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呼吸器外科(呼吸器外科診療Q&A(自然気胸 病気と生活篇))

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呼吸器外科

呼吸器外科診療Q&A~自然気胸 病気と生活篇

ここでは自然気胸に関して、過去に自然気胸にかかったことがある方や、今かかってしまっている方からよく尋ねられる、特に生活上の注意点に関する質問と回答を集めました。自然気胸の基本知識や外科治療に関しては別項をご覧ください。特に「気胸の基本知識」の項を、事前にご一読いただければ、より分かりやすいかと思います。

自然気胸後の生活に関する質問

Q)何を食べても、大丈夫ですか?

A)気胸と食べ物にはまったく因果関係はありません。特別な配慮は必要ありません。

Q)タバコをすっても、大丈夫ですか?

A)絶対にいけません。例え、気胸再発に影響しないとしても、外科治療や気胸以外の疾患へ及ぼす悪影響は計り知れません。

若年者では、喫煙総量そのものが多くなくても、肺に大きな影響を及ぼすと考えられており、喫煙と原発性自然気胸に間には何らかの関係があると言う指摘も、古くからありますが、この問題について、統計的、科学的な裏づけは、現時点ではありません。原発性自然気胸の場合、10歳代後半から20歳代のうちに発症することが多く、喫煙とは全く関係ない人は多いです。喫煙が気胸を起こしやすくなるかどうかは現状不明で、仮に影響があるにしても薄いと思われます。

自然気胸とは関係なく、喫煙者では、様々な術後合併症を高率に発症します。当科では喫煙中の人、禁煙できていない人には手術は行っていません。自然気胸が治ったとしても、今後は自然気胸以外の病気で、いつか病院で治療を受けることになるでしょう。その時のためにも、禁煙を続けましょう。喫煙姿がカッコいいなど、前世紀の遺物、くだらない言い分です。

喫煙を続けていると、肺には回復不能な障害が生じ、ほぼ間違いなく、肺がスカスカになってしまう別の肺の病気(肺気腫といいます)になります。肺気腫は、難治性の続発性自然気胸を起こす代表的疾患です。喫煙は、続発性自然気胸の遠因になると言ってよいでしょう。肺気腫になると、必ず気胸になるということではありませんが、徐々に進行して、最後は酸素が取り込めなくなって、常時、酸素投与を必要とする呼吸不全になってしまう恐ろしい病気です。肺気腫があると、肺以外の病気の治療の際にも、悪い影響が出る場合があります。残った肺を大切にして下さい。

喫煙はこの機会に止めることです。タバコを吸っている人がいたら、(ケンカにならない程度に)注意してあげてください。

Q)気胸は、遺伝しますか?

A)一部の特殊な病気を除き、遺伝しないと考えられています。

特定の遺伝子が、気胸の発症に関与しているとのデータはありません。ただ、親兄弟が気胸で、子も気胸と言うように、特定の家族の中に、何人も気胸を経験した人がいることはあり、「家族性気胸」と言います。気胸の発症に、体格の関与が強く示唆されていることから、体格の遺伝が、気胸が多い家族が存在する要因になっていると考えられていますが、確かではありません。

Q)再発しないように、気を付けることはありますか?

A)特別なことをする必要はありません。努力して再発を減らすことはできません。

何かを鍛えたり、何かを飲んだり食べたりすることで、気胸の発生を予防することはできません。ただ、喫煙はしないでください。普段は再発のことを意識せず、いつも通りの生活をしてください。

Q)再発したかも?

A)慌てず、近くの医療機関を受診して下さい。急速に呼吸が苦しくなって行く場合や、脈に異常があるような場合は、救急要請してかまいません。

過去に、気胸の治療を受けたことがあり、気胸の再発を心配していることを、担当医や救急隊員に伝えてください。遠方に出かけた先で症状があるなら、飛行機での移動は避け、まず近隣で医療機関を探し、レントゲン検査を受けましょう。国内の医療機関で、少なくとも内科か外科のクリニックや病院なら、大概レントゲン撮影できます。とりあえず、診断ができれば、その医療機関が初期治療してくれるか、治療できる近隣の病院へ紹介してくれるはずです。初期治療ができれば、多くの場合、居住地に戻ってその後の治療を受けることが可能です。

Q)学校に行っても大丈夫ですか?

