• 診療科・部門紹介

がん診療部

がん診療部のご紹介

がん診療部のページをご覧いただき有難うございます。

がん診療部のページでは、がん診療部のご紹介だけでなく、院内のがん診療体制のご紹介、がん検診のご案内、がん情報の提供、イベントなどの主催情報や告知など、今後も掲載して参りますので、ご活用ください。

単に必要事項の羅列とならないよう、各所にがん診療部の医師による解説を加えておりますが、解説の記述内容についての、個別のご質問ご意見にはお答えしておりませんので、ご了承ください。

がん診療部って?

がん診療部は、院内でがん診療にあたっている様々な職員・組織を統括する部署です。がん診療を担い、実践する組織集団ですが、国の施策(がん対策基本法)に基づき、当院が地元地域全体の、がん対策の中核病院として機能*するような業務も行っており、埼玉病院内の組織でありながら、埼玉病院のがん診療部門が、言わば「地域のがんセンター」となるべく、各種の活動をしています。
院内はもちろん、院外の医療機関だけでなく、地域の住民の方々や行政・教育機関とも、密接にかかわり、様々な形で連携しながら、地元地域から、少しでもがんを減らす活動を行い、がんになった人だけでなく、がん患者のご家族に対しても、病院としてできる範囲で、様々な支援を行い、ご相談に応じられる体制づくりに努めています。
※ 国の医療政策のために策定されている二次医療圏のうち、当院が所在する埼玉県南西部地区のがん診療連携拠点病院に指定されています。
  がん診療連携拠点病院については、別のページに解説しています。

内科や外科とは違うの?

がん診療部には、「診療」の文字がついていますが、実際にがんの診療を担っているのは、外科や内科、放射線科、腫瘍内科など、いわゆる「診療科*」と呼ばれる病院内の部署です。
がん診療部は、こうした、がん診療を直接実践している診療科**を統括するだけでなく、診療科以外の組織で、がん診療を支えている職員・組織***もまとめた組織の名称となります。
院内のがん診療を推進し、併せて地域のがん診療が、継ぎ目なく円滑に実施されるよう、働いている組織が「がん診療部」です。
*診療科は、外科・内科など厚生労働省の政令によって定められたものしか使えません(「標榜できない」と言います)。
 「がん診療部」は、組織名称であり、「がん診療部」自体は診療科ではありません。
**消化器外科・呼吸器外科・乳腺外科など、がん診療の業務が多い外科系の診療科が中心になります。
***がん登録室などがあります。

どんな仕事をしているの?

抽象的な表現で恐縮ですが、近年のがん診療は、「診療科単位」の「治療主体」の医療から、「患者主体」の「全人的」医療*の実現へ向け、変わりつつあります。がん診療部は、全人的ながん診療を実践する病院づくりを、院内で進める一方で、地元地域に、がんと共生する社会を実現することを大目標に、地域の方々や組織・団体へも様々な働きかけをしています。
下に具体的な活動例を挙げております。ご参考になれば幸いです。
*全人的医療とは、病気の治療だけすれば、病院の仕事は終わりとせず、
 がんとなった人の生活や環境まで見据えた配慮の中で、病を治し癒して行こうという医療です。

具体的な活動

もちろん、今も昔も、がんになった人に、病院が果たす基本的な役割は、「がんを治療すること」であり、この点に変わりはありません。がん診療部の最大の業務は、がん治療の実践であり、がんの診断も含めたがん診療業務です。個別のがんの治療(手術や薬物治療など)や検査、診断等のがん診療業務には、がん診療部に所属する各診療科が従事しています。

がん診療部では、こうした診療科個別の診療活動のほかに、全体の活動として、行っている業務・活動があり、主なものを、以下にご紹介いたしました。

なお、個別のがんに対する診療活動の情報については、担当している各診療科のページをご覧下さい。また、以下のリストの中で、リンクがある項目には、さらに詳細なページがございますので、該当ページもご覧ください。

  1. 1

    院内のがん診療支援

    緩和ケア推進

    化学(薬物)療法部門の支援

    ・各種がん情報の告知

    ・希少がん・妊孕性相談・遺伝外来など、がん関連特殊(専門)外来の整備

  2. 2

    院内がん診療の連携支援

    ・複数診療科・多職種による症例検討会(キャンサーボード)の開催・支援

    ・がん診療における共有・共通部門の支援・調整

  3. 3

    院内がん診療レベルの向上

    ・院内職員向けの研修会・講演会の企画・開催

  4. 4

    院内のがん情報とがん診療実績の調査・登録事業

    がん登録

    ・がん診療実績の調査

    ・がん検診の精度管理

  5. 5

    がん患者支援

    がん相談支援センター業務の支援

    患者サロンの開催支援

    ・患者会への支援

    ・がん診療活動の周知・案内

    ・がん情報の提供

  6. 6

    がんの早期発見

    がん検診の推進

  7. 7
  8. 8

    地域との連携

    ・地域の医療機関や行政組織との協議会・合同カンファレンスへの参加・開催

    地域の医療従事者向け勉強会・研修会の開催

    ・がん情報等の広報・啓蒙

  9. 9

    県内がん診療連携拠点病院間との連携

    ・がん診療連携拠点病院協議会への参加

がん診療に関連する特殊外来・専門外来のご紹介

がん診療に関連した特殊外来や専門外来と呼ばれる部署をご紹介いたします。

医療法施行規則で、標榜科目として認められていない名称の外来は、法律の規制上、病院ホームページ以外の媒体では、告知できないこととなっています。そのため、特殊外来や専門外来は、病院広報誌などには記述がありません。 実際には、当院内には、いくつものがん診療に係る外来が設けられておりますので、以下ご紹介いたします。

当院に設置されているがんに関連した特殊外来・専門外来

当院には、内科外来や外科外来と言った一般外来の他に、特殊外来や専門外来と呼ばれている外来があります。その中から、がん診療に関連したものを取り上げ、以下ご紹介いたします。()内に、担当診療科・部門、あるいは外来が設置されている場所を付記しました。

  1. 1

    様々ながんの専門治療を行う外来…以下の共通部門は、各診療科などからの依頼を受け、手術以外のがん治療を担当します。診療中の院内各診療科や他の医療機関からの紹介状が必要です。

  2. 1. 放射線治療外来(放射線科)…がんに対する放射線治療を行います。外来通院での治療も行われますが、各診療科に入院しながら、放射線治療をする場合も、この外来を利用します。治療に当たって、あるいは、治療中は、この外来で随時、放射線治療の専門医の診察(放射線治療の是非、治療効果の判定、副反応診断や対応など)が行われます。専門の看護師(がん放射線療法看護認定看護師)が常駐しており、診察に同席したり、認定看護師の立場から助言したりすることもあります。

    2. 外来化学療法室(腫瘍内科)…各診療科で処方された、外来でのがんに対する薬物療法*のうち、点滴・注射での薬物療法を行っている部署です。入院して薬物療法を行う場合は、各病棟で治療を行います。実施される抗がん剤治療は、院内に常設されている専門委員会(化学療法委員会)で、事前に薬の内容などが討議され、承認が下りたものだけ、行われることになっています**。抗がん剤治療の専門医(がん薬物療法専門医)、専門の看護師(がん化学療法看護認定看護師)らが常駐しています。外来化学療法室に隣接する診察室では、随時、以下の専門外来や、面談などが行われています。

    *近年、がん治療には、旧来の抗がん剤以外の各種薬物が使われるようになり、総称して薬物療法と呼ぶようになっています。
    **治験薬などは、別途、倫理審査委員会の承認を得たうえで実施されています。

  3. 2

    特定のがんに関する診療を行う外来…特に専門性や希少性が高いがん(rare cancers、人口10万人あたり6例未満の発症率の腫瘍とされています)について、各領域の専門家が診療に当たります。専門外来という名称ですが、通常の外来診療と同じ保険診療となります。
    下に挙げたものは、専門外来として行われているものだけです。該当の診療科では、一般外来でも、診療可能のことも多いですので、現在診療を受けている担当医にご相談ください。

  4. 1. アスベスト(石綿)関連悪性腫瘍外来(呼吸器外科外来内)…アスベスト(石綿)が誘因となる胸膜中皮腫・肺がんに関する診察は、こちらの外来をご利用ください。石綿健康被害救済制度の対象となる疾病です。呼吸器外科の専門医が診察を担当いたします。

    2. 縦隔腫瘍専門外来(呼吸器外科外来内)…縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)の診断や治療に関する外来です。縦隔(胸の中心部分)には、多種多様の腫瘍(胸腺腫、胸腺がん、奇形種、胚細胞性腫瘍、神経原性腫瘍、縦隔内甲状腺腫、等々)ができることが知られていますが、それぞれの腫瘍の発生頻度は少なく、最も頻度が高い胸腺腫でも希少がん(人口10万人あたり0.5人程度の発症率)に分類されており、専門家による診察が求められる領域です。縦隔の病変が指摘された方は、こちらの外来をご利用ください。紹介状や検診・ドックの報告書があれば、院外からでも予約できます。呼吸器外科専門医が担当いたします。

    3. 肺癌専門外来(呼吸器外科外来内)…肺がん検診で要精査となった方は、こちらの外来をご利用ください。自治体などから郵送されてきた、「要精査」の肺がん検診結果があれば、紹介状なしに院外から予約可能です。主に、肺がん二次検診を行う外来となっていますが、他院で「肺がんが疑われる」とされた方も、紹介状があれば、予約可能です。呼吸器外科医が担当いたします。

    4. 小児血液・腫瘍外来(小児科外来内)…当院は小児がん拠点病院ではありませんが、小児(15歳未満)の腫瘍に関しては、こちらの外来をご利用ください。当院での診療が難しい場合は、適切な施設(小児がん拠点病院等)へ、ご紹介をさせていただくことがあります。ご了承ください。一部のがんについては、小児外科でもご相談を承りますが、一般外来での診療となります。
    *小児がんに関しては、地域がん診療拠点病院制度ではなく、小児がん拠点病院という制度があります。

  5. 3

    がん診療に関わる諸症状に対する診療や、がん診療中の療養支援・相談などを行う外来…原則として、院内診療科担当医、あるいは、病棟看護師からの予約が必要ですが、一部の外来は院外からのご予約・ご利用も可能です。また原則、保険診療で賄われています。

