診療科・部門紹介
救急科
概要
この地の人々の健康といのち、そして安心のこころ守る
埼玉県南西部(朝霞市、新座市、志木市、和光市)は人口約47万人が暮らす地域でありながら、三次救急医療機関が存在していませんでした。また、当院の南側には東京都の練馬区がありますが、この地域でも三次救急医療機関がありませんでした。このため、当院は2019年に救急科を新設し、救急医療の体制を強化しました。さらに、2021年には地域への責任を果たすべく救命救急センターを設立しました。救急科設立以降、救急車の受け入れ台数は以下の診療実績に示すように年間3,000件以上増加しております。また、入院患者に対しては必要に応じて集中治療室やハイケアユニットでの診療を行い、適切で高度な医療を提供しています。これからも当院の理念である「この地の人々の健康といのち、そして安心のこころ守る」を実践してまいります。
診療実績
救急搬送件数推移
令和4年度三次救急受け入れ件数・受け入れ率
令和5年度救急医療功労者等知事表彰
埼玉県と一般社団法人埼玉県医師会が共催で行う 「救急の日」記念行事において、埼玉県内で救急医療対策の推進等救急医療の確保に貢献した7医療 機関の一つとして当院が選ばれ、救急医療功労者等知事表彰を受けました。
施設認定
・救命救急センター(2021年5月~)
・救急専門医プログラム基幹施設
・地域災害拠点病院
・DMAT指定医療機関
・地域周産期母子医療センター
・集中治療専門認定施設申請中
ER部門
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受け入れは埼玉だけでなく東京からも
埼玉県内では和光市、朝霞市、新座市、志木市を中心に救急患者を受け入れています。2021年5月に当院は救命救急センターとして位置付けられ、2次救急だけでなく3次救急も受け入れるようになりました。当院は和光市に位置し、東京都内の練馬区や板橋区からも多くの患者を受け入れています。救急車からの搬送だけでなく、近隣の病院で患者の状態が急変し、積極的な蘇生行為が必要な場合には当院へ転院し、状態が安定するまで集中治療管理を行います。
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転院の受け入れ
病棟部門(ICU8床、HCU16床)
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心がけています、丁寧な診療を
プライマリケアや総合診療医から集中治療医まで、当科のスタッフの経歴は様々です。当科の特徴は、重症患者を救命したあとすぐに内科へ転科するのではなく、潜在する内科疾患の診断まで行うことです。週に一度、多職種が参加するカンファレンスを開催し、異なる視点から最適な治療を模索しています。また、RST(Respiratory Support Team)ラウンドに参加し、院内で人工呼吸器管理を受けている他科の患者の治療をサポートしています。さらに、RRT(Rapid Response Team)では中心的な役割を果たしています。
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ICUの風景
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カンファレンスの風景
スタッフ紹介
職名 | 氏名 | 学位 | 専門医・認定医等 | 専門分野 |
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統括診療部長 救命救急 センター長 部長 |
冨永 善照 | 日本救急医学会認定専門医 日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 臨床研修指導医 日本DMAT |
救急医学 循環器 内科 |
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救命救急 副センター長 医長 |
石井 充 | 日本救急医学会認定専門医 日本内科学会認定総合内科専門医 日本プライマリ・ケア学会認定医・指導医 臨床研修指導医 日本DMAT |
救急医学 内科 |
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医長 | 平山 一郎 | 医学 博士 |
日本救急医学会認定専門医 日本集中治療学会専門医 日本内科学会認定内科医 日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト 日本蘇生学会指導医 ICLSコースディレクター 臨床研修指導医 日本救急医学会関東地方会幹事 |
救急医学 集中治療 蘇生 |
医師 | 矢野 徹宏 | 医学 博士 |
日本救急医学会認定専門医 日本内科学会認定内科医 |
救急医学 総合診療科 |
医師 | 野中 美奈穂 | 日本救急医学会会員 | 救急医学 | |
医師 | 林 辰彦 | 日本救急医学会認定専門医 JPTECインストラクター |
救急医学 病院前救護 |
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医師 | 奈良場 啓 | 日本救急医学会認定専門医 日本内科学会認定内科医 臨床研修指導医 日本DMAT |
救急医学 集中治療 医療安全 |
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診療看護師 | 本間 由希 | |||
診療看護師 | 最首 明子 | |||
診療看護師 | 杉田 礼子 | |||
医師(非常勤) | 鈴木 昌 | |||
医師(非常勤) | 上篠 吉人 | 医学 博士 |
日本救急医学会専門医・指導医 日本精神神経学会専門医 日本総合病院精神神経学会専門医・指導医 精神保健指定医 日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト |
救急医療一般 中毒 精神疾患 |
医師(非常勤) | 武藤 智和 | 日本救急医学会認定専門医 日本集中治療学会専門医 日本小児科学会専門医 |
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医師(非常勤) | 大野 聡一郎 | 救急医療一般 整形外科 |