A)今、気胸になっているなら、自己判断ではなく、まず気胸に詳しい医師に相談して下さい。登校できる場合もありますが、無理せず治療を優先させましょう。今、気胸になっていなければ、問題ありません。

症状がないから、あるいは少ないからと言っても、気胸の状態で通学することは、誰にとっても好ましい行動ではありません。無理して登校し、校内で病状が悪化してしまえば、運よく下校までこぎつけたとしても、多くの人たちに迷惑をかけてしまうことになるでしょう。運にかけるような行動を、医師としてお勧めできるはずがありません。どうしても登校が必要なら、診察を受けている医師に相談し、登校や通学の条件を確認したうえで、さらに学校の先生(教員)にも、必ず病状を告げ、了承を得ましょう。外来通院用の治療装置もありますが、装置を自己管理しなければならず、当科としては、そうした装置をつけてまで通学することはお勧めしません。

Q)気胸になったまま、学校の試験は受けられますか?

A)受験が許可されることもあるようですが、再試験や追試験なども検討してください。

胸にチューブが入った状態であれば、試験会場に行くためには、小型の気胸治療装置を装着する必要がありますが、この装置で空気漏れがコントロールできる範囲であれば、試験場へ行くことは可能です。このような装置を付けた状態でも、受験を許可されることはありますので、諦めずに受験可能かどうか、受験のために必要な条件は何か、事前に試験を主催する学校や団体に確認してください。大学入試センター試験では、手続きを踏めば受験できます。音を出さない治療装置であることなどの条件が付くことがあります。

多くの試験では、病気にかかって急に受験できなくなった受験生や生徒に対し、再試験などの救済処置をとっています。できれば無理をせず、再試験などを検討した方がいいかもしれません。代えがたい入学試験をしばらく先に控え、入試直前に気胸が再発することを心配しているなら、受験準備として、早めに手術を検討してみるのも一策でしょう。

Q)体育や運動をしても、大丈夫ですか?

A)現在、肺の虚脱が改善していれば大丈夫です。ただ、直近に気胸を発症していたのなら、しばらく再発の確率が高いので、症状が出たら、直ちに運動は中止し、医療機関を受診しましょう。肺の虚脱が改善していない時は、体育や運動は控えるべきでしょう。

肺の虚脱が改善していない時は、空気漏れが止まっていない可能性があり、運動が病状を悪くする可能性は高いので、運動などは勧められません。早く運動を再開したい気持ちもよくわかりますが、早く治したほうが、結局は早く復帰できます。無理は禁物です。運動することで、気胸が再発しやすくなることはないと、考えられていますので、肺の虚脱が改善していれば、運動しても良いと思われます。ただ、肺の虚脱が改善したあと、どの程度の運動が、どれくらいの期間はできないのか、詳しく調べられた検証データはなく、多くは担当医の(ある意味適当な)判断にゆだねられているのが現状です。残念ながら再発となったら、次はしっかり治してから、復学しましょう。

Q)今後、運動部は辞めた方がいいですか?

A)過去に気胸であった事を理由に、運動を回避する必要はありません。気胸を経験しても、その後プロとして活躍しているスポーツ選手もいます。

気胸に罹ったからと言って、部活まで辞める必要はないでしょう。大きく声や息を吐き出すような、例えば武道の気合や、吹奏楽の演奏で気胸を起こす人も、もちろんいますが、どちらかと言えば、気胸を起こすのは、軽作業中の時が多く、寝ている間に発症する人もいます。運動する・しないに関わらず気胸は発症すると考えられており、今日では、運動することでは、気胸の再発(肺が破れること)は増えないと考えられています。気胸になることを恐れて運動を回避し、安静を続けて暮らすくらいなら、次に再発したら、運動しても大丈夫なように、今後再発しにくくなるような(例えば手術のような)治療を受けておくことの方が、活動量が多くなりがちな若い人には、望ましいかもしれません。部活は良いと思いますが、特殊な環境で働く、一部の仕事には就職できない可能性はありますので、そのことも忘れないでください。

Q)気胸になったら、会社は休んだ方が良いですか?

A)通院治療が可能であっても、気胸のまま就業することは望ましくありません。原則として、休むことをお勧めします。

急に仕事が休めないことはよくわかりますが、動くと息切れするような人が職場にいても、会社は困りますし、何かあっても会社は責任取れません。学校の先生が見守ってくれている学生とは違います。早く治療して、早く職場復帰することの方が、誰にとっても良い方策のはずです。

Q)就職や仕事に、影響はありますか?