  6. 1. がん遺伝子相談外来(乳腺外科外来内婦人科外来内)…家族性に発生する遺伝性のがんに罹っている、あるいは疑われる方に対し、支援・相談を行う外来です。臨床遺伝専門医や遺伝性腫瘍コーディネーター資格を持つ看護師が担当します。婦人科腫瘍に関しては、婦人科外来内にある遺伝外来が担当します。

    2. がん関連妊孕性外来(婦人科外来内)…がん治療などによって、将来、妊娠が困難になると予想される方に対し、産婦人科の専門医(婦人科腫瘍専門医など)が相談に応じる外来です。妊孕性(にんようせい)とは、妊娠の可能性という意味の医学用語です。精子や卵子などを凍結保存する妊孕性温存療法などに関して、産科・婦人科双方に通じた医師が、ご相談に応じます。

    3. リンパ浮腫外来(形成外科外来リハビリテーション外来内)…がん治療などで生じた四肢のむくみ(浮腫)の治療を行う外来です。形成外科では主に、外科的な治療を要する方を、リハビリテーション科では、主にマッサージなどの理学療法的な治療(複合的治療)が必要な方を対象にしておりますが、どちらの外来を受診されても、適切な診療科で診療が受けられるよう、担当医からご案内いたしますので、ご安心ください。乳がんの術後の方は、下欄にご紹介しております乳がん治療相談外来でも、対応しております。リハビリテーション科の外来は、院内からの紹介のみの取り扱いですが、形成外科リンパ浮腫外来は、院外からのご予約も可能となっております。

    4. 腫瘍精神外来(精神科外来内)…がん患者やその家族となったことが原因となって、精神的な不調や障害を起こした方に、精神科専門医が診療や治療を行う外来です。院外からのご予約・ご利用も可能です。

    5. がん治療に伴う味覚異常・口内炎外来(耳鼻咽喉科歯科口腔外科内)…抗がん剤の副作用として生じることが多い味覚異常や口内炎に関して、専門医が診察や治療を行います。耳鼻咽喉科では、味覚検査も可能で、放射線治療に伴う食道炎などの治療も行っています。院外からのご予約ご利用も可能ですが、耳鼻咽喉科と歯科口腔外科で予約方法が異なりますので、ご注意ください。

    6. アピアランス・ケア外来(皮膚科外来形成外科外来乳がん治療相談外来(乳腺外科外来内))…がん治療に伴う容姿(アピアランス)の変化に対し、医師や看護師が、診療あるいは療養に関する助言などに応じております。がんの薬物療法に伴う皮疹や、爪の変形については、皮膚科外来で皮膚科医師が診療いたします。乳がんの治療に伴う乳房再建手術に関しては、形成外科外来で受け付けております。乳房の補正下着については、乳腺外科外来内にある乳がん治療相談外来(下に別途記載)で、ご相談に応じております。併せて、がん薬物療法全体における脱毛について、ウイッグや頭皮の手入れなどの療養上の支援や助言も乳がん治療相談外来や外来化学療法室の認定看護師らが行っています。脱毛に関するご相談は、男性でもお受けできます。いずれの外来も予約制ですが、それぞれ予約方法が異なります。がん治療を担当している医師や看護師、あるいは外来予約窓口までお問い合わせください。

    7. 乳がん治療相談外来(乳腺外科外来内)…乳がん治療に関わる様々な問題、特に治療選択や治療後の生活不安などについて、助言や支援を行う外来です。専門資格を持った看護師(乳がん看護療法認定看護師)が、担当します。院内からのご予約のみです。

    8. WOC外来(消化器外科外来内)…いわゆるストーマ外来は、このWOC(Wound Ostomy Continece の略。Woundは創傷(褥瘡;じょくそう・瘻孔;ろうこう)、Ostomyは人工肛門や人工膀胱、Contineceは失禁(便や尿)のこと)外来となります。現在では、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)だけでなく、褥瘡(じょくそう、床ずれと呼ばれていました)や、排泄のケアも対象となっています。がん診療に限定された外来ではありませんが、がん治療などで、人工肛門となった方に、人工肛門の管理や療養上の支援、パウチなど装具の紹介、助言などを行うのは、この外来になります。専門の資格を持った看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)が、担当いたします。

    9. がん薬物療法相談外来(外来化学療法室外来内)…主に、がん薬物療法にかかわる副作用に関するご相談を、薬剤師がお受けしています。現在のがん治療には、抗がん剤と呼ばれる薬物以外にも、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬と呼ばれるような薬が増えています。そこで、抗がん剤治療は、広く化学療法、あるいは薬物療法と呼ばれます。想定される副作用や経過、あるいは、現実に起こっている副作用への対処法など、ご相談をお受けいたします。

    10. がん栄養食事指導外来(外来化学療法室外来内)…栄養指導というと、高血圧や糖尿病など生活習慣病の治療のためのもの、だけではありません。がん治療による食欲不振や栄養障害、呑み込みの障害(嚥下障害)などがある方に対し、専門の資格をもった栄養士(管理栄養士、がん病態栄養専門管理栄養士)が、食事や栄養だけでなく、調理の仕方や飲み込みまで指導や助言まで行っているのが、栄養指導です。がんと診断された方なら、保険診療の対象となり、院外からでも予約できます。

    11. セカンド・オピニオン外来(こちらのページ)…セカンド・オピニオンとは、現在診察を受けている担当医以外に、診療上の意見や助言を求める行為を指します。がん診療に限定されたものではありません。当院でセカンド・オピニオンを求める方は、他の医療機関で診療を受けている方になります。当院でセカンド・オピニオンを受ける場合は診療科での対応となります。原則自費診療で、時間制となります。

これらの外来とは別に、当院には、がん相談支援センターがあります。センターでは、診断や治療などは行いませんが、相談者の状況にあった治療担当科や医療機関をご紹介したり、診療に関わる医療費のご相談、復職に関わる生活上のご相談などに応じております。がん相談支援センターは、特別な専門講習を受けたがん相談員が、がん患者・ご家族の皆様のご相談に応じております。がん相談支援センターのご利用は、無料です。

特殊外来・専門外来は、さまざまな診療科の外来に分散して、設置されています。
各外来は、原則予約制です。通常の外来受診が可能なもの、院内からの紹介だけを受け入れているもの、セカンドオピニオン外来としておこなっているものなど、受診方法は異なっております。診療行為・相談・支援は、原則、保険診療で行われていますが、セカンドオピニオンのように、自費診療となることもあります。外来を実施している各診療科のホームページなどをご覧いただくか、当院の予約窓口までお問い合わせください。

特殊外来・専門外来って?

一般に、外来といわれる診療部門は、医師が、通院での患者に対し、必要な診療を行う場所、と認識してよいでしょう。しかし、最近、各医療機関によく見かけるようになった特殊外来や専門外来、相談外来、看護外来などの外来は、この一般外来とは異なり、やや特殊な事情や背景のもとで行われているものです。
ここでは、それらの外来の特殊性に関して、若干の補足説明をいたしました。

● 通常、外来には標榜科名以外の名称を付けることはできません

病院には普通、内科や外科といった診療科があり、ほとんどの医師は、各診療科に分かれて仕事をしています。外来というのは、診療の際だけ病院を訪れる診療方式のことですが、通常、外来は、診療科ごとに分かれています。各外来は、「内科」・「消化器外科」などと診療科名で表示され、このような診療科目を名乗ることを標榜すると呼びます。
受診者は、標榜された名称を頼りに、診察を受けるべき外来を探すことになりますが、標榜科名は、医療法(医療法施行規則)という法律で定められたものしか使用できません。標榜科名は、診療対象となる臓器の領域(循環器や消化器など)によって大まかに分けられ、同じ領域に、内科・外科がある場合は、さらに手術を行う○○外科か、薬物治療を主体とする○○内科といった治療手段によって細分されて呼称するようになっています。

● 標榜科名だけでは、ニーズに対応できなくなりつつあります

全国どこの医療機関に行っても、共通の名称が使われていることは、受診者の利便性という点で、大変優れた方法ですが、今日、診療に求められている医療行為は、標榜科の名称以上に細分化されており、同じ症状に対し、複数の診療科が診療を分担していることもあるなど、法律で認められた標榜科名だけでは、適切な診療部門(外来)を選択するには、情報が足りなくなりつつあるということも事実です。そこで考え出されたのが、外来の名称に、「頭痛」とか「物忘れ」などのように、具体的な診療対象を特定して示す方法です。
しかし、医療法は、認められた標榜科名以外の診療部署(外来)の存在を、新聞やTVはもちろん、病院案内のようなパンフレットに掲示することも、すべて対外的な広告と見なし、こうした媒体に、掲示することを認めていません。「頭痛科」のような、既存の診療科の枠を超えた新しい診療科を作ったとしても、その名称を、外部の人や組織へ向けて、積極的に周知を図ることは、違法と見なされ、事実上できません。

● キメ細かくニーズに応えようとする工夫が特殊な外来を生みました

標榜科名=診療科名=外来名である限り、規制範囲内での診療科名が付いた外来しか設置できないのです。ならばと生まれたのが、先にご紹介した方法で、診療科名=外来名とせず、診療部署としての外来だけを、標榜科とは別に、院内に設置するやり方です。「頭痛+科」とか「物忘れ+科」のように科名を標榜はできませんが、「頭痛+外来」や「もの忘れ+外来」なら、診療の対象者や診療行為を特定したうえで、外来での診療を実質的に施行でき、新聞やTVには広告できませんが、院内では掲示が可能*で、すくなくとも自施設の受診者になら、利用を勧められます。
*院内での掲示は、広告と見なされないため、可能となっています。

このような背景や経緯から、生まれたのが、専門外来・特殊外来というもので、今では、多くの病院内に設置されるようになっています。ただ、専門外来や特殊外来には、明確な定義もなく、両者の区別も厳格な決まりもないため、外来の名称は医療機関によって自由に付けられ、呼ばれています。

● 特殊外来は、ネットと院内でしか告知できません

しかし、折角の専門外来も、外部からその存在を知ることが出来なければ、十分活用されません。専門外来が設立され始めたころは、おりしも、インターネットが隆盛し始め、当時の医療法がネットでの広告まで想定せず、当初、規制の対象外としたため*、医療機関のホームページが次々開設されて、ここに外来の存在を、対外的に掲示できるようになりました。その後、医療法は、ウエブサイト等も規制対象とするよう改正されていますが、医療に関して適切な選択をするために有用な情報を提供する機能が損なわれるおそれがあることから、一定の条件を満たせば、自施設のホームページ上に、広告可能事項以外の情報も制限付きながら認められることとなり、専門外来は告知が可能となっています(医療広告ガイドライン、厚生労働省H30)。
*広告は、自分から求めなくても目に触れる状態にあるものとの解釈が示され、ホームページ等は、情報を入手しようとする人が自分でアクセスするものであるため、これを満たさない、との理由により、医療法の広告規制の対象外とされました。

専門外来は、診療の対象者を限定しているだけとも言えますので、医師が診療を担当している限り、通常の一般外来と同じように、治療や検査・診断が行われます*。
*セカンドオピニオン外来などでは、制度上、診療行為が行えないことがあります。

医師が診療しない外来~相談外来・看護外来って?