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医師(非常勤) | 藤本 泰樹 | |||
医師(非常勤) | 山屋 百合奈 |
慶應義塾大学総合診療科からの救急科研修の受け入れも実施しており、一緒に診療を行っています。また、当院ではPICC挿入が多いのが特徴で、その挿入件数は年々増えており、診療看護師が主に実施しています。診療看護師については別ページもご参照ください。
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PICC挿入件数推移
当院の研修プログラムについて
内科系救急が特徴
当院では3次救急だけでなく、2次救急にも対応しています。2次救急で搬送される患者の中には、時には3次救急に相当する患者も含まれており、重症度を適切に判断する能力を養うことができる環境です。また、高齢化する搬送患者に伴い、入院か帰宅かの判断が複雑化しています。積極的な入院により病態を早期に安定させ、帰宅させる場合は後日、必要に応じて救急外来を再受診していただくことで、帰宅患者のフォローアップを行っています。
当院の病棟では内科の経験を積んだスタッフが多く、内因性疾患の管理に重点を置いています。また、集中治療から転院調整まで幅広い経験を積むことができるのも当院の特徴です。さらに、他科の患者が急変した際には当科で相談を受け、併診あるいは転科での対応も行っています。
限られた時間を使って学ぶ(手技や検査を優先)
後期研修医に対して、内視鏡や心エコー、腹部エコーなどの手技や検査を学ぶ時間を重視しています。当科には教育熱心なスタッフが多く在籍しており、疑問が解消されるまで丁寧な指導を心掛けています。毎週金曜日には、達成したことや課題を指導医と話し合い、翌週の目標を設定しています。また、オンオフのバランスが取れており、十分な休暇を取ることができる環境も特長です。子育て世代には、男女を問わず時短勤務の選択肢を提供しています。
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後期研修医Aの成長記録
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後期研修医の一週間の勤務の流れ
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後期研修医への指導
定期的な勉強会
初期研修医向けの院内症例検討会では、救急科ローテーション中の症例や当直中に疑問に思った症例を中心に振り返りを行っています。積極的に学会での発表を行い、スライド作成から発表方法まで丁寧に指導しています。また、学会発表の前には他病院との合同予演会を実施し、発表の準備を進めています。
また、後期研修医が疑問に思った症例を中心に教育的な観点から振り返る症例検討会も行っています。抄読会では最新の文献や過去の有名な文献を基に、治療戦略を共に議論しています。さらに、他科への転院や連携施設での治療を受けた患者のその後の経過を共有するカンファレンスも開催しています。
看護師への教育
新人看護師を中心に、月に1回のペースでレクチャーを行っています。「救急外来での患者の診察方法」「血液ガスの解釈」「ショック対応の手順」「外傷診療の基本」「脊髄損傷の診断方法」「中毒患者への対応」など、看護師からの要望に応じて後期研修医を中心に知識共有を行っています。さらに、月に1回のペースで人形を使った初期対応のシミュレーションを実施しています。前月に搬送された重症患者を模した疑似患者を用い、研修医と若手看護師が初期対応を行います。その後、上級医と看護師がフィードバックを行い、日々の診療に生かせるようサポートしています。
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蘇生シミュレーション教育
バランスのよい研修のために
連携施設も充実しています。埼玉と東京にそれぞれ3つの救命救急センターと連携しています。自施設では学びにくい重症外傷や重症熱傷、プレホスピタルケアなどについて、他施設での学びの機会を提供しています。連携施設では母体・子供救命やハイブリッドERなどの実務経験を積むことができます。また、小児救急については国立病院機構の成育医療センターでの研修も可能です。
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連携施設一覧
日本大学病院、日本大学医学部附属板橋病院、独立行政法人国立病院機構災害医療センター、自治医科大学附属さいたま医療センター、埼玉医科大学総合医療センター、さいたま赤十字病院、公立阿伎留医療センター、東京都医療保険公社豊島病院、高島平中央総合病院、苑田第一病院、春日部市立医療センター、国立成育医療研究センター
経験できる症例
心肺停止蘇生後、敗血症性ショック、重症肺炎、COVID19肺炎、重症気管支喘息、COPD急性増悪、DKA、急性薬物中毒、アナフィラキシーショック、重症熱中症、偶発性低体温、多発外傷、脳出血、脳梗塞、急性心筋梗塞、心不全、大動脈解離、消化管出血、消化管穿孔など
研究活動
日本外傷データバンクの症例登録に参加しています。また、国際多施設共同前向き研究(The ICU LIBERATION Study)に参加しているだけでなく、高齢者敗血症患者を対象とした単施設後ろ向き研究や、PICC挿入に関する単施設後ろ向き研究なども実施しています。詳細については臨床研究のページをご参照ください。
実績
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学会発表(2022年度)
発表年月 | 発表者氏名 | 演題名 | 発表機関(学会名) |
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2023.2 | 山屋 百合奈、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | COVID19感染自宅療養中に糖尿病性ケトアシドーシスをきたした一例 | 第73回日本救急医学会関東地方会学術集会 |
2023.2 | 中村 早貴、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | ICU退室後に活気がないことから続発性副腎皮質機能低下症を診断した一例 | 第73回日本救急医学会関東地方会学術集会 |