A)特殊環境で働く業種・業務には、就業できないことがあります。

高気圧作業安全衛生規則という省令で、肺気腫その他の呼吸器系の疾病者が高気圧業務への就業することは禁じられています。そのため、自然気胸罹患者には、気圧変動を伴う特殊環境下での業務には就業させていない職場(職種)があります。事前によく調べておく方が良いでしょう。潜水や飛行と言った高度上空や深水での業種だけでなく、土木建設業でも、地下やトンネル工事などでは、高圧環境下での作業(ケーソン、潜函作業と呼ばれる)を行うこともあるようです。潜水士試験は学科のみで受験可能らしいですが、合格しても実際の潜水作業には従事できないことが考えられます。パイロットや自衛隊などの職種では、自然気胸罹患者には、身体検査の段階で採用制限が設けられています。ただ、航空法の身体検査基準では、気胸の手術をして、その後治癒しているとの医師の判定があれば、身体検査で合格を得ることができるとされていますし、自衛官の身体検査基準では、肺の手術を受けた人は、通常不合格ですが、自然気胸に限っては、手術後治癒していると判断されるなら、大丈夫のようです。具体的なことは医療機関ではなく、希望する就職先に、直接確認を取る方が良いでしょう。

Q)台風や低気圧が来たら、危険ですか?

A)心配には及びません。日々の気圧変化と気胸の発症の関係についてはよくわかっていません。

日々変わる気圧変化は、強い台風(台風の強さは風速で決まるものらしいですが、ここでは気圧に注目して下さい)と言われるものでも950hPa(ヘクトパスカル)、換算すれば、およそ0.9気圧。大気圧1気圧として10%程度の変化になります。この気圧変動が、気胸の発症に影響するかどうかは、研究者の間でも議論がありますが、関連を証明できていません。気胸診療担当者の間では、特定の時期(1~2週間くらいの期間)に気胸患者が増えるという通説があり、筆者もそう感じることがありますが、科学的な証明はなく、年間を通すと、季節による患者数の変動もありません。

Q)過去に気胸になったことがありますが、旅行しても大丈夫ですか?

A)旅行自体が気胸の再発を増やすことはありませんが、ダイビングや飛行機に乗る場合は注意が必要です。

気胸が手術で完全に治っていれば、旅行しても大丈夫です。しかし、気胸を疑わせるような症状がある場合は、必ず医療機関で気胸になっていないか確認して、旅行に出かけましょう。特に旅行で飛行機に乗ったり、水中を潜ったりするときは、注意が必要です。気胸となっている時に、航空機やスキューバダイビングなど気圧の変動が激しい環境に入った場合、(理論的には)気胸は悪化します。下の質問と回答も参考にして下さい。具合が悪い時に、いつでも医療機関を受診できるような旅行(陸上を移動するだけの旅行)であれば、多くの場合、問題はないと思われます。

Q)気胸の二次治療のため、他院に移ることは可能ですか?

A)気胸が改善していれば、陸上移動できる範囲ならば可能です。理論上、高地への短時間での移動は、陸上移動でも気胸を悪くする可能性がありますが、実際に問題となるようなことは(国内なら)少ないです。航空機を利用しなければならない場合は、現実問題としてできません(搭乗に関する質問と回答も参考にして下さい)。すでに胸腔ドレナージが行われているような場合は、理論的にはどこへでも移動可能ですが、現実には救急車で移動できる程度の範囲になると思います。

生活圏外の出先で気胸となり、取り急ぎ近隣の医療機関で初期治療を受けることは、気胸治療ではよくあることです。二次治療を他院で受けたいという希望も多いご希望の一つですし、ほとんどの医療機関が対応してくれるはずです。治療を希望する地域や医療機関が具体的にあれば、現在治療中の医療機関の担当医に相談されるとよいでしょう。医療機関同士で連絡を取り合ってくれます。必要な情報を用意してもらえますので、持参して下さい。

気胸腔と外気が連絡できるような治療(継続的なドレナージ)が、すでに実施されている状態なら、どこへ移動しても、移動自体で気胸が悪化する可能性はなく、問題ないのですが、移動のあいだ治療装置が正常に作動しているかどうかを管理することができませんので、遠方への移動は避けたほうがよいかもしれません。担当の医師とよくご相談ください。

Q)他院に移るときの移動手段は、何がよいですか?

A)気胸の状態によって異なりますので、担当医と相談してください。(上の問答も参考にしてください)

気胸が改善しているか、肺の虚脱が軽度で安定していれば、乗用車でも構いません。自分で運転してはいけません。公共交通機関なら、途中で何かあった時に備え、バスよりも、タクシーのほうがよいでしょう。気胸の治療装置がついているような場合は、治療中の病院が用意してくれる救急車などでの移動になることも多いです。気胸の状態が不安定の場合は、医師か看護師の同行が望ましいです。

Q)気胸が改善せず、帰郷して二次治療を受けたいのですが可能ですか?