外来は、(通院を前提に)医療行為を行う場です。そのため、これまで外来は、「医師」が診療を行う場所でした。しかし、生活上の療養指導や、支援、あるいは簡易な処置*なども、すべて医師が実施するとなると、外来業務は過多となり、結果として外来診療の停滞を招きます。特に、外来診療は、限られた時間内で行わなければなりません。今も昔も、一人一人の悩みを聞き、じっくり相談に乗るという外来診療を実践することは、大変難しいのが実情です。
*医療における処置は、手当てをすることを指します。具体的には、ガーゼを当てたり、消毒したりといった行為です。
 キズを縫って閉じるような行為は、処理になります。

3分診療3時間待ちなどと揶揄された外来診療の状況を改善するべく、特定の分野については、看護師が、生活上の療養指導や相談、簡易な処置などに限って、医師に代り、外来で行えるようになりました。訪問看護に見られるように、今日では、診断や治療というような医療の根幹部分以外の医療行為*は、一部ではありますが、資格を持った看護師ならば、代行実施できるよう規制は変わりつつあります。
*特定行為と呼びます。

長らく看護職は、助産師、保健師しか上位資格(厳密には国家資格)はありませんでしたが、今では、がんや感染症など様々な領域の専門看護職の資格(厳密には、上位の国家資格ではなく、日本看護協会の認定制度です)が生まれており、他にも実務経験や講義・実習などを経て、特定領域の資格や技能認定を得ることができます。このような特定領域の専門家たる看護師が、外来を担当しているのが、看護外来です。

同様な動きは、看護職にとどまらず、薬剤師や放射線技師、検査技師のほか、栄養士や相談員などにも広がっていて、相談外来では、このような特別な資格を持った医療従事者が中心となって、日常生活を送るうえで、必要な支援や助言などを行います。その上で、医師の診療が必要と判断されるような場合は、医師による診察を依頼します。

医師以外の職種が行う外来は、医師による診断や治療行為を代替するものではありません。主に相談・支援・指導といった行為にとどまることになり、名称は相談・指導外来となっているものがあります。一般に、相談外来は、1件当たりの相談時間を、医師の外来診療時間に比べ、長く取っていることが一般的です。

診療・指導・支援・助言~専門外来でできること

筆者が知る限り、医療でよく使われる「診療・指導・支援・助言」などの行為に、それぞれ厳格な定義はないと思いますが、それぞれの違いを簡単に示してみました。あくまで、筆者の理解する違いとご理解ください。

診療とは、診断行為や治療行為ほか、患者を対象とした医療行為のすべてを意味する言葉です。一般に病院で行われている「患者を診る」行為全てと考えてよいでしょう。本来、医師以外の者は、診療行為を行うことはできませんが、別項で説明したように、一部の医療行為は他の職種でも実施可能となりつつあります*。
*この場合も、医師の指導や監督下でという注釈が付きます。

指導とは、何かを向上させるために、ああしろ、こうしろと、いろいろ指図することですが、医療現場での指導は、単なる助言や指図とは違い、指導を受ける人は、その内容に従ったり守ったりすることが、療養上、必要なものを指すと考えてよいでしょう。例えば、肺がん手術前の禁煙、肝硬変患者への禁酒などは、助言ではなく、指導です。「禁煙(禁酒)しなければならない」というのが、指導が意味するところです。指導は、医師以外の職種でも、行うことが許されていますので、専門外来でも「指導」が行われることがあります。

助言は、指導とは違い、順守を要求しないもので、従う・従わないは本人任せとなります。友人に「禁煙した方がいいよ」というのが助言です。多くの場合、専門家としての立場から、良いと思われる判断や意見を提示しますが、あえて是非を提示せず、自己判断を促す助言を行う場合もあります。

支援は、例えば、禁煙したい友人に「禁煙外来を紹介してあげる」行為です。支援では、言葉で行う「応援」と異なり、具体性のある行動を伴うことが多いです。

医師であれば、診療から助言まで可能です。看護師や薬剤師、栄養士など国家資格を持つ医療専門職であれば、指導まで可能ですが、相談員などは支援・助言のみとなります。同じ専門外来や相談支援センターではありますが、このような決まりがあることもご承知おきください。

以上、皆様のお役に立てることを願っております。

がん検診―内容とお申込み方法

がん検診は、症状がない方に対して実施する検査です。なんらかの症状がある場合は、各診療科の外来(例えば咳が出る→呼吸器内科、血便が出る→消化器内科など)を受診し、診察を受けましょう。症状の原因を調べる外来診察は、検診と違い診療扱いで、健康保険などが使える保険診療となるだけでなく、担当医が必要と判断すれば、がんと診断するための検査を、必要なだけ受けることができます。
がん検診の受診をご検討中の方は、本項の説明をご一読いただき、受診お申込み頂きますようお願い申し上げます。

ご注意ください:同じがんのチェックでも、手法や費用、効果などに違いがあります

当院で実施している「がん」をチェックする検診には、次の3種類あり、検査の内容や費用に違いがあります。

  1. 1

    国が推奨するがん検診

    公費負担です。保険診療ではなく、税金に基づく(一般財源)政府支出です。

  2. 2

    各診療科が提案する、より広くがんを拾い上げる任意型がん検診

    全額自費

  3. 3

    当院健診センターが実施している人間ドック

    全額自費

これらは、検査内容が違うだけでなく、検診にかかる利点と欠点もそれぞれ異なります。以下、簡単に説明しておりますので、ご確認の上、当院内の予約窓口あるいは、予約電話まで、お申し込みください。

  1. 1

    国が推奨するがん検診

  2. 科学的に有効性を証明できた「がん検診」だけが、「国が推奨するがん検診」です。国が、国民に対して一斉に行う検診なので、対策型検診と呼ばれます。検査方法は、安全性や効率も重視されており、比較的安価で、簡易に感じるような検査が主体となっています。がん発見率や危険性など、重要なデータは、すべて公表されています。
    検診の効果が高いとして、国が推奨しているがん検診は「肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん」の5つのがんに対してのみで、これらのがんを調べるための検査方法や対象者が、それぞれのがん毎に決められています。また、それぞれの「がん」ごとに、検査方法、対象者、検査期間の3つの要素が決められています。それは、先に挙げた5つのがん以外のがん検診や、5つのがんに対応する特定の検査法、検査期間、対象者の組み合わせ以外は、総合的にがんの死亡率を下げることが、科学的に立証されていないからです。
    対策型がん検診では、多くの場合、1回の検査でがんの診断が確定することはなく、まず1回目の検査(1次検診)で疑わしい所見を拾い上げ、有所見者には、精密検査(2次検診)を行って、がんを見つけ出すという、2段階方式となっています。がん検診で要再検となった場合は、必ず精密検査を受けて下さい。
    国が実施しますが、政府から連絡が来るのではなく、政府に代わって住んでいる自治体(区市町村)から案内が来ます。また自治体によって、住民サービスの名の下、国が定めた検診方法に、別の検査が追加できたり、国が推奨する検査間隔より短い期間や、対象外の年齢でも、検診を受けられるようにしている場合があり、対策型がん検診の内容は、住んでいる場所によって、違ってしまう状況を生んでいます。また、職場で加入している保険組合によっては、社員やその家族への厚生サービスとして、独自に、国の対策型がん検診とは、別にオプションとしてがん検診を付けていることもあります。そもそも国が定めている検査項目や対象者さえ、新しい研究成果が出るたびに変更になったりしていますので、まさに混乱の極みです。
    がん検診と言っても、本当にバラバラなのがお分かりいただけると思います。非常にばらつきが多く、混乱のもとになっていることは否定できません。がん診療に携わる医師でさえ、正確に実情を把握しているのは、限られていると言ってよい状況です。

    「国が推奨するがん検診」は、当院では、朝霞地区(和光市、朝霞市、新座市、志木市)の住民の方に対するがん検診のみ行われております。項目としては、令和3年現在、乳がん検診と子宮頸がん検診のみです。お住いの自治体(4市で全く違います)によって、オプションの有無や、検診間隔などに違いがありますので、ご注意ください。該当地域の住民であっても、年齢や検診間隔が該当しない方や、4市以外にお住まいの方は受診できませんので、お住いの市・区のホームページや検診の案内などを、今一度ご確認ください。

    当院での「国が推奨するがん検診」のお申し込みは、乳がん検診は乳腺外科外来、子宮頚がん検診の場合は婦人科外来となっております。当院予約窓口あるいは予約電話で、「○○市のがん検診」のようにお住いの地域と、「乳がん」か「子宮がん」のいずれか一方、または両方をご希望かをお伝えください。以降の受診の手続きは、予約担当者がお伝えいたします。

