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呼吸器外科(診療方針(縦隔疾患))

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呼吸器外科

診療方針~縦隔疾患

以下に縦隔の疾患について、当科の方針や治療の特徴などお示しします。

縦隔手術の特徴

【多様な疾患を含む割に、診断技術が遅れており、診断のための手術も多い領域です】

『縦隔(じゅうかく、【英】mediastinum)』は右肺と左肺の間の領域を指す 場所の名前で、臓器の名前ではありません。縦隔には首から胸、腹を繋ぐ臓器の通り道で、心臓をはじめ多くの重要臓器が存在します。外界とのつながりがなく、いくつかの骨に囲まれて、病巣があっても容易に到達できない場所です。画像診断で、『どの場所に、どのような形状のものがあるか』は分かっても、体外から直接病巣を見たり採取したりできないため、『何ができているか、どんな病気か』という質的診断が困難な場合が多い領域です。

縦隔に発生する疾患は、発生の母地となっている臓器(原発臓器と言います)と発生した病気の種類の組み合わせで多種多様なものがあります。珍しい病気も多く、とても一人の外科医ですべての疾患を経験できる数ではありません。

疾患の種類が多く、各々の患者数が少ないと、統一的な治療法を科学的に確立することは難しく、治療法が確定しているのは、ごくわずかな疾患だけです。

治療方針の決定のためには、『どの臓器に発生した、どんなタイプの病変か』を明らかにしなければなりませんが、縦隔疾患には、CTやMRI検査しか有効な検査法がないのが医療の現状で、診断確定のために病巣を摘出してみるという手術も行われています。


代表的な縦隔の疾患

日頃の診療で、よく見られる縦隔疾患は、自己細胞が変質・増殖して塊状の病巣となる腫瘍性疾患と、内部に液性の物質を満たして大きくなる嚢胞性疾患です。呼吸器外科ではこの他に、重症筋無力症という難病に対して、縦隔にある胸腺(免疫担当臓器と言われる)を摘出する手術が、縦隔の手術として行われることが多い疾患になります。

 【縦隔の腫瘍性疾患の場合】

『縦隔腫瘍』という診断名は、かなり大雑把な表現で、この診断名では治療方針を定めることはできません(どのような病気があるかは、当科HPの取り扱い疾患のページをご参照ください)が、一部の縦隔腫瘍を除いて、摘出術の対象となることがほとんどです。

腫瘍性疾患の場合、手術の第一目標は「腫瘍を完全に摘出すること」です。このとき、腫瘍の発生した組織を一部あるいは全部一緒に取ることが多いです。例えば、胸腺の腫瘍では、腫瘍だけでなく腫瘍になっていない胸腺も一部併せて取るというようなことになります。

<良性の縦隔腫瘍>

良性の場合は、胸腔鏡手術による切除が多く行われております。胸腔鏡手術の宿命として、腫瘍の大きさが5センチ以上あると、体外へ引き出すことが困難となります。胸腔鏡手術での摘出をご希望なら、あまり病巣が大きくならないうちに(可能なら2~3センチの大きさの段階までに)、摘出されるようお勧めします。

<悪性の縦隔腫瘍>

悪性の場合でも、血管や胸壁の周辺臓器の合併切除が必要ない場合は、胸腔鏡での手術が可能であることが多いです。

一部の縦隔腫瘍では、手術ではなく、抗がん剤治療が行われますので、その場合は呼吸器内科での治療となることがあります。

縦隔腫瘍は、時に巨大化して小児の頭大ほどになったり、進行して周囲の臓器を壊しながら広がったりすることがあります。こうした場合でも、縦隔腫瘍では、合併切除を含めた外科切除が有効なことがあり、あきらめずに手術を検討する価値があります。特に胸腺腫では、完全に摘出できなくても、たとえ不完全な切除であっても、腫瘍をできる限り摘出することによって、一定の治療効果を上げることができます。