A)空気漏れに対する小型の治療装置(ドレナージ)を装着できる状態なら、多くの場合移動可能です。ただし、移動行程中の事故やトラブルに対する保証はできかねます。

出張先や下宿先、旅行先などで、気胸となる人は少なくないです。治療は、気心知れた地元の病院という希望も多いです。気胸発症時に実施された排気の治療装置が外れず、移動が制限されていても、多くの場合、通院用に開発されている小型の治療装置に取り換えることで帰省はできます。非常に空気漏れが多く、コントロールができていないような場合は、遠方への移動ができないこともあります。

移動するにしても、その間に、治療装置が機能不全になった場合は危険です。誰かの責任問題になることは、だれも望んでいないはずです。可能なら、気胸が一旦治ったあとに移動して、地元に戻ってから手術の相談などをすることが望ましいでしょう。

Q)気胸にかかったら、飛行機に乗れないのですか?

A)搭乗時点で、気胸の可能性がある、あるいは気胸の状態である人は飛行機に乗ることはできません。気胸治療直後で、まだ安定していないと思われる(まだ再発の可能性が充分高い期間中である)場合は、搭乗は控えたほうがよいでしょう。過去に気胸にかかったことがあるにしても、搭乗時に気胸が完治し安定しているなら、飛行機に乗ることは問題ないと思われます。

心配なのは、空港を飛び立ったあと、機内で気胸になってしまったときと、気胸になっていることに気づかずに、飛行機に搭乗してしまった場合です。難しい理屈はともかく、気胸となった状態で、飛行機が上昇すれば、機内の圧力が下がるにつれ、肺は萎んでいき、気胸は悪くなります。殆どの気胸は、発生して直ちに生命を危機に陥れるようなことは、少ないと思いますが、それでも、中には急速に気胸が進行・悪化してしまうことも、考えられないわけではありません。国内線ならまだしも、国際線でそのような状況になった場合、短時間のうちに緊急着陸できるとも限りません。機内には、緊急用の酸素ぐらいはあっても、気胸に対応できる緊急医療機器や要員はいないと考えるべきです。例え酸素ボンベがあったにせよ、悪化する気胸に対して、酸素投与は一時しのぎにしかならず、肺の虚脱進行を防ぐ治療が必要です。

気胸に限らず、肺に疾患がある方は、利用する航空会社に、搭乗の数日前までに一度お問い合わせされた方がいいです。会社ごとに規定があり、搭乗可能かどうか、搭乗するならどのような手続きが必要かなど教えてもらえます。いきなり酸素ボンベや車椅子で空港に行っても、飛行機には乗せてもらえません。

Q)気胸のあと、どのくらいの期間、飛行機に乗れないのですか?

A)明確な基準はありません。航空各社ごとに独自で期間を設定していることがほとんどです。

米国の航空医学の学会や英国胸部疾患学会のガイドラインでは、気胸が治癒(ちゆ、治ること)して3週間は飛行機に乗らないよう勧告しています。またこれらのガイドラインでは、気胸を発症する恐れのある人は、手術など再発の少ない治療を受けたのち、飛行機に乗るべきだとしています。ただし、この推奨については、決して科学的根拠に基づくものではないとも併記しており、現状ではどのようにするのが一番良いか、よくわかっていません。航空各社は、気胸後の搭乗について、独自に基準を決めています。搭乗可能かどうか、搭乗するならどのような手続きが必要かなど教えてもらえます。利用する航空会社に、搭乗の数日前までに一度お問い合わせ下さい。

Q)飛行機に乗ると、気胸を起こしやすいのですか?

A)航空機への搭乗は、気胸発症の誘因にはならないか、なるとしても可能性としては低いと思われます。可能性は低いとしても、機上で一旦気胸が発症した場合の危険性については、十分承知しておいて下さい。

実際に機内で気胸になった人の報告はありますが、飛行による影響かどうかは分かりません。ヨーロッパにおける調査では、旅客機運行中に起こった救急患者のうち、気胸の事例は、実際には多くないようです。また、軍隊のパイロットに気胸の発生が特別多いことはない、ということは、過去の研究で分かっています。旅客機内の気圧変動(20%程度の変動があります)自体では、新たに気胸を発生させる(肺に穴が開く)ことはないと考えられています。

Q)重病者だって渡航できるのに、飛行機って誰でも乗れるのではないのですか?