  3. 2

    診療科が提案する任意型がん検診

  4. 国が推奨するがん検診は、がんの発見効率や、安全性等を考慮して、また、多くの受診者を効率よく検査でき、多くの受診者が臆せず受けられるということも考慮して、比較的簡便な検査方法が主体となっています。もちろん、簡素な検査方法ではあっても、これまでの調査で、集団のがん死亡率を下げる効果は、認められてはいますが、がんをすべて発見するという手法でないことも事実です。
    診療科の専門医からみると、通常診療に使用する検査方法を使えば、より広くがんを発見できるという思いがあり、また、がん検診の受診者の中には、どうせ検診を受けるなら、可能な限りがんを見つけてほしいという思いの人がいることも事実でしょう。初めから精密検査に相当するような検査方法を使えば、両者の思いをかなえることができます。また、国が推奨する5つのがん以外の検診を受けたいという需要もあります。
    ただ、精密検査となると、費用や時間、安全性など受診者に不利益なことも多くなります。例えば、国の対策型の大腸がん検診は便潜血検査ですが、この検査で、死んだりする人はいません。しかし、もし大腸がんの検診として大腸内視鏡をするとなると、がんを直ちに発見できる可能性が上がる一方で、検査による重大な合併症を起こし、死亡に至る可能性もゼロではありません。高い危険性がある方法は、国民全員に受診を勧奨する方法としては、適当ではありません。
    国推奨の対策型検診は、この利益(がんの早期発見がもたらす死亡率の低下効果)と不利益(検査を受けることで生じる有害事象)を天秤にかけ、利益が高いと科学的研究で判定できたものだけ、国民に推奨として実施していますので、これ以上の検査を希望するなら、自費で検査を受ける必要があります。このような、受診者個人が自発的な意思により受ける検診を、任意型検診と呼びます。
    (任意型検診と似た言葉に、任意型健診があります。後者はいわゆる人間ドックのことで、次の「3、人間ドックでの臓器別健診」の項をご参照ください。)
    当院では、自費での任意型がん検診として、低線量CTによる肺がん検診を実施しています。低線量CT肺がん検診は肺がんの検出力が高いCT検査装置を使いながらも、その欠点である偽陽性率や放射線被曝量を下げた検診方法です。低線量CT肺がん検診の詳細については、当院放射線科(こちら)や呼吸器外科のページ(こちら)にも説明がありますので、ご参照ください。

    当院での低線量CT肺がん検診は、放射線科外来にて受付いたします。受診をご希望の方は、当院予約窓口あるいは予約電話で、「低線量CTの肺がん検診」をご希望の旨、お伝えください。以降のお手続きなど担当者からお伝えいたします。

  5. 3

    人間ドックでの臓器別健診

  6. 人間ドックでは、がんの発見だけでなく、各臓器にがん以外の病気がないかのチェックもします。がんを特定した検査ではないので、厳密な意味では検診ではなく、臓器が健康な状態かを調べる「健診」にあたります。(人間ドックを、任意型健診と呼ぶことがあります。)検査方法によっては、広く臓器の状態を見るとき、当然その臓器の中のがんの有無もチェックできますので、うまく検査方法を選べば、検診の目的も叶うことになります。そのためには、検査方法も精密検査に近いものになり、一つの臓器に対して複数の検査を行う必要がある場合もあります。どこまで検査するかは、実施する医療機関や健診機関によって異なり、検査費用も自費となります。

    当院では、健診センターで人間ドックを実施しています。がん検診として見た場合、全身の検査としてチェックされる臓器もあれば、オプションとして選ばなければならない臓器もありますので、人間ドックの申し込み要綱(こちらのページにあります)をよくご覧になり、必要であれば、人間ドックお申し込みの際に、ご希望のオプションをお申込みください。

    当院での人間ドックは、健診センターが実施しています。予約窓口あるいは予約電話で、「人間ドックの受診」をご希望の旨、お伝え下さい。人間ドックは基本コースと呼んでいる検査項目のセットでの受診が基本となっておりますので、「肺がん」「乳がん」「婦人科がん(子宮・卵巣)」の検査は、追加オプション扱いとなります。ご希望の検査オプションをご指定下さい。人間ドックは全額自費でのご負担となります。

がん検診のいろいろ
国が推奨するがん検診はこちらだけです
肺がん 胃がん 大腸がん 乳がん 子宮頸がん
検査法 問診と
(1)胸部レントゲン写真と
(2)喀痰細胞診
問診と
(1)胃内視鏡 検査
または
(2)胃X線透視検査
問診と
便潜血検査
(2日法)
問診と
乳腺X線検査
(マンモグラフィー)
問診と
視診と
内診と
細胞診
対象者 (1)40歳以上
(2)50歳以上
で喫煙指数*1
600以上
(1)50歳以上
(2)40歳以上
40歳以上 40歳以上 20歳以上
受診間隔 1年 2年 1年 2年 2年
お申し込み方法 現在、お申込できません。お住まいのお近くの医療機関にお問い合わせください。 予約窓口か電話予約センターで「○○市の子宮(頚)がん検診希望」とお伝えください。

*1:喫煙指数=1日喫煙本数(本)x喫煙期間(年)です。
   20歳から29歳まで、1日20本タバコを吸っていたら、20x (29-20+1)=400と計算します。

診療科が提案するがん検診
肺がん
検査法 低線量CT検査
対象者 希望者
受診間隔 2年
診療科 放射線科
費用 自費
お申し込み方法 予約窓口か電話予約センターで「低線量CT肺がん検診希望」とお伝えください。

胸部レントゲン写真を基本とする国の対策型肺がん検診では、近年多く見つかっている初期型の肺がんを見つけることは難しく、CTで検診すれば、このような初期の肺がんでも、比較的容易に発見できます。CTによる検診は、がんを見つける能力は高いのですが、良性の腫瘤も拾い上げることが多くなり、良性か悪性かを確かめるための精密検査や手術を必要とすることになってしまう欠点があります。また、通常の診察用CT検査は、レントゲン写真に比べ放射線の被曝も多く、費用や検査時間も多くの人に検診として実施するには、解決すべき問題があります。そこで、CT検診の最大の問題ともいえる放射線被曝を、がんが発見できる限界近くまで減らした検査法が、低線量CTによる肺がん検診です。

人間ドックで行う臓器別健康診断
乳腺 婦人科(子宮と卵巣)
検査法 診療用高精細CT検査 視触診と
乳腺X線検査(マンモグラフィー)と
超音波検査
視診と
内診と
細胞診と
超音波検査
対象者 希望者
受診間隔 1年
診療科 健診センター
費用 自費
お申し込み方法 予約窓口か電話予約センターで人間ドックお申し込みの際、「○○オプション希望」とお伝えください。
オプションは複数選択が可能ですが、オプションだけの受診はできません。
いずれの場合も、人間ドックの基本コースのお申し込みが必要です。

人間ドックの基本コースには、甲状腺超音波検査や腹部超音波検査、血液検査に腫瘍マーカー(CEA,PSA)が含まれています。

緩和ケアのご案内

当院の緩和ケアに関する診療体制についてご案内をします。
当院には、緩和ケア内科という独立した診療科もございます。同科のページも併せてご覧いただくと、より分かりやすいかと存じます。

緩和ケアとは

重い病いを抱える患者さんやその家族の痛み、苦しさなど、様々な身体的な不調だけでなく、不安や、気力の低下、不眠など精神的なつらさのケアもおこなうのが“緩和ケア”です。
がん治療の中で始められ、発展した医療ですが、最近では、がんに限ることなく提供されるべき医療と捉えられるようになっています。

緩和ケアに関する当院の診療体制

当院には、専門医*が常勤する緩和ケア内科という診療科があります。当院の緩和ケアは、同科の専門医らが主導していますが、緩和ケア医療の提供は、緩和ケア内科診療中の方だけでなく、様々な段階や状況で行われています。
*日本緩和ケア医療学会が認定する緩和ケア専門医は全国に270人、埼玉県では6人(2020年4月時点)で、必要度に比べて、
 緩和ケア専門医は不足しています。ちなみに日本内科学会が認定する総合内科専門医は37881人(2021年9月現在)です。

● 緩和ケア内科外来

本館2階外来Aブースに外来があり、外来診療では、受診者の診療や、ご家族への相談・支援に、十分な時間をかけてあたっています。他の診療科や医療機関で診療継続中であっても、がん診療中の担当医や地域の医療機関と連携して、緩和ケアの診療が受けられる体制が敷かれています。詳しくは緩和ケア内科のページをご参照ください。

● 緩和ケア専用病棟

新館6階には緩和ケア専用病棟(6B病棟)があります。病室は全室個室で、一般病棟に比べ、室内は広く作られています。新館の最上階にあり、天候が良ければ、ラウンジから、富士山も一望できます。緩和ケア病棟には、緩和ケア内科の専門医だけでなく、緩和ケア専門の看護師も常勤で配置されています。
緩和ケア病棟のページはこちら

● 一般病棟での緩和ケア

緩和ケア内科医をリーダにする緩和ケアチームは、定期的に各病棟を巡回し、各診療科の医師や看護師などへ、一般病棟*での療養上の指導・助言などを行っています。各病棟には、リンクナースと呼ばれる看護師が選任されており、緩和ケアチームや認定看護師の指示・支援を受けながら、各病棟での緩和ケアを推進しています。
また、院内で、がん診療にかかわる医師**は、国が定める緩和ケア研修会を修了しており、緩和ケア専門医が対応するには及ばない、基礎的な緩和ケアに対応しています。
*ここでは、緩和ケア病棟以外の病棟という意味で、一般病棟としました。
**在籍1年未満の医師は除く

● 事象別・専門領域別の緩和ケア

特定の症状や事柄に限った緩和ケアに関しては、各領域の専門家が担当する専門外来などを整備しております。がん診療中の担当医が、それらの症状・事柄について専門外となるような場合、あるいは何らかの理由で、直接担当医に相談しにくいような時には、当ページにご紹介しております専門外来のご利用をご検討ください。様々な領域の専門家が、担当医に代わって、あるいは担当医を支援する形で、診療・支援・助言・相談に応じます。
例えば、がんに罹ったことや家族ががんに罹ったことによる精神的な問題が生じたような場合、精神科専門医による、診察・治療を受けることができる専門外来があります。がん治療後の妊娠や出産のことに関しては、産婦人科専門医の診療や相談を受けることができる外来もあります。
医師に相談しにくい場合や、医師による医療行為を必要としないような支援・相談が必要な場合なら、看護師に悩みを打ち明けたり、支援や助言を求められる外来もあります。
また、仕事や医療費のご相談については、専任の看護師や専門の相談事務員がアドバイスできる部署もあります。
その他、容姿の変化や薬の副作用、栄養摂取にかかわる問題、人工肛門などの不具合や管理、手術や放射線治療の後遺症が辛さなど、要因や症状に応じて、がんを治療した診療科以外にも、様々な診療科や専門家が対応できるよう体制を整えております。
専門外来は受診方法が、一般外来と異なることがありますので、担当医、看護師、事務員あるいは予約窓口までお尋ねください。

