、胸腔鏡手術としてカウントする病院もあると言われています。実態と統計が必ずしも一致していないように感じることがあります。

名実ともに胸腔鏡手術と言える手術の中にも、『流派』とも言える手法の違いはあります。手術というものは、例えば盲腸(虫垂炎)の手術ではココ、肺がんならこのあたり、と大概決まったキズで行うものでした。胸腔鏡手術では、この常識は通じなくなっています。病院によって、キズの大きさや数、位置などが大きく違います。どれかが優れたということではありません。

本質的な部分で、最も重要な違いは、目的である『組織切除』の内容が違わないのかの点です。学会などで発表されるものを見る限りは、この点についても千差万別と感じます。外科医が見ないとわからない手術の質的違いとも言え、この部分はなかなか表面からはわかりません。

Q)バッツとは胸腔鏡手術のことですか?

A)概ね同じと考えてよいでしょう。胸腔鏡手術の英訳の略語(頭字語)がVATSで、バッツと読み、厳格に訳すと、ビデオ補助下胸腔鏡手術です。

VATSが何の略かについては、実は様々な意見があります。例えば、ハーバード大学のホームページにはVideo-Assisted Thoracic Surgery、米国で最も有名な病院の一つメイヨークリニックのホームページにはVideo-Assisted Thoracoscopic Surgeryと記述されており、微妙に違います。前者はビデオを補助にした胸部の手術、後者はビデオを補助にした胸腔鏡の手術という意味の違いになります。医学雑誌でも、編集者や、レビュアー(審査委員)によって違うこともあるようです。VATSの直訳では、ビデオ補助下胸腔鏡手術としていることが多いようですが、国内では胸腔鏡補助下手術と呼ぶが多いです。

Q)『ビデオ補助』ですか『胸腔鏡補助』ですか?

A)英訳に忠実ならビデオ補助ですが、この訳語は我が国の呼吸器外科医はあまり使いません。同じ意味で『胸腔鏡補助』と言うことの方が多いと思います。

胸腔鏡手術には開発当初から様々な呼び名があり、未だに統一されていません。VATSが言う『ビデオ補助』という言葉が何を意図して付けられたか、正確な経緯はよくわかりません。もともと胸腔鏡自体は、肉眼で胸腔(胸の中)を観察する装置でしたので、ビデオ映像を見ながら手術するということを強調したのかもしれませんが、先に開発された腹腔鏡下胆嚢摘出手術をLASC(ラスク、laparoscopic cholecystectomy )とかLAP-C(ラップシー、laparoscopic cholecystectomy )とか読んだため、語呂を合わせた略語を作ったのかもしれません。我が国にはビデオ映像装置のつかない胸腔鏡自体があまりなかったことから、『ビデオ補助』と言う用語には若干違和感があり、国内では胸腔鏡を併用すれば、開胸は小さくても手術ができる点が強調され、『胸腔鏡補助』と呼ぶようになっていきました。米国ではやや否定的だった胸腔鏡手術を、我が国の呼吸器外科医が独自に発達させてきたこともあり、日本語を該当する英語に合わせた意訳というのが実情と言えます。小開胸を併用しない胸腔鏡だけで行う手術にはthoracoscopic surgery(胸腔鏡の手術)と呼んで区別することもあります。

Q)モニタの映像を見ない胸腔鏡手術があるのですか?

A)ありますが、それを胸腔鏡手術と呼ぶか議論はあります。

手術中に気腹という操作がいる腹部の内視鏡手術では、モニタ映像を見ながら行われることが普通です。(気腹と言うのは、炭酸ガスをおなかの中に送り込んで、おなかをガスで膨らませる操作を言います)気腹には、体の内腔を気密にする必要があるため、体外と体内の経路は遮断しなければならず、体の中を直接覗き込むことはできません。胸部の手術では、気腹が必要ないため、創部から直接胸腔内を観察することが比較的容易にでき、カメラのビデオ映像を見なくても手術が可能となります。胸腔鏡手術の開発当初は、必要な時だけカメラ(モニタ)映像を見て行うことも多かったため、胸腔鏡補助下手術と呼ばれるようになりました。現在でも、この呼び分けを厳格に行うことがあります。

胸腔鏡補助下手術は厳密には内視鏡手術ではないとの批判もあります。事実、内視鏡は暗い胸の中のランプ代わり使われるだけで、肝心の術者が、ビデオ映像を全く見ないまま手術が進められるのであれば、ただキズが小さくなっただけで、これまでの開胸手術と何の変りもないとの主張です。このような手術まで胸腔鏡手術と呼んでよいかどうか問題視する専門家は少なくありません。

Q)完全鏡視下胸腔鏡手術とは何ですか?

A)モニタに映るビデオ映像だけを見て手術を行う胸腔鏡手術を言います。

完全鏡視下胸腔鏡手術は、和製英語のようですがComplete VATSやpure VATSと呼ぶようになっています。完全鏡視下手術はモニタに映る2次元画像だけで手術を遂行し、臓器を取り出す時に必要な大きさだけキズを拡げる方法です。厳格な意味で、内視鏡手術と言える方法ですが、技術的には最も難しいと言えるでしょう。

Q)ハイブリッド手術とは何ですか?

A)クレジットカード大の開胸に加え、胸腔鏡を併用する手術を言います。

クレジットカード大のキズがあれば、胸の中のほとんどの場所を直接肉眼で覗き込めるだけでなく、手先で直接臓器に触れることも可能になります。開胸で使われる通常の手術器械も利用できます。最近は、このような手術を『ハイブリッド手術』と呼ぶようになっています。いわゆる胸腔鏡補助下手術で、開胸手術と完全鏡視下手術の中間的な手法として位置づけられます。

Q)キズの数は少ない方がいいのではないですか?