A)安全運航のための厳しい規定があり、切符があれば誰でもいつでも搭乗できるのではありません。

通常の旅客機で重傷者や重病人を運ぶためには、機内の設備変更だけでなく、その他の必要器材や要員を、事前に空港などにも配置しておく必要があり、どこにでも常備常設されているのではありません。重病者を航空機で搬送するのは、部外者が思うほど容易には、できないようです。

近年、機内持ち込みの荷物や足元の荷物の位置や固定など、乗務員から厳しく注意された経験をお持ちの方も多くなっているのではないでしょうか。手荷物が確実に固定され、乗客は既定のシートにベルトをして座っていなければ、離陸すら許されません。旅客機のシートは、重量やバランスも考慮されたうえで構造計算され、相当の衝撃に耐えられるよう機体にしっかり備え付けられたものです。航空機の運行には、国内・国際の大変厳格な規則があり、個人用の患者搬送用ベッドや車椅子などを、客室内に持ち込むことはできません。車いすなどを機内に固定する方法は、機種や客席のクラスによって異なります。マニュアルに沿って、特定の客席をいくつか取り外し、そこへ専用の接続器具を使って専用の簡易ベッドや車いすを固定し、使用します。

酸素ボンベが必要な場合は、航空機ごとに設置できるボンベが既定されています。気体が揺れるたびに、酸素ボンベがゴロゴロ動いていては、とても安心して旅行などできません。ボンベに詰めておく酸素の使用量(流量と飛行時間に関係する)なども、事前に届け出て、必要量を充填しておかなければ、途中で足りないということもあり得ます。旅客用航空機に常設されている緊急用酸素投与装置(上から落ちてくる酸素マスク)は、航空機事故に備えて装備されているもので、客席ごとに酸素が投与できる構造ではありません。乗客全員が使用すると1時間も持たないらしいです(緊急時はその間に低空まで降下するとか)。

気圧が低い上空を飛ぶ航空機内では、機内の気圧は加圧されていますが、それでも地上よりは2割ほど低く、酸素濃度も地上より薄く(地上の80%くらい)なっています。健常者でも、機内では薄い酸素を吸っていることになり、実際に測定すると、体内の酸素濃度も下がっているそうです。地上にいても、酸素を余分に必要とするような人は注意が必要です。

Q)飛行機内で気胸になった場合、気胸治療用の救急器具はあるのですか?

A)知る限りでは、気胸治療用の機器・器具はないようです。機内には、救急セットが必ず装備され、定期的に点検や訓練が実施されていますが、あくまで救急セットです。

機内には、備え付けと取り扱い訓練が義務付けられている緊急用医療品が常備されています。中には、医師が使用することを前提にした薬品や診療道具もあるようです。しかし、医師として、これらでできることは限られています。特に気胸に関してはそうです。たとえ機内に医療関係者が乗り合わせ、対応してくれたとしても、必要にも満たない救急セットで、的確に対応してもらえる可能性は低いと覚悟しておくべきでしょう。針一本で、あるいは点滴チューブや滅菌の水があれば、簡易の胸腔ドレナージシステムを作ることはできますが、居合わせた医療関係者に、機内での気胸の緊急治療を求めるのは無理でしょう。

Q)飛行機内で気胸になったと思ったら、どうすればよいですか?

A)機内で気胸と思わせる症状で息苦しくなったら、「(左右も含めて)気胸を起こしたかも」と客室乗務員に早めに伝えましょう。あとは運次第です。

苦しいのをガマンして意識を失ってしまったら、機上で気胸と診断してもらえる確率は、ほぼゼロになるかもしれません。意識を失う前に、必要な情報を誰かに伝えましょう。とても勇気のある医師が居合わせて、一か八かの処置をしてくれ、上手くいけばよいのですが、失敗したら、逆に病状を悪化させてしまうことにもなりかねません。海外では、医師が善意で行った機内での医療行為に対してさえ、医師の責任を追及した裁判例がでており、いまどき「機内にドクターは?」などと言われても、なかなか手を上げにくい状況になっていることも知っておいてください。機内での治療は難しいと覚悟しておいてください。一番良いのは、早く地上に降りて医療機関に搬送してもらうことです。機内から連絡があれば、空港には救急車が来てくれます。診療所がある空港もありますが、あったとしても診療所は救急病院ではありません。多くを期待しない方がいいです。すぐ着陸できないまでも、飛行高度を下げてもらえるなら、ひょっとしたら少し楽になる可能性はあります。酸素投与は無駄ではありませんが、根本的な解決にはなりません。多弁や、不要に呼吸を促迫してしまうと、却って気胸が悪化する可能性があります。気胸の危険性が高いうちは、飛行機に乗らずに済むなら、乗らないことです。

Q)気胸にかかったら、登山はできませんか?