がん診療部は早期からの緩和ケアを推進しています

緩和ケアは、がんの終末期医療(終末期ケア、ターミナルケア)ということではありません。上にいくつかご紹介いたしましたように、様々な診療科や部署が、がんに伴う各種の症状緩和(支持療法、サポーティブケア)だけでなく、精神的・社会的苦痛の緩和・軽減をはかり、生活やお仕事の支援を行い、患者ご本人だけでなく、ご家族の不安や苦痛にもケアを行う、こうしたトータルな医療が緩和ケアです。このような医療は、「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対する」ケアとして、がん診療では、がんと診断された、できる限り早い時期から、実施されるべきものとされています。

当院では、外来や入院治療など、機会があるごとに、がん患者の方に「生活のしやすさに関する質問票」をお渡しして、患者ご自身とご家族の不安・苦痛を早期に把握し、できる限りご相談に応じ、不安や苦痛が少しでも解消されるよう努めています。院内各所には、緩和ケアご紹介のパンフレットを配置しておりますので、ご希望の方は、担当者にお声掛けいただき、お持ち帰りください。緩和ケアに関するご質問は、治療担当医や看護師、あるいは院内のがん相談支援センターまでお問い合わせください。

医療従事者向け緩和ケア研修会の実施と受講の勧め

「がん対策推進基本計画」において、「がん診療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し、知識と技術を習得する」ことが目標として掲げられていることを踏まえ、毎年、当院では、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会を実施しています。
この緩和ケア研修会は、医療従事者のうち、特に医師向けの研修会で、がん診療に携わる医師であれば、どなたでも参加できます。集合研修などもあり、おのずと参加人数は限られますが、人数に余裕があれば、医師以外の医療従事者も参加可となっています。

全国、多数の施設で開催されていますが、参加者希望者が多く、ご希望に添えないことも少なくありません。都道府県が、域内で行われる研修会についてとりまとめ、ホームページなどで募集状況など公表しておりますので、ご覧ください。当院主催の緩和ケア研修会の開催要項に関しましては、埼玉県>がん対策>緩和ケアに関するサイトほか、当院のイベント情報などに掲載いたしております。

なお、一般の方向けには、随時、各種セミナーや市民公開講座などの機会を利用して、緩和ケアに関する講演などを実施しています。それらにつきましては、イベント情報などでお知らせいたしますので、そちらをご利用ください。

多くの皆様のご参加をお待ちしております。

がん情報コーナー

当院には、がん情報コーナーと呼ばれる一角がございます。
ここには、がんに関する資料などを展示・用意しておりますので、診療の合間にでも、お立寄りいただき、ご休憩方々、資料の閲覧など、ご利用下さい。どなたでも自由に、無料でご利用になれます。コーナーに配置しております小冊子やパンフレットなどの資料のほとんどは、ご自由にお持ち帰りできます。

用意している資料の中心となっているが、国立がん研究センターがん情報サービスが、一般の方向けに編集、がん対策情報センターにより発行されている、20-30ページ程度の小冊子です。以下のようにシリーズ化されており、主要ながんならば、ほとんどのがんに関するものがあります。がんという病気に関するものだけでなく、療養や就業時の注意点などについて作られたものもあります。また、発行元の国立がん研究センターがん情報サービスのWebサイトには、電子版や音声版もあります。

  1. 1

    各種がんシリーズ【消化管・肝臓・胆道・膵臓】

  2. 2

    各種がんシリーズ【脳・神経・口・のど】

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    各種がんシリーズ【胸部】

  4. 4

    各種がんシリーズ【女性】

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    各種がんシリーズ【泌尿器・男性】

  6. 6

    各種がんシリーズ【皮膚】

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    小児がんシリーズ

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    がんと療養シリーズ/社会とがんシリーズ/がんを知るシリーズ

これら、国立がん研究センター作成のがんを知るための資料のほか、その他、信頼できる団体や組織が作成した資料、当院が発行している各種案内、がん患者の就労に関する行政からの資料、各種講演会やイベント情報、患者会のご紹介なども用意しております。 棚から資料がなくなっているような場合は、がん相談支援センターまで、お問合わせください。

がん登録

当院では、法律(がん登録推進法)の定めに従い、院内で診断・治療されたがん患者情報を、国や埼玉県の担当部署へ報告するとともに、情報の一部を、院内の規定に基づき、所定部署にて保管しております。ここでは、がん登録事業に関する情報をお届けします。

がん登録事業

がん登録事業は、従来、医師個人や各診療科などに任されていたがんの発生状況や治療結果などのデータ集計作業を、行政レベルで行うようになったものと考えてよいでしょう。
当院が所在する埼玉県には、本稿執筆時点で、以下の3つのがん登録事業・業務があります。当院では、がん診療部に属するがん登録室という組織が、この業務にあたっています。具体的には、院内で発生しているがん患者の把握、データの集計・照合・修正・保管・確認作業などを行い、行政機関へデータ登録しております。

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    院内がん登録

    2007年から、がん診療連携拠点病院では、院内にがん登録の制度を整備することが求められました。埼玉県南西部地域のがん診療連携拠点病院である当院でも、院内がん登録業務として、データの保管集計を行っております。

  2. 2

    埼玉県地域がん登録

    2011年9月から、埼玉県では地域がん登録事業を開始しています。県内のがん対策のため、開始されましたが、2016年からは下記の全国がん登録に移行しています。

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    全国がん登録

    このがん登録事業は、2016年1月から国内すべての病院と一部診療所に義務付けされているものです(がん登録推進法2013年)。
    具体的には、当院でがんと診断された方の、がんの種類や進行度や治療内容などのがん情報*を、埼玉県がん登録室へデータ登録することになります。データは、他院のデータとともに、最終的に国立がん研究センターにある全国がん登録データベースに登録・集計されます。集計された情報は、国や地方公共団体、あるいは登録病院やがんの研究者に提供され、がん対策やがんの研究などに利用されることになっています。
    *登録対象となるがん(悪性新生物)の種類や事項は、法律に付随する施行規則などによって決められています。
     がん境界病変なども登録対象に広げられています。

がん情報収集の重要性

国の施策として始まった全国がん登録事業の画期的と言える点は、事業が、新規に発生したがん患者の状況を集積するだけでなく、がん患者のその後の生存確認を、国の機関が定期的に実施し、その情報を診療している医療機関(登録病院)へ提供することになったところにあります。
以下、がん登録事業の意義につきまして、簡単に解説させて頂きました。

● がん治療の成績は5年生存率で示されます

がんの治療が「上手くいったかどうか」の判断は、多くの場合、「治療の後、5年経過した時点で、生きているかどうかで行う」*のが慣例で、生存者の割合をもって、がんの治療成績と考えます。
がんの治療成績の算出には、治療後の経過を、何年もの間、追跡し続ける必要があり、多くの労力を必要とします。従来、日本では、この追跡調査と治療成績の算出作業は、診療業務ではなく、研究行為の一つとされ、治療にあたった医師が、診療時間外に、自主的に行うものとされてきました。治療成績を算出するかどうかは、医師の自主性に任され、一番重要な指標であるにもかかわらず、診療する医師が成績の算出に、相当のやる気を出さなければ、知ることさえできなかったのです。
残念ながら、自施設の成績を知らないまま、がん治療を実施している医療機関や診療科は、間違いなく存在しました。
*5年生存、そして生存している人の割合を5年生存率と呼びますが、一部のがんでは治療後10年の生存率を重視する場合もあります。

● 負担が大きいデータの更新

もちろん、積極的に、成績を算出している医療機関や診療科もたくさんありました*。筆者は外科医ですが、在籍したほとんどの外科の、医局と呼ばれる部屋には、台帳と呼ばれる疾患別のノートがありました。そこには、いつ、どのような病状の人に、どんな手術をして、その後どうなっているかが、記録されており、古い病院では戦前の記録も残っていました。そのような歴史を感じる台帳は、手に取るだけで、ある種の感動を覚えたものです。
私たちは、このようにして脈々と受け継がれてきた台帳の記録を集計し、随時追加し、更新することで、がん治療における自分たちの成績を都度、計算し、がん治療の良しあしを、様々な視点から検証し、がん治療を改善してきました。
*過去形である理由は、後述していますので、読み進めてください。

考えてみれば当たり前なのですが、病院には、自院以外で死んだ人の情報や、自院に来なくなった人の情報はありません。患者として来院しない限り、病院が手術を受けた人が生きているかどうかを知るすべはないのです。
ほとんどの病院は、経費が掛かるだけの、がん患者の追跡調査や集計作業を、代行したりしません。がん患者の生存を確かめる作業は、各診療科や医師個人が自ら行わなければなりませんでした。
電話を掛けたり、手紙を送ったりしますが、音信不通の方、お返事を頂けない方も少なくありません。快く近況をご報告いただくことも多いのですが、時に、お叱りに近い厳しいご意見を賜ることもあり、何年も昔に退職した主治医に代わって、お詫びすることになります。死亡確認のために、役所に出向かなければならない場合もありました。
確認作業が百人単位となると、かなりの負担がかかり、作業は遅れがちで、診療の業務外で行う作業ということもあって、必要性はわかっていても、ついつい先延ばしになったものでした。

『カルテを見れば』と思われるかもしれませんが、カルテは、法律で保管期間が5年となっており、特に紙のカルテは、保管に大きな費用がかかるため、一定期間が過ぎたものは、順次処分されるのが普通です*。カルテは一人に1冊であり、多くの人のデータを集計するために、多くのカルテを、調査のたびに古い図書室のような保管庫へ足を運び、選別して調べ直す必要があります。がんの診療のように、治療後何年もその後の経過を見たり、あるいは、古い記録を、横断的に確認したりするには、カルテは非効率で、適切な資料足り得ないことが多いのです。
そこで用意されたのが、各診療科が別途に記録を保管しておくのが「台帳」だったのです。
*実際には10年単位で保管されることが多いです。

こうした作業の後に、ようやく集計・算出できたのが、がんの生存率を代表とするがん治療の諸指標です。がん診療に携わる者にとっては、自己の成績そのものであり、この成績を向上させるために日々精進しているといって間違いありません。大きな負担を負っても、入手すべき貴重な情報なのです。

● 治療経過を把握することもままならない時代

大変な労力をかけて、入手したこうした治療後の患者情報は、わが国で、個人情報保護の動きが進むと、治療を担当した主治医であっても、情報収集や個別調査そのものが不可能な状況となりました。診察などで自院に来ていただくしか、生存を確認する方法がなくなり、自院で亡くならない限り、確実な死亡情報すら得られません。診療情報が記録されているという理由で、台帳を新規に作成することはもちろん、今では過去に記録された台帳を、医局の棚やパソコンに保管しておくことさえ、問題視されています。