2023.2 | 佐久間 一也、平山 一郎、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照、原 彰男 | III度熱中症患者の頭部MRI拡散強調画像で小脳半球に高信号を呈した1例 | 第60回埼玉県医学会総会 |
2023.3 | 小野 拓哉、津和野 伸一、石井 充、平山 一郎、冨永 善照 | 保存的に経過観察しえた外傷性Spigelianヘルニアの一例 | 第59回日本腹部救急医学会総会 |
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学会発表(2023年度)
発表年月 | 発表者氏名 | 演題名 | 発表機関(学会名) |
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2023.7 | 野中 美奈穂、平山 一郎、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | 糖尿病性ケトアシドーシスの治療経過中にブロナンセリン貼付薬による徐脈を呈した一例 | 第7回日本集中治療医学会関東甲信越支部学術集会 |
2023.7 | 冨永 善照、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充 | 救命救急センター立ち上げにおける診療看護師の役割 | 第26回日本臨床救急医学会総会・学術集会 |
2023.7 | 野中 美奈穂、平山 一郎、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | 下腹部から両膝に限局した網状皮疹を伴う胃拡張の1例 | 第26回日本臨床救急医学会総会・学術集会 |
2023.11 | 馬場 遼、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | 市販のマッサージ器により脊髄硬膜外血腫をきたした一例 | 第51回日本救急医学会総会・学術集会 |
2023.11 | 紫野 穂乃佳、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充、冨永 善照 | 有機リン中毒に対してアトロピン舌下投与が治療経過に有用だった一例 | 第51回日本救急医学会総会・学術集会 |
2023.11 | 冨永 善照、平山 一郎、野中 美奈穂、矢野 徹宏、石井 充 | ダイエット目的にオオバコを含む健康食品を摂取して腸閉塞となった一例 | 第51回日本救急医学会総会・学術集会 |
論文
発表年月 | 発表者氏名 | 論文題目 | 発表雑誌名 |
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2023.1 | Yoshiteru T, Ichiro H*, Tetsuhiro Y, Kazuto K, Mitsuru I. | Localized skin mottling associated with acute gastric dilatation. | Clin Case Rep. 2023 Jan 16;11(1):e6856. |
2023.4 | Yoshiteru T, Ichiro H*, Minaho N, Tetsuhiro Y, Kazuto K, Mitsuru I. | Coronavirus disease 2019 with Chilaiditi sign. | Clin Case Rep. 2023 Apr 22;11(4):e7243. |
2023.5 | Yoshiteru T, Ichiro H*, Minaho N, Tetsuhiro Y, Mitsuru I. | Intestinal obstruction caused by consuming diet food containing psyllium. | Acute Med Surg. 2023 May 10;10(1):e846. |
2023.8 | Yoshiteru T, Ichiro H*, Minaho N, Tetsuhiro Y, Mitsuru I. | Commercial massage tool-induced spinal epidural hematoma. | Acute Med Surg. 2023 Aug 30;10(1):e886. |
発表年月 | 発表者氏名 | 論文題目 | 発表雑誌名 |
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2023.12 | 山屋 百合奈、平山 一郎*、冨永 善照 | COVID19感染自宅療養中に糖尿病性ケトアシドーシスをきたした一例 | 日本救急医学会関東地方会雑誌. 2023年, 44巻, 4号, p375-378 |
後期研修医から一言
私は医師になるまでに時間がかかったので、年齢のことや子ども達のことを考えると、救急医になることは難しいかなと悩んだ時期もありました。しかし、育児をしながら救急科専門医を目指すという私の状況を理解してくれる教育熱心な指導医、上級医の先生方のおかげで大変恵まれた環境で専攻医生活を送ることができています。もう救急医になることを決めている方も、何らかの理由で心が揺れている人も、まずは埼玉病院救急科に見学にいらっしゃってください。
専攻医1年 野中美奈穂
後期研修医募集
当院は2021年5月から救命救急センターとして運営を開始しました。2022年度には新たなスタッフが加わり、2024年度にはさらにスタッフを増員する予定であり、後期研修医への教育体制も強化しています。当院で不足している研修内容については、連携施設を新たに設定し、救急医としての完成度を高めるプログラムを用意しています。ぜひ、一度見学にいらしていただければ幸いです。
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問い合わせ先
〒351-0102 埼玉県和光市諏訪2-1 独立行政法人国立病院機構埼玉病院
救急科部長 冨永善照
Tel: 048-462-1101 内線1556、
E-mail: tominaga.yoshiteru.sv@mail.hosp.go.jp