A)一般的な歩くだけのハイキング程度の登山なら、登山時点で気胸になっていなければ、問題ありません。途中で気胸になったかもと感じた場合は、直ちに引き返せるようにしておくことが肝要です。

気圧が低いという点で、登山は飛行機での移動と同じですが、登山の場合、外気圧の変化が数時間単位と比較的緩やかで、急激な変化は少ない点で異なります。そもそも気胸があれば、登山中に息苦しさが出てくるはずなので、登山自体を途中で断念することになるでしょう。我慢できなくなるまで登ってはいけません。少しでも兆候を感じたら、下山することです。途中で下山できないような登山は、当分の間、止めておきましょう。頂上付近で気胸になったら、症状が許せるようなら、ゆっくり下山するのが良いと思われます。それすら困難であれば、救急要請した方が良いでしょう。救急車が到着できないところでも、ヘリコプターがお迎えに来てくれるかもしれません。もちろん費用はかかるかもしれませんし、天候によっては救急隊が到着不能となるかもしれません。気胸にかかって間もない時期は、まだ再発の可能性があります。無理は禁物です。高山病になるような標高の高い山は特に避けるべきです。

ここで想定しているのは、休日などに登山道を歩いて上るような登山で、すぐに下山が可能であるような場合です。それ以上の本格的登山、ヘリコプターやロープウエーで一気に高地に移動するような登山を行うような方は、各医療機関で個別にお尋ねください。

Q)気胸になると、ダイビングはできないのですか?

A)スクーバダイビングは、許可されないことがほとんどです。容易に、しかも短時間に、加圧・減圧環境となる潜水は、気胸になったことがある方には、大変危険だと覚えておいてください。

水中で高圧空気を吸うスクーバダイビングで、潜水中に気胸を起こすと浮上が困難になります。無理をして浮上すれば、大変危険な状態になりかねません。胸腔に漏れた空気と、肺に入ってくる空気の圧力差で、潜行時には問題がなくても、浮上時には気胸は悪化します。

また、浮上中に息を止めてしまうと、肺が地上での容積より膨らんだ状態になってしまい、気胸を発生しやすい状態になります。浮上中に発生した気胸を、減圧気胸と呼ぶ人もいます。膨張する肺の中の空気は、気胸を起こすだけでなく、時に血液中に(溶けるのではなく気泡のまま)入って、血管を詰まらせてしまう空気塞栓(エアーエンボリズムair embolism)という病態を引き起こすことさえあります。空気で血管が詰まった臓器によって、さまざまな症状があり、死に至ることもあり得ます。血液中の溶解窒素が気化する減圧症とは違います。

ダイビング中に気胸となって、浮上途中で呼吸困難となったり、意識を失ったりするような事態になれば、命にかかわる状況です。急速な浮上は、特に危険で、運よく浮上できても、まだ船上です。陸上までの移動だけでなく、ビーチに救急車やヘリコプターが到着し、気胸治療を開始できる医療機関まで、どれほど時間がかかるかわかりません。リスクを冒してまでダイビングをすることは、誰からも賛同されません。一緒に潜る人(バディやガイド、インストラクター)にも、リスクを負わせることになります。残念ながら近年になっても、ダイビング中の気胸発症事例の報告はあります。それまで気胸とは無縁であった人ならまだしも、気胸を経験した人が、気胸のことを隠してダイビングをし、このような事態を起こすようなことがあっては、絶対にいけません。誘われても「ドクターストップだから」と断るようにしましょう。ちなみに、気胸とは関係のない胸部の手術後や、気管支喘息も同様に危険とされていますので、十分ご注意ください。

スクーバーダイバーのためのメディカルチェック・ガイドライン(日本語版RSTC(Recreational Scuba Training Council))には、自然気胸は危険性が高い生命の危険を起こしうる疾患としている一方で、大きなケガや事故で起こす外傷性気胸ならば、完治によりダイビングの危険はなくなるとも記述されています。ダイビングに関しては、自然気胸の方はもちろん、過去に気胸がなかったとしても、肺にブラがあるような方では、注意が必要です。

法律上の規定はありませんが、国内外を問わず、スクーバダイビングを行う場合はCカードと言う認定証の提示と、ダイビングサービスを提供する業者に、気胸などの疾患の有無の申告を含む同意書を提出する必要があります。Cカードの認定基準は様々ですが、ほとんどの機関が安全を考慮して気胸の診断がある人には認定を行わないようですし、同様の理由で気胸を患ったことのある方には、ダイビングを拒否することが多いようです。

潜水による水圧は、わずか10メートルで大気圧の2倍。大気圧の7~8割程度で過ごせる旅客機内や登山に比べても、想像以上に潜水時の環境は厳しいです。大変残念ですが、他のレジャーでお楽しみになるのが身のためかと思います。

Q)気胸になると、素潜りもしてはいけないのですか?