● 法律に基づくがん患者情報の収集へ

こうした問題は、行政も早くから認知していて、国全体の問題として取り上げ、法律による整備が進められました。
その法律が「がん登録推進法」です。指定感染症などに倣って、がんの発生を医療機関が届け出るべき疾患とすることで、国として、国内のがん発生状況を知ることができるようにしただけでなく、それまで医療機関任せであった、がん患者のその後の動向、つまり生存/死亡情報を、国の機関が法的根拠に基づいて調査し、医療機関に通知することとしたのです。

この制度に成立によって、全国のがんの発生状況や地域分布だけでなく、がんの種別や医療機関別、治療別にどのくらいの人が治ったかなどの治療成績を、かなり精度高く出すことができるようになります。各医療機関も、治療成績の算出のための情報を、関係機関から合法的に、過大な労力なしに入手できることとなり、がん治療の向上に大きく資することが期待されています。

● 個人情報は保護されます

もちろん、得られた患者情報は、有志に管理が任されていた先述の「台帳」とは違い、病院として公式に管理し、他の診療情報同様、厳重な管理下に置かれます。当院では、診療情報の管理とは別途に、規則を定め、所定の手続きを経なければ閲覧できないような仕組みを整えました。病院の正式な組織として、がん登録室を設置し、がん登録室には、専門の研修を修了した事務職員を配置しています。

● がん登録事業にご理解・ご協力を

がん登録制度によるがん治療成績のデータは、2023年度以降、全国のがん登録病院へ還付されることになっており、これらの事業が進めば、当院も含め多くの医療機関でがん治療成績の算出が容易になり、治療成績の公開も進むと予想されています。

がん治療の向上のためには、治療成績の算出と評価が不可欠であり、その基礎となるがん情報の入手は必須となります。本事業は、あくまで、がん統計データの取得や、過去のがん治療の評価を目的としたものであり、個人のがん診療の内容を開示したり、実施中のがん診療に直接影響したりするものではありません。
皆様には、がん登録事業の意義と重要性について、ご理解いただきまして、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

院内がん登録全国収集データの二次利用について

国立がん研究センターに提出された院内がん登録データは、報告書を作成するだけでなく二次利用として

  1. 1

    データのより詳細な集計や研究解析を行って実態を検討する

  2. 2

    全国規模で対象を選び病院からアンケートをお送りして意見をうかがう

などの活動を通じて、国全体で、より良いがん医療、がん対策に役立てることが期待されています。
これらの二次利用は定められた審査を経て行われるものですが、もし自分に関する情報が二次利用に使われたくない場合は当院の窓口へお申し出ください。データの管理や制度の詳細は国立がん研究センターがん情報サービスをご覧ください。必要に応じがん情報サービスのお問い合わせフォームもご活用ください。

当院窓口:企画課医事室 病歴係長

院内がん登録について
https://ganjoho.jp/public/institution/registry/hospital.html

がん情報サービス お問い合わせフォーム
https://contact.ganjoho.jp/form/pub/ganjoho/contact

がん診療実績

● 当院における五大がんの診療実績

5年生存率などの治療成績については、全国がん登録センターから、法律に基づく公式情報が入手できます。

地域がん診療連携拠点病院

当院は、厚生労働省より、「地域がん診療連携拠点病院」に指定されています。
人口730万余の埼玉県には、13の病院が指定(令和2年4月時点)を受けており、当院は埼玉県南西部地域のがん診療連携拠点病院です。

がん診療部は、当院が地域がん診療連携拠点病院として十分機能するように、様々な業務活動をしています。活動の内容は、別ページにご紹介しましたが、ここでは、地域がん診療連携拠点病院制度について、簡単にご紹介をいたしまして、併せて、当院をはじめとした全国のがん診療連携拠点病院が目指す、がん診療の姿について説明いたします。

がん診療連携拠点病院に関しましては、制度を所管する厚生労働省のホームページにも説明がございますので、ご覧ください。

「地域がん診療連携拠点病院」って何?

「地域+がん+診療+連携+拠点」の病院?あまり耳にしない言葉かもしれません。正直、ややっこしい名称です。「地域がん診療連携拠点病院」正しく滑らかに言える人は、医療関係者でも多くありません。「地域がんセンター」くらいが、一般の方にもわかりやすいように思いますが、このような名称になったのも、様々な経緯があります。

国の対がん政策で生まれた

がん診療連携拠点病院は、我が国の対がん政策の中で、誕生したものです。
誰だって、どうせ病院にかかるなら、日本で一番良い病院で、と思うものでしょう。がんの治療なら、がんの専門病院に、ということになります。平成の初めごろ、国の対がん政策は岐路に立っていました。少数のがん専門病院に集中投資して行くべきか、広くがん診療のできる病院を全国に整備していくべきか、です。行政改革が叫ばれ、国立病院・療養所の統廃合や経営の合理化が進められていた頃です。
都会のごく一部のがん専門施設に、がん診療を集約するなら、経済効率は高まっても、恩恵を受けられる人は、限られてしまいます。全国津々浦々に、新たにがん専門病院を建設するには、予算も人材も足りません。
議論の末、すでに高度ながん診療を実施していると評価できる各地の既存医療機関を、がん診療の拠点病院として指定し、この拠点病院を軸に、地方に高度ながん診療を、浸透させることとなりました。これが現在の「がん診療連携拠点病院」制度の始まりで、全国に、がん専門病院に代わりうる病院(がん拠点病院)を特定し、展開させていくことで「全国どこに住んでいても、高度ながん診療を受けられる」体制づくりが開始されました*。平成12(2000)年のことです。
*平成12年政府が定めた「メディカルフロンティア戦略」に沿って作成された「地域がん診療拠点病院の整備に関する指針
 (平成13年、厚生労働省)」が該当します。がんの拠点病院制度は、平成14年に創設され、当初5施設の指定で開始された
 「地域がん診療拠点病院」に始まるものです。この時の名称には、「連携」の文字はありません。

がん診療の拠点となる病院

当初の制度では、がん診療拠点病院となる条件として、がん治療の3本柱(手術、放射線治療、抗がん剤治療)のための、診療設備やマンパワーが整っているかどうかが、主に問われました。今から思えば、当時の指定要件は、院内ハードウエアの整備に集中していたと言ってよいでしょう。
当時はまだ、抗がん剤治療は外科で行われていることも多く、大学病院のようなところでも、一般外来の奥にある処置用のベッドで、抗がん剤の点滴が行われたりしていました。一般病院の中には、大きな病院でも、放射線治療設備がない医療機関は珍しくなく、放射線治療のために、放射線設備のある病院へ、バスで集団通院させるようなことも行われていました。

がん診療のために連携する病院

その後、がん診療拠点病院は、平成17年までに135施設が指定を受けましたが、県によっては、県独自のがん拠点病院制度がある地域もあり、また指定を受けても、経営上のメリットがなかったことも加わって、全国普くと言えるまでは、指定を拡げることができませんでした。 そこで、制度の見直しが図られ、「がん診療連携拠点病院の整備に関する指針」が平成18年に出されました。それまでは設備や人員の基準など、比較的外形的であった指定要件を、患者の意思決定を重視し、さらに地域の医療システムと連携することを求める内容へ改変され、このとき、拠点病院を、地域を含めたがん診療の中核に据える制度としたことから、名称を「がん診療連携拠点病院」と変え、「連携」が重要であることを強調する表現になりました。
名称変更と同時に、診療報酬上の評価、つまり、病院経営上の利点を加えたことで、「がん診療連携拠点病院」はその後急速に増え、全国で400近い施設が指定を受けることになりました。

がん診療病院の階層化と連携

制度の改変で、がん診療連携拠点病院は倍増しましたが、拠点病院の間に、施設整備の状況で少なからず格差が見られることとなり、厚生労働省は、平成31年新たな整備指針を出しました。
この指針で、拠点病院の指定要件を厳格化しただけでなく、拠点病院の一律指定を止め、要件の充足状況や地域で果たすべき機能に基づいて、連携病院を階層化しました。
都道府県を二次医療圏と呼ばれるいくつかの地域に分け、各地域で、厳しい要件でも満たすことができる病院は、「拠点病院」*として、やや緩やかな要件なら満たせる病院は、「がん診療病院」として、旧制度のがん診療連携拠点病院を、新たに指定し直し、同じ地域の拠点病院と指定病院は、相互に連携するようにしました。地域の拠点病院の上には、各都道府県に1か所の取りまとめ医療機関を、さらにその上位に国立がん研究センターを据え、国全体のがん診療を統括する役割を担わせることとしたのです。
国→都道府県→二次医療圏→地域医療機関という連携の中で、国内全体のがん診療を推進する制度となっているのが、現在のがん・診療・連携・拠点・病院制度です。
*特定領域がん診療連携拠点病院や地域拠点病院(高度型)と指定を受けている病院もあります。
 ゲノム医療や小児・思春期世代(AYA世代)のがんに関しては、別の制度が用意されています。

より広いがん診療を目指す拠点病院

がん拠点病院制度は、当初こそ、国内に多いがんに対する診療体制の整備に重点が置かれていましたが、20年経過した現在は、小児・思春期世代のがんのように、比較的頻度が低いがんに対する診療体制の整備や、ゲノム医療といった新しいがん診療領域への対応というように、強化の対象領域を広げてきています。
また、拠点病院には、自施設の診療技術向上だけではなく、がんに罹ったことによるがん患者の生活や将来への不安、苦痛の緩和といった面の支援にも力を入れ、さらに、検診の推進や学校教育にも、積極的に参画するなど、地域や社会との連携(つながりや働きかけ)の強化を図る、というような方向性も示されています。
このような拠点病院が果たすべき活動は、対がん政策の目標として掲げられている、がんとの共生社会の創出、全人的医療の推進実現を目指したもので、「がん診療連携拠点病院」の在り方は、時代とともに変遷している*と言ってよいでしょう。
*すでに政府は2024年度から始まる次期がん対策推進基本計画のための議論を進めています。

地域と連携し、がん診療の拠点となる病院として機能するようにがん診療部は活動します

今や、「地域がん診療連携拠点病院」の指定を維持しようと思えば、病院や職員が満たさなければならない事項は、500項目近くもあり、とても診療科単位や、個々の職員の努力だけでは充足できません。がん診療を、特定の診療科に任せて済む時代は終わり、病院一丸となって組織として取り組み、病院では足りない、手が届かないところは、地域の医療機関はもちろん、行政や教育機関などとも連携を取らなければなりません。