A)必ずしもキズの数と手術の良し悪しとは関係ないと思います。

少しでも痛みは少なくしたいとの思いで行われている手術ですが、無理をして減らしても、術後の経過はあまり大きな差になりません。数は少なくても、個々のキズの長さは長くなっているということもあります。キズの位置も手術の優劣に直接関係するものではありません。肺を切り取る手順によっては、キズの位置や数を変えた方が良い場合もあり、同じ病院であっても違うキズで行われることがあります。

Q)内視鏡を使わない手術と内視鏡手術の違いは何ですか?

A)技術的な難易度を除くと、突き詰めて言えば、臓器にどうやって到達するのかの手法の違いです。

手術の難易度や体に対する負担といったことを除くと、結局は外科治療としては同じ切除範囲を違う方法で取っているだけです。同じように切除できるかという議論はありましたが、胸腔鏡を多く手掛けている外科医の間では、ほぼ解決されていると言ってもいいでしょう。

Q)開胸手術とは何ですか?

A)旧来の胸を開いて行う手術です。

厳密な規定はありませんが、直接肉眼で臓器を見て、臓器に触れながら行う手術と考えてよいでしょう。

Q)胸腔鏡手術という術式はないといわれましたが?

A)その通りです。「胸腔鏡手術」だけでは何の手術のことか全く分かりません。

胸腔鏡手術という手術があるのではなく、胸の中の臓器を手術する手段として、胸腔鏡を利用する手術を総称した言葉です。具体的な手術の術式は、「胸腔鏡下肺葉切除」とか「胸腔鏡下ブラ切除」とかのように表現します。「胸腔鏡」はあくまでも手術を遂行するための手段の一つであり、目的としている手術の内容は「胸腔鏡手術」の用語の中には含まれません。

Q)胸腔鏡手術でも開胸になる、といわれました?

A)この説明には、いくつかの解釈が考えられます。

厳密に言えば、『開胸』と言う言葉は、胸の中の体腔(胸腔と言います)と外気が、針の孔ほどでも交通することを言い、通じる傷の大きさとは無関係です。

『開胸』しなければ、どのような肺の手術もできませんので、胸腔鏡手術でも、この厳格な意味では『開胸』していることになります。これが、第一の解釈です。この意味で『開胸』を捉えることとすると、胸腔鏡手術は『小さく開胸する』手術であり、対して開胸手術は『開胸』する手術と言う意味ではなく、『大きく開胸する』手術の意味とご理解ください。

胸腔鏡手術で、胸の中で組織や臓器を切り離すことができても、取り出すためにはそれなりの大きさが必要です。取り出す組織の大きさに合わせた少し大きな『開胸』創が作られることになります。これが第二の可能性です。ただし、この場合の少し大きいキズというのは、肺がんの手術で、大体5センチ程度です。

最後に、胸腔鏡手術で対応できない状況になった場合、途中で開胸手術に切り替える可能性があるとの意味でも使われた可能性はあるかもしれません。

他にも可能性はあるかも知れません。説明の中でわからなかったことや、改めて質問がある場合は、遠慮せず担当医にお尋ねになるようお勧めします。

Q)ロボットによる手術があるのですか?

A)ロボット手術と言われている手術はありますが、ロボットが手術をするのではありません。

ロボットアームのような装置を外科医が操作をして行う手術をロボット手術と称しています。プログラムされたロボットが、手術を行うわけではありませんので誤解のないようお願いします。ロボット工学を利用した手術器械があり、あたかもロボットが手術しているようだということでそのような名称になっています。操作しているのはあくまで外科医です。

Q)ロボット手術の利点は何ですか?

A)関節機能を持った手術器械が使え、縫合操作に向いていることだと思います。

通常の内視鏡手術で使われる道具類は、直線的なモノで横向きに曲げることが自由にできません。道具に関節装置を付け、これを手元で操作できるようにした大がかりな手術器械が開発され、遠隔操作で手術ができることを特徴として販売されていました。何時の頃からか、この装置を使った手術をロボット手術と呼ぶようになりました。自由度だけでなく、操作感や複眼視による立体感などもあり、特に細かい縫合などに向いています。手術器械から離れて操作できるため当初は遠隔医療で手術が受けられるとの宣伝が行われましたが、結局この装置が動かすアームに取り付ける手術器械は、別の外科医が体に入れる必要があり、手術中も手術器械をアームに付け替えたり、不測の事態に備えて傍に待機している(手術着を着て立って見守る)必要があり、操作している術者以外には全く退屈な手術です。大きな医療機関にしかありません。

Q)ロボットによる肺癌の手術はないのですか?

A)ありますが、普及していません。

ロボット手術のメリットが最大に生かせる点は、縫合(組織を縫う)操作です。肺癌の手術では、この縫合操作がほとんど不要になっており、メリットが生かせません。肺癌の手術では、手術器械の入れ替えも頻繁で、ロボット手術では却って煩雑になるなどのデメリットの方がむしろ多いです。ロボット手術に使われる医療器械が、極めて高額で、維持費もかかり、これまで保険が使えなかったこともあります。通常の胸腔鏡手術技術が、ロボット手術装置より先に広く普及発展したために、多くの専門医がこのような高額な装置を必要とせず、手術できるようになっていることもあると思われます。