A)海面付近の大気を吸って潜るだけなら、問題ないと思われます。競技としての素潜りについては、個別に専門の医療機関でご相談ください。

素潜り(スキンダイビングとも言う)では、潜水中の肺内の空気は、海面で吸い込んだ空気のみで、気胸になって浮上しても、肺内外(この場合は胸腔内圧と肺内圧)の気圧差はありません。地上と条件は同じです。もし少しでも気胸の兆候を感じたら、慌てず、少ない酸素消費の動きで海面に上がり、助けを求めましょう。できれば、溺れないように浮き輪につかまり、仲間にボートか海岸まで運んでもらうのが良いですが、なかなか難しいかもしれません。潜水中に、息がきつくなったからと、仲間のスクーバダイバーが携行するタンク(ボンベ)や予備空気源の空気をもらうことは、危険です。ボンベから吸い込んだ高圧空気が、浮上中に気胸を増悪します。

スクーバダイビング(scuba diving)は環境圧潜水とも呼ばれ、圧縮空気を詰めたボンベ(ダイバーは英語読みでタンクと言うらしいです)を携行して行う潜水方法です。潜水深度に合わせた圧(これを環境圧と呼びます)になるよう空気圧を調整する装置(レギュレーター)を口に加え、潜水中はこのレギュレーターを介して、地上(水面)よりも高圧な空気を吸うことで、40m程度までの深度の潜水を可能にする方法です。クストーと言う人が開発、命名したとされるアクアラングと呼ぶ方が、わかりやすい方もあるかと思います。

Q)気胸になると、水泳も危険ですか?

A)気胸に限らず、どのような病気でも、遊泳中の発症には、(特に海上の場合)溺水の危険が付きまといます。気胸の再発率が高い時期は、海で泳ぎたいなら、海岸から離れず泳ぎを楽しむようにするか、海は諦めて、足が届き、監視の目がある安全なプールに留めておくかにして下さい。

気胸発症と同時に、意識を失うような重症な気胸になることはあまりありませんが、気胸となっているのにかかわらず、運動し続ければ、気胸はどんどん悪化します。海上で気胸が発症した場合を想定すると、すぐに船上、あるいは海岸にたどり着ける場合ならまだしも、ライフジャケットもなく、自力で相当距離を泳がなければならない状況のもとでは、できれば遊泳は避けた方が良いように思います。泳いでいる間に、呼吸が苦しくなってしまったら、溺水の危険があります。学校のプールのように、発症に気づけば、足で立って歩ける、あるいは数メートル泳げばプールサイドに移動できるような状況なら、まず問題ないでしょう。

Q)気胸治療の専門医はいますか?

A)気胸に限定した専門医の制度はありません。

認められた制度以外では、専門医を名乗ることは禁じられていますので、気胸専門医という医師は国内にはおりません。ただ、制度上、気胸専門医とは呼べないまでも、気胸の診療に熱心な医師は、少なからず全国にいます。残念ながら、どの医師が気胸の診療に詳しいかを知る方法はありません。たくさん手術している病院だからと言って、診察している医師が全員気胸の治療に詳しい、熱心かどうかは別です。実際に説明をうけ、その内容から信頼するに足るかどうか推測するほかないでしょう。

わが国には、世界でも珍しい気胸の専門学会があり、毎年多くの医師が参加し、最新の研究成果を討議しています。診療の能力はともかく、専門医制度も、参加の特典もない、こうした学会に参加する医師は、かなり気胸に興味を持っているといえるかもしれません。

Q)気胸の専門施設で、治療を受けたほうがいいですか?