当院は、平成20年にがん診療連携拠点病院の指定を受けて以来、今日までこの指定要件を満たしてきました。最初に指定を受けたときは、当院は350床程の病院でしたが、その後、病院は大きくなり、今や550床の診療規模となって、診療科や医師、職員は増え、ほとんどのがん診療に対応できるまでに成長しました。単に増床・増員しただけでありません。逐次、制度整備や運用の改善を繰り返し、第三者機関の査察や評価も受けて参りました。職員は、毎月のように研修や講義を受け続けて、知識や技術の維持・向上と、資格の取得・更新に努めています。

がん診療の地域拠点病院の規定は、厳格になっていますが、お陰様で、現在もなお継続して、指定を受けております。今後もがん診療部は、当院ががん診療連携拠点病院の指定要件を十分満たしているかどうか、常に院内外をモニタリングし、問題があれば、該当部署に警告し、必要があれば、支援して改善を促して参ります。

私どもがん診療部は、地域のがん診療連携拠点病院の整備充実を通して、今後も変わらず我が国が目指す「全人的医療やがんとの共生社会」という理想の実現に向け、活動して参ります。

がん教育派遣講師

当院では、地域がん診療連携拠点病院として、小学校、中学校、高等学校の学校でのがん教育の派遣授業のご依頼をお受けしております。この派遣は、文部科学省の教育指導要綱に対応するもので、一般の組織や団体へは、派遣を行っていませんので、ご了承ください。
派遣に当たっては、可能な限り、ご依頼元のご要望に応じさせていただきますが、必ずしもすべてのご要望に沿えるものではありません。

派遣制度は始まったばかりで、講師を務める予定の医療従事者も、専門家からの研修を受けてはいますが、実際に学校で児童・生徒に対する授業を行った経験など、ほとんどありません。
当院では、通常業務に従事している職員の中から、病院業務の一部として、職員を派遣いたしますが、派遣できる職員の数は限られており、派遣に当たっては、いくつかの条件を設定させていただいており、相互のすり合わせが難しい場合は、派遣をお断りすることもございます。あらかじめ、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
また、社会・医療情勢によって、オンライン(当方にズームやズームウエビナーの用意がございます)での対応とさせていただくことがあります。

派遣先となる学校

当院の医療圏に当たる朝霞地域(和光市・朝霞市・志木市・新座市)と練馬区・板橋区に所在する小学校、中学校、高等学校。しばらくの間は、和光市内の学校に限定させていただいております。

派遣日と時間

日時に関しては、ご相談事項となります。講義は平日で1時限分程度を目安にしております。

派遣費用

職員の勤務時間に該当する時間帯(月~金曜日、午前9時~午後5時が目安です)であれば、交通費を含め、当面は無償でお引き受けいたします。
土曜日・休日・時間外に講義をご希望の場合は、業務扱いにならないため、謝金が発生いたします。(授業は30分~1時間を想定しておりますが、往復や準備時間などを含めて、半日(4時間)程度の拘束時間として計算いたします。所得税の対象となることもありますので、お支払いにあたってご留意ください。)

授業内容

原則、講師が授業内容を決めております。講義内容をご指定になる場合は、授業までの準備期間を一定程度取らせていただくか、対応できない場合は、ご依頼をお断りすることもあります。派遣するのは医療従事者であり、教諭ではありませんので、学習指導案のようなものは、作成も提示もできませんので、ご了解ください。

派遣をご希望の学校関係者の方は、上記注意事項をご覧いただいたうえで、必ずお電話で、当院がん相談支援センターまでご連絡ください。折り返し、同センターより、お申込み用紙などお送りいたします。

がんの診療科で迷ったら

「何科に行けばいいか?」「内科なの外科なの?」

ごもっともなお尋ねではありますが、何も情報なしには、適切なアドバイスはなかなか難しいというのが、本当のところです。
同じ種類のがんでも、医療機関によっては、診療科が異なる場合や、複数の診療科が別々に診療をするところもあります。大学病院のようなところでは「第一外科と第二外科が同じがんの手術している」というようなこともありましたし、大きく外科と標榜している診療科のなかに、肺外科や胃外科というような部署が分かれていて、別々に仕事をしていたり、女性科という名前で、乳腺外科と産婦人科があったりと、それぞれ理由はあるのかもしれませんが、わかりにくい場合があることは事実です。がんを内科と外科でどちらで診察するかというような、内科・外科の違いについては、いつの時代も、どこの医療機関でも問題になってきましたし、これはがんだけでなく循環器疾患や脳神経疾患でもあるようです。
ここでは、このような、いわば病院側の都合(診療体制上の問題)に起因するような場合を除いて、診療科を探す際の基本的な考え方を記述しました。

原則は病巣がある部位の診療科を

病名は原則として、病巣が存在する「臓器名」+「病気の種類」で呼ばれます。例えば、胃潰瘍、肺炎、心筋梗塞などです。がんの多くもこの例に倣って、食道がんや前立腺がんなどと呼ばれます。このようにがん病巣のある場所(臓器)がはっきりしている場合は、該当する臓器名を標榜する診療科を受診すればよいでしょう。消化器内科・外科や呼吸器内科・外科のように同じ臓器名で標榜する内科/外科の診療科がある場合は、ほとんどの病院で、どちらの診療科でも診察は可能で、診療後、あるいは受診時に、適切な診療科のほうへ受診を勧められます。ですので、内科や外科で迷うのならば、両方がある医療機関を受診することをお勧めします(両方なくても他の医療機関を紹介してもらえます)。

医師でも判断が難しいことはあります

全身に広がる皮膚や筋肉、骨など、臓器と言われてもわかりにくいものや、専門医でも担当科を迷う場合はあります。そのようながんは、比較的頻度が少ないがん(希少がん)の場合が多いですので、ご自身での判断が難しければ、がん相談支援センターをご利用ください。がん相談支援センターは、当院のようながん診療連携拠点病院に必ず設置されており、無料で相談に応じてもらえます。がん相談支援センターでは、がん専門相談員や専従看護師がご相談に応じており、ご相談内容から判断して、適切な診療科をご紹介いたします。
診療科に関しては、簡単な内容なら予約窓口でもご提案できる場合もありますが、予約窓口の職員は医療職ではなく、あくまでも事務職員ですので、予約窓口でのお尋ねにつきましては、その点を十分ご承知おきのうえ、ご利用ください。
かかりつけ医の先生に、お尋ねになることもよい方法です。かかりつけの担当医が、そのがんの専門でなくとも、そのがんに関して、その医師に診てもらっていなくても、何かしらの助言をいただけるはずです。

『当院で』特定のがんを担当する診療科を探す目安

他施設での状況はさておき、おおむね当院では、以下のようにお考えいただいてよいと思われます。

まず、原則として、年齢で分けてお考え下さい。

15歳未満の場合は、原則として、小児科・小児外科で診療します。

15歳未満の場合は、原則として、小児科・小児外科で診療します。

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    15歳未満の小児では、他の医療機関などから受診する診療科を指定されていない限り、原則として、小児科で診療を受けてください。外科的な治療が必要と分かれば、小児外科が担当します。

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    15歳以上となっているが、小児期よりかかっているがんで、継続して診療を必要としているような場合は、小児科・小児外科で診療を続けることは可能です。かかりつけ医からの紹介状をお持ちになり、当院小児科・小児外科外来までお問い合わせください。

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    15歳未満でも、高度に専門性が高い治療が必要な場合は、小児科・小児外科以外の診療科で、診療を行う場合もあります。

15歳以上の場合は、がんが見つかっている臓器の場所から探すのが基本です。

がんのある臓器が、はっきりしている場合
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    特定の臓器ではなく、全身にわたって分布している細胞がもとになるがんの場合
    このような悪性腫瘍には、血液中を流れる細胞である白血球、骨髄、リンパ球やリンパ組織などを起源とする腫瘍があります。
    血液の細胞に起源がある:血液内科
    などが主なものです。ただし、がんが特定臓器から発生して、全身に広がっている(例えば、肺がんが他の臓器(骨とか肝臓とか)に転移している)ような場合は、下のケースに相当します。

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    がんが特定の単独臓器で大きくなっている場合は、該当する臓器を担当する診療科を探します。
    医学用語を使えば、『原発臓器*から診療科を探す』となります。診療科がわかったら、各診療科のページなどを参考に、目的とするがんを、その診療科が診療しているかどうか確認してみましょう。
    *がんの発生源と思われる病巣を原発巣(げんぱつそう)と呼び、原発巣がある臓器を原発臓器(げんぱつぞうき)と呼びます。
    臓器名は、かなり大雑把でかまいません。胃とか肺とかまでわかっていれば十分ですし、それ以上細かくても、かえって探しにくくなることがほとんどです。

    【例】
    頭の中:脳神経外科
    頭皮や顔面:皮膚科
    目や眼窩:眼科
    鼻・耳・喉(のど)*:耳鼻咽喉科
    *喉には咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)が含まれます。
    口・舌:歯科口腔外科
    首や甲状腺:耳鼻咽喉科
    脊髄:脳神経外科・整形外科
    背骨を含めた骨全般**:整形外科
    **肋骨・胸骨の場合は呼吸器外科でも大丈夫です。
    胸部(気管・肺・縦隔臓器・胸膜・神経など):呼吸器外科・呼吸器内科
    胸部(食道):消化器外科・消化器内科
    胸部(心臓・心膜):心臓血管外科
    胸部(乳房・脇):乳腺外科
    腹部(胃腸・肝胆膵脾・副腎・腹膜・腸間膜など):消化器外科:消化器内科
    腹部(腎臓など):泌尿器科
    骨盤(膀胱・尿管・前立腺・精巣):泌尿器科
    骨盤(子宮・膣・卵巣):婦人科
    骨盤(直腸・肛門):消化器外科・消化器内科
    全身の皮膚や皮下組織:皮膚科
    原発不明のがん:病巣がある場所を診る診療科
    どこのがんかよくわからない場合:総合診療科