悪性縦隔腫瘍の手術は、肺がん手術と違い、一定の決まった手法では、対応できません。特に進行例では、一例一例全部違う手術になると言っても過言ではありません。胸部だけでなく、縦隔に繋がる頸部や腹部の知識や手術経験、血管や骨格の切除や再建などの技術も駆使する必要があります。当科では、胸腔鏡や種々の開胸方法だけでなく、合併切除や再建法など、様々な技術・手法を駆使し、手術方法を検討し、可能な限り多くの手術に対応できるよう準備しております。

<術後入院期間の見込み>

縦隔腫瘍では、合併切除や追加の治療が必要なければ、胸腔鏡手術の場合、術後3-4日で退院されています。開胸手術では、合併切除を要する大きな手術である場合がほとんどですが、術後5-10日程度で退院されるケースが多いです。


 【縦隔の嚢胞性疾患の場合】

病変の大半を水分で満たすような病変を嚢胞と言います。近年CT検診の普及で発見機会が増えています。

縦隔の嚢胞性疾患は、経過観察でも問題ないことが多いですが、大きくて、あるいは大きくなってきて、周辺の大切な血管や神経を圧迫して、不快な症状を引き起こすケースも見られます。また、比較的小さくても、発生する場所が骨格に囲まれた狭い場所であった場合には、圧排による症状や所見を見せることがあります。稀に、病巣が画像では嚢胞のように見えたけれども、切除してみると腫瘍であったということもあり、注意が必要です。確実に診断を確定するためには、切除しかなく(皮膚の上から、針を使って嚢胞内容物を取っても、診断がつかないことが多いです)、経過観察が不安な場合は、切除する方が良いでしょう。

もし、『どうせ、そのうち切除する』と決めているなら、外科医としては、病巣が小さいうちに切除することをお勧めします。小さい嚢胞は簡単に胸腔鏡で切除できますが、大きくなってしまうと、取る最中に破れて中身が出てしまったり、病巣が完全に取れなかったりと、結構面倒です。炎症を起こすと、周囲の臓器までキズを入れてしまう危険性も増えます。当科としては、開胸手術で嚢胞性疾患を取ることはお勧めしていません。

<術後入院期間の見込み>

多くの縦隔の嚢胞性病変は胸腔鏡で切除でき、術後2-3日で退院されています。


 【重症筋無力症の場合】

眼瞼下垂(まぶたが下がってしまう症状)や夕方になると筋力が低下することが特徴となる重症筋無力症では、胸腺腫の有無にかかわらず、胸腔鏡での拡大胸腺摘出術を実施しております。

重症筋無力症手術を胸腔鏡で行うことは、体格や特定の部位では、肺癌手術よりも難しいことがあり、なかなか胸腔鏡手術が認められなかった領域ですが、私どもは、多くの改良を加えて、開胸手術と同等の術式が可能となっております。

重症筋無力症では胸腺腫が良く合併しています。筋無力症状ではなく、胸腺腫と言う腫瘍が進行していて、周辺臓器の合併切除が必要になっている場合は、開胸(胸骨縦切開)での手術となることが多いです。

重症筋無力症手術は、手術前後で特殊な管理が必要で、手術の是非も、年々変わっております。全国的に見て、管理に慣れている呼吸器外科医は限られておりますが、当科スタッフは多くの症例を胸腔鏡で実施し、十分な経験を積んでおりますのでご安心ください。

術前術後の病状のコントロールは当院脳神経内科と連携しながら実施しております。

<術後入院期間の見込み>

重症筋無力症の程度により大きく異なりますが、重症筋無力症が軽症であって、経過が良好である場合、胸腔鏡手術では4-5日、開胸手術でも5-7日です。重症筋無力症に対する手術の効果は、術後即座には現れませんので、術後は引き続き脳神経内科で継続治療となることがほとんどです(薬が減量になったり、内服治療が不要になることが手術の目標です)。