A)手術や気管支塞栓術などの治療は、気胸治療を得意としている医療機関で受けることをお勧めします。

気胸の初期診療(発症して最初に診療にあたること)は、一般内科や外科、救急担当医などが当たることの方が多いと推測されます。適切な初期診療ののち、呼吸器内科、呼吸器外科などでの診療をお受けになれれば、実際には概ね問題はないはずです。気胸治療では、どんなに上手く初期治療が行われたとしても、必ず気胸が治るとは限りませんので、あれこれ医療機関を探し回る前に、まず近隣で初期診療を受けましょう。

初期治療が開始されれば、医療機関を探す余裕もできます。初期治療を受けた医療機関が、もともと気胸治療を得意としていなかった場合や、手術などの専門性が高い治療を受ける必要がある(受けようと思う)ような時には、気胸治療に慣れた施設で治療を受けられることもよいと思います。初期治療を受けている担当の医師に、ご相談されるとよいでしょう。

Q)転院を相談して、大丈夫ですか?

A)医療機関では、よくあることです。

転院を申し出られた医師の立場で言えば、正直、信用・信頼されてないのかなと、少し残念に思う気持ちはありますが、この業界ではよくあることで、その後に何か影響することはないです。むしろ、信用されていないことが分かっているのに、診療を続けなければならないことの方が、担当医の立場としては辛いです。自分の専門外なので、できればどこか別の専門施設で治療をお願いしたいと担当医師の方が、強く思っているかも知れません。診療を受けたい医療機関が他にあるなら、正直に伝え、手続きを取って早く転院してしまった方が、誰にとっても幸せかと思います。

Q)医師によって、話が違うのですが?

A)別の医療機関で、セカンドオピニオンをお受けになるとよいと思います。

気胸では、医療施設間で治療方法に大きな違いがあることは少ないと思いますが、施設の体制や備品・設備、あるいは担当医師の経験などで、治療方針や治療機器は、多少の違いは、どうしてもあります。それ自体は、全く問題ないことがほとんどです。ただ、呼吸器専門の医師の中でも、気胸を専門にしている人は、決して多くなく、古いデータや誤解、通説に基づいて説明が行われていることが、ないとは言い切れません。ご覧のこのホームページについても、当科の考えや方針に基づいて、記述しており、違う見解をお持ちの専門医もきっといらっしゃることと思います。納得がいかないまま治療を受け続けるくらいなら、まずはセカンドオピニオンをお聞きになるのが良いと思います。医療は信頼関係なしには成り立ちません。信頼できると思えた医師や医療機関で治療をお受けになるのが、患者だけでなく、担当する医師にとっても幸せです。

Q)気胸のセカンドオピニオンは、どこで聞けばよいですか?

A)気胸の治療を担当しているのは、一般外科(腹部外科の医師が多い)や呼吸器を専門としない一般内科医、あるいは救急部の医師であるかもしれません。少なくともセカンドオピニオンは、呼吸器内科か呼吸器外科の専門医にお尋ねになるべきでしょう。しかし、残念ながら、呼吸器内科や呼吸器外科医の中でさえ、常に最先端の気胸診療に注目している医師は多くありません。日本呼吸器外科学会や日本呼吸器学会という呼吸器領域最上位の学会にあっても、気胸が大々的にテーマに取り上げられ、議論されることはほとんどなく、マイナーな扱いです。

もちろん、呼吸器内科や呼吸器外科であれば、ほかの診療科の医師よりは詳しいと思いますが、呼吸器というだけでは、気胸について必ずしも詳しいとは限らないのも事実です。可能ならば、日本気胸嚢胞性肺疾患学会の会員をお尋ねになるとよいでしょう。全国に数百名の会員がおります。日本気胸嚢胞性肺疾患学会は、世界的にも珍しい気胸専門の学会で、かなりオタクな専門家が会員として集まっています。おそらく、この学会以上に、気胸に精通した人たちの集団は、国内・国外共にないと思います。

Q)気胸になると、公的補償があるのですか?

A)じん肺の場合、気胸を発症すると労災補償の対象となります。

じん肺(じんぱい、塵肺とも書きます)は、粉じん(職場や生活環境から吸い込む粉のような小さな物質)を吸い込むことで、肺に病変をおこす病気を指します。古くから、職業病とも言われる病気の一つでした。じん肺法では、じん肺になっている方が気胸を起こした場合、じん肺に起因する合併症と判定され、労災補償の対象となり、医療費が補償されます。当局から、じん肺そのものの認定を受けなければいけませんので、診療をしている医療機関か、関係の行政機関で、よくご相談になると良いでしょう。

じん肺とは別に、気胸がきっかけで、国が定めた指定難病が分かることあります。この場合、気胸とは関係なく、難病の重症度によっては医療費の助成があります。気胸を起こしやすい難病については、自然気胸Q&A診断と治療篇の<気胸を起こしやすい遺伝病>や<気胸がきっかけになる全身の病気>などの項をご参照ください。