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    臓器名ではなく、場所の名前しかわからないとき
    癌*の場合、一般には臓器名が接頭辞として付されています。悪性腫瘍の中には、臓器名でなく、場所の名前や組織名で呼ぶものがあり、縦隔腫瘍や、脂肪肉腫などが代表例です。前者は腫瘍の局在はわかっているが、発生している臓器が未確定のものの例で、後者は肉腫のように、臓器というより、全身に分布する特定の組織に発生しているために、臓器を特定しにくい例になります。
    このような場合でも、病変が見つかっている臓器をもとに、診療科を探すのが良いでしょう。同じ胚細胞性腫瘍でも、卵巣にあるなら婦人科で、胸部の縦隔にあるなら呼吸器外科と言うように、また、同じ脂肪肉腫でも皮下にあるなら皮膚科で、腹の中にある脂肪肉腫なら消化器外科に、と言ったようにです。
    *ここの『癌』は厳密な意味での「がん」で、癌腫と診断されるものを指します。
     癌腫は上皮性悪性腫瘍で定義される病変で、病理組織診断により下されるものです。非上皮性悪性腫瘍が肉腫です。

  4. 4

    複数の臓器にがんが見つかっている場合は、いくつかのパターン*が考えられますので、まず、主たる病巣(普通は大きい方)が存在する臓器の場所で診療科を探し、必要に応じて他の診療科への受診を紹介してもらうことが、良いと思われます。
    *それぞれの病巣が、各々独立した原発病巣である場合や、別の病気である場合、あるいはどれかが転移病巣であるかなどで、様々な組み合わせが考えられます。

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    希少がんの診療ができる診療科の目安
    当院では、希少がんを一括して診療対象とする総合的な外来や診療科はありません。個別の希少がんに対し、各領域の診療科が、一般外来と縦隔腫瘍専門外来などの一部専門外来で診療いたしております。
    希少がんの場合も、がん病巣が見つかっている臓器を基準に、診療科をお選びください。当該診療科で、一度診療したのち、適切な診療科や他の医療機関の受診を、ご紹介する場合もございます。

    【例】
    皮膚や皮下の腫瘍…皮膚科
    骨や筋肉の腫瘍…整形外科
    食道・胃腸や肝胆膵脾など消化器の腫瘍、他の診療科が扱わない腹部臓器の腫瘍…消化器外科・消化器内科
    肺や胸腺などの胸郭内臓器の腫瘍、他の診療科が扱わない胸部臓器の腫瘍…呼吸器外科・呼吸器内科
    乳房の腫瘍…乳腺外科
    精巣や前立腺、陰茎・腎・尿管・尿道などの腫瘍…泌尿器科
    子宮・膣・卵巣や胎盤などの腫瘍…婦人科
    脳・脊髄や神経の腫瘍…脳神経外科
    血液・骨髄やリンパ装置などの造血器の腫瘍…血液内科
    甲状腺や咽頭・喉頭などの頚部の腫瘍…耳鼻咽喉科
    口唇や舌・唾液腺など口腔内臓器の腫瘍…歯科口腔外科
    小児がん一般…小児科・小児外科
    小児血液がん…小児科

がん病巣は特定されていないが、疑わしい症状があるとき

一般に、何かの症状だけから、がんと確定できることはありません。まず、医師の診察を受け、症状が、本当にがんに起因しているかどうかを調べたほうがよいでしょう。その際、受診すべき診療科は、多くは上の例に準じて、選択すれば大丈夫ですが、がん以外の病気の可能性もありますから、胸腹部にある内臓に関しては、外科系診療科よりも、内科系診療科(総合診療科、消化器内科、呼吸器内科など)を受診されるのもよいでしょう。例えば、血痰なら呼吸器内科、吐血や血便なら消化器内科、血尿なら腎臓内科というようにです。
毎日、がんを心配しながら様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。

難しく考えないで、まず医師の診察を受けましょう

本稿では、細かいがんの種類は挙げませんでした。あまり、難しく考えずに、大体この対応表を目安に、まずは各診療科を受診してください。かかりつけ医があれば、かかりつけ医の医師にご相談されるのもよいと思います。
どのような場合でも、診療を担当した医師が、自分の専門でない場合、あるいは外科受診だが内科での診療(その逆も)が望ましいような場合は、その旨、ご説明いたしますし、必要があれば、適切な診療科で受診できるよう手配いたします。
かかりつけ医などの医療機関から、紹介状などを付託されておられるなら、当院では原則として指定された診療科が、最初の診療にあたります。
医師への相談に、気兼ねや躊躇、抵抗があるなら、当院のがん相談支援センターで専任の職員がご相談に応じますので、ご利用ください。

希少がん

希少がんって何ですか?

希少がんとは、文字通り、「発症頻度が低いがん」と言うことですが、学問上の定義は、「人口10万人にあたりの発症が6人未満のがん」ということになっています。この頻度が、多いのか少ないのか、少しわかりにくいかもしれません。

医学統計では、人口10万人あたりの発症者数の割合を、罹患率と呼びますが、全国集計データ*によれば、男性の乳がん(罹患率5.2人/10万人)や、女性の喉頭がん(0.7)などが、希少がんの定義に当たる10万人当たり6人未満の罹患率に該当します。

日本での発症頻度が高い大腸がんや肺がんの罹患率は、130-140前後(男性の場合)とされていますので、よく見聞きするこれらのがんに比べて、希少がんの頻度は数十分の一程度と考えてよさそうです**。
*全国がん登録罹患データによる2018年度
**罹患率は1年間での発症数をもとに計算します。ちなみに人口10万当たりの6人に相当する人数は、東京都1400万人として、84人です。と言っても、一般の方には、罹患率は実感しにくい数字でしょう。人口比でよく報道されたのが、新型コロナ陽性者数です。東京都での新型コロナの発症率などは1日や1週間などの期間で発表されていることが多いので、厳密には罹患率ではありませんが、新型コロナ感染陽性者が1日当たり80人を超えたのは、2020年3月末で、最初に東京オリ・パラの中止が検討され始めた第1波の初めごろです。10万当たり140となる2000人を超えたのは、2021年7月下旬で東京五輪が始まったころの第5波の初め頃の人数に当たります。コロナの例は、あくまで1日あたりですが、より実感できるかと思い、正しい比較ではありませんが、がんとして「希少」ということを感じていただけたらと思い、計算してみました。

ここで、例として乳がんや喉頭がんを挙げましたが、いずれのがんも、名前くらいは耳にしたことがあるかと思います。それは、いずれも性が違えば、比較的頻度が高い病気で、男女合わせた全体とすれば、数は決して稀ではないからでしょう。通常、男性乳がんも女性喉頭がんも、女性乳がん、男性喉頭がんと、基本的な治療に大きな違いはありません。

「希少がん」で注目すべき点は、一つ一つの希少がんの発症数が少ない一方で、希少がんといえるがんの種類が多数存在していることです。領域によっては、その分野の専門家でさえ、把握が難しいほどの種類があり、現在、希少がんに相当するがん・悪性新生物は、200種類程度ある*とされています。絶対数は少ないのに、種類はたくさんある。既存の治療法から最適な治療を探し出すのも、新しい治療法を開発するのも、途方もない時間を要することになります。
*分類方法にもよります。国が違うと、疾患の発症頻度は変わります。ここではヨーロッパでのデータ(希少がんの行動計画2030日本語版、2021)から引用しました。

希少がん治療の難しさ

がんという病気は、一種類ではなく、出自*や振る舞いによってまとめられ、名称をつけて分類されています。がん診療では、こうした分類に沿って診断をつけ、治療が行われます。治療は、過去に一定数以上が行われ、有効性と安全性を確認したものだけが使われることが原則です。

しかし、希少がんの治療では、数が少ないがゆえに、なかなかこの原則を適用できません。少ないデータを元に、治療を選択し、治療に行き詰まったら、類縁の病気から治療法を流用したり、基礎医学的な視点から治療法を探るなど、いわば手探り・手作りで治療法を探し出しているというのが現実です。希少がんの場合、学会や論文などで報告されている治療法であっても、十分な検証が難しいがゆえに、保険診療の適応となっていないことも多いです。
*がん細胞は、もともとは自分自身の細胞です。体には様々な機能を持った細胞があり、がん細胞も元となっている細胞の性格や形状を反映することが多く、がんの分類の基準となります。

希少がんの診断のむずかしさ

がんを診断するとは、がん病巣がそこにあるという、存在を確認することに加えて、どのような種類のがんであるかを判断することが重要です。希少がんのほとんどは、病巣の大きさまで極小ということではありませんので、病巣の存在自体は、CTや内視鏡その他検査手法の進歩で、他の一般的ながんと同じように発見できるようになりましたが、診断上、問題となることが多いのは、がんの「種類」の診断です。これは、基本的に、病理医による組織病理検査*によって下されるものです。病理医にとっても、稀な病気を見つけるには、多くの経験に加えて最新の知識が必要ですし、見た病巣を稀な病気と判定するのは、ある意味「勇気」が必要です**。希少がんの病理診断は、容易ではありません。
*病巣の一部または全部を、顕微鏡を通して観察し、細胞や組織の種類を判定する検査
**法律家によって法の解釈が違うことがあるように、病理医によって病理診断が異なることがあります。特に希少がんのような病気では、診断の決め手となる所見が、あいまいである場合も少なくなく、複数の病理医の間の、議論で診断が決まることや、他施設の病理医の意見を尋ねてみるような場合もあります。

希少がん診療の現状

希少がんといっても、世界で何例目というような、専門家でも誰も診たことがない、というようながんを集めたものではありません。発症数が少ないとはいえ、該当領域の専門医から見れば、1年に何件か診療しているものがほとんどで、専門医には、その診断・治療法など十分理解・認識されている病気がほとんどです。

もちろん、ポピュラーながんに比べれば、治療経験が少ないことは確かですが、それは日本中どこへ行っても同じです。日本の医療制度では、特定の病気の人だけ、特定の病院に集めて、特定の医師が治療することなど、現実には極めて困難です。

ほとんどの希少がんに関して、特定の一つのがんに特化した専門医を探すことは、なかなか難しいでしょう*。現実的な解決策としては、ある一定程度のがん診療の経験がある医師や施設で治療を受けることになります。診療のガイドラインがあったとしても、医学的に十分な検証を得ていない場合もあり、信頼できる担当医の下、随時病状に合わせて治療方針を検討していくことが、現実的であり、現状です。
*基礎医学的な研究をしている専門家はいる場合がありますが、治療の専門家が育たないのが、希少がん診療の最大の課題